スコットランド最北端、オークニー諸島。

北海と大西洋の気配を間近に感じるこの群島に、静かに海を見つめる蒸留所がある。「SCAPA(スキャパ)」——強烈な個性を声高に主張するのではなく、澄んだ果実味と穏やかな甘さ、滑らかな口当たり、そして海を思わせる清冽な世界観によって、愛好家を魅了してきたシングルモルトだ。

2026年9月12日、そのスキャパの新たなラインナップとなる「SCAPA 16年」「SCAPA 21年」のローンチイベントが、東京・京浜島の安田造船所に係留された洋上のクラブハウス「CASINO ROYALE」を舞台に開催された。会場に集ったのは、海とボート、そして上質なライフスタイルを愛するゲストたち。

なぜ、ウイスキーのローンチが船上なのか――。

その答えは、SCAPAという名前と、このシングルモルトが育まれてきた物語そのものの中にある。

オークニーの海から生まれたシングルモルト

イベント当日は、スキャパのオーナー会社のクリスティアン・エルンストさんから、オークニー諸島の魅力やスキャパ蒸溜所のロケーション、スキャパウイスキーの特徴などが語られた、ブランドセミナーからスタート

スキャパ蒸留所があるのは、オークニー諸島最大の島、メインランド。その眼前には、世界有数の天然の良港として知られる「Scapa Flow(スキャパ・フロー)」が広がっている。

「SCAPA」というブランド名には、海を漂い、風を受けて進む小型のボートという意味合いが込められているという。日本での輸入販売を手がけるサントリーアライド株式会社マーケティング部長の中神慶太氏も、今回のブランド刷新を語るうえで、まずこの「海」との関係を強調する。

「蒸留所はスキャパ湾を望む場所に建ち、熟成庫も波打ち際にほど近い。樽の中で長い眠りにつく原酒と、その傍らに絶えず存在する海。SCAPAというウイスキーを語るとき、海は単なる美しい背景ではなく、そのアイデンティティを形づくる重要な存在なのです」

とはいえ、SCAPAは「島のモルト」という言葉から連想される典型的なスモーキー・ウイスキーとは趣を異にする。

ノンピーテッドの麦芽を使用することで前面に現れるのは、煙ではなく、パイナップルやマンゴーを思わせる明るい果実味と甘やかなニュアンス。資料でも、その特徴は「ソフトな口当たりと、トロピカルフルーツや蜂蜜のような甘い香り」と表現されている。

中神氏がSCAPAを表現するときに繰り返すのも、「穏やかさ」だ。

「味わいは全体として穏やかで、口当たりは滑らか。新しいパッケージについても、荒々しい外洋ではなく、“穏やかな波や透き通った静かな海”をイメージしたデザインです。従来の「スキャパ スキレン」からフォルムを大きく刷新し、より洗練された姿へと生まれ変わりました」

それは、ボトルそのものを通してSCAPAが目指す世界を表現したものともいえる。

16年と21年——「時間」が加わった新たなSCAPA

会場には、10年、16年、21年のそれぞれのボトルが並んだ

日本におけるSCAPAにとって、2026年は重要な節目となった。

2025年に登場した10年に続き、今年はより長い熟成を経た16年と21年がラインナップに加わった。中神氏によれば、この2本はウイスキー評論家による採点でも非常に高い評価を獲得したという。

日本市場でも従来のノンエイジ中心の構成から、10年、16年、21年という熟成年数を明記したラインナップへと大きく進化。なかでも16年と21年は数量も限られるプレミアムな存在として展開されている。

SCAPAはまた、名高いブレンデッド・スコッチ「バランタイン17年」の華やかな香味を支える重要なキーモルトのひとつとしても知られている。つまり、その名前を意識せずとも、SCAPAの持つ華やかさに触れたことのあるウイスキー愛好家は少なくないはずだ。

そのうえでSCAPAそのものをグラスに注げば、ブレンドの一部ではなく、オークニーという土地の個性をより純粋な形で味わうことができる。

特に中神氏がブランドの中核として位置づけるのが16年だ。

お薦めの飲み方はストレート。

「慌ただしくグラスを空けるのではなく、心が落ち着いた状態で、ゆっくりと時間をかけて味わう。SCAPAの持つ穏やかさを理解するには、それが最もふさわしいと思います」

この日のイベントは、まさにその世界観を現実の空間へと置き換えたものだった。

東京湾に浮かぶ、もうひとつの「海の物語」

夕刻。

ゲストを迎えた「CASINO ROYALE」は、かつて横浜港を航行した観光船「マリーンシャトル」を安田造船所が取得し、フルリノベーションした洋上のクラブハウスである。

35年にわたり海の風景の一部であった船を、「船の文化を知って、楽しめる場所」として再生する——その発想から生まれた空間だ。

オークニーの海を見つめ続けてきたSCAPAと、横浜の海を走り続け、第二の人生を東京湾で送る一隻の船。

この組み合わせには、どこか必然性すら感じられる。

中神氏によれば、今回のイベントで伝えたかったのは、商品スペックだけではない。

「SCAPAが持つ“穏やかな海のような、平穏で落ち着いた気持ち”を実際に体感してもらうことですね。それゆえ、海を愛する人々を招き、少しラグジュアリーな環境の中でブランドの世界に触れてもらう場として、CASINO ROYALEは理想的な舞台でした」

船内へ足を踏み入れると、そこには一般的な試飲会とは明らかに異なる空気が流れていた。

磨かれたウッド、抑制の効いた照明、窓の向こうの水辺。そして、その空間に置かれたSCAPAのボトルが放つ琥珀色。

夕刻の東京湾とSCAPAの世界観が、静かに重なり始めていた。

シャンパングラスで始まる、SCAPAの夜

18時30分。3階「SKYFALL」でブランドセミナーがスタートした。

ゲストを迎えたウェルカムドリンクにも、SCAPAらしい遊び心があった。

よく冷やしたシャンパングラスにSCAPA 10年とソーダを注ぐ「SCAPAシャンパンスタイル」である。中神氏も、10年についてはこのスタイルを薦めている。

「ウイスキーでありながら感じられる甘みと軽やかさ。それをシャンパングラスで楽しむことで、ハイボールという日常的な飲み方が、端正なアペリティフへと表情を変える。上品なウェルカムドリンクとして、SCAPAの入口を知るには格好の一杯です」

グラスを傾けながら、参加者はオークニーへと誘われていく。

島、風、海、そして長い熟成の時間。

東京湾に浮かぶ船の中で耳を傾けるSCAPAの物語は、陸上のセミナールームで聞くそれとは、どこか違ったリアリティを帯びていた。

→後編へ続く

(文=中山清美 写真=落合明人/舵社)


SCAPA 10年

熟成期間:10年
度数:48%
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:フレッシュパイナップル
希望小売価格(税込):11,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
https://ieno-bar.suntory.co.jp/shopdetail/000000008918

SCAPA 16年

熟成期間:16年
度数:48%
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:熟したマンゴー
希望小売価格(税込):22,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
https://ieno-bar.suntory.co.jp/shopdetail/000000008917

SCAPA 21年

熟成期間:21年
度数:50%(カスクドストレングス)
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:アプリコットジャム
希望小売価格(税込):55,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
https://ieno-bar.suntory.co.jp/shopdetail/000000008916

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