Jib ジブのトリム

前回の⑤に続き、今回はジブの全コントロールロープについて、プロセーラーの荒川海彦さんに解説していただく。微風時のジブリーチは、モデル艇ではスプレッダーの先端から5〜10cmほど。適切なツイストをメイクしよう!

今回も前回と同じく、ジブの各コントロールロープについて、極端に引きすぎた状態と出し過ぎた状態を示した。それぞれのコントロールローブがジブのどの部分に効いているのか、深く理解してほしい。ジブのベストトリムについては、前々回の④を参照のこと。

想定するコンディションとセール

  • 風域:4〜10kt(ノット)
  • ジブ:J1/Light
  • モード:パワフルモード/スピード重視

ジブシート Jib Sheet

数cmの緩めで加速し、数cmの引き込みで高さに変える。微風では「流す」ために緩めることが基本

ジブリーダー  Jib Leader

前に出し過ぎると上段から中段が閉じて風が詰まる。下げ過ぎると上段が開き下部が浅くパワーが消える

バーバーホーラー Barber Hauler

入れ過ぎるとスロットが狭まりストールする。出し過ぎるとパワーが抜けて角度と風を失う

ジブハリヤード Jib Halyard

緩め過ぎるとドラフトが後退し、アタックアングルがシビアになりハンドリングがピーキー(グルーブが狭くなり扱うのが難しくなる)に。引き過ぎるとエントリーが深くなり角度が悪くなる

バックステイ Backstay

緩い(サギング大)とパワーが出るが高さをかせげない。張り過ぎるとフラットになり加速が難しい

ジブシートテンションの重要性

メインセールと同じく、極端なトリム例は各写真を参考に。では、微風のジブトリムについて。ラフテンションは、わずかに横シワが残る程度に。これによりドラフトが後ろに下がり、ジブがパワフルになる。

ジブシート・テンションは、ジブの開き角度を決定する最も重要な調整。

「鉄則として、まずはスピード、その後に高さ。最初は少し緩めて加速し、スピードに乗ってから徐々に引き込んで高さに変えていきます」

テルテールの声を聞く

テルテール(ジブのラフ近くにある毛糸の風見)は、基本内側(風上側)と外側(風下側)の両方が水平に流れるが理想。上部のテルテールが先に乱れる場合は、ジブリーダー(カー)が後ろ過ぎ(上部が開き過ぎ)、下部のテルテールが先に乱れる場合はジブリーダーが前過ぎるということ。

「オーバートリムに注意。風下側のテルテールが失速して渦を巻いている場合は、シートを引き過ぎ、もしくは落とし過ぎです」

(次回⑦へ続く)

コラム1 リーチコードの扱い方

ジブのリーチコードは、引き過ぎるとリーチが内側にフック(巻き込み)し乱流の原因となる。微風時はできるだけ出すのがベター。強風時のバタつきを抑える効果もあり。シバーはもちろんのこと、リーチのバタつきはセールを傷めることに。セールの寿命に深く関わるので、正しく調整しよう。

リーチコードはさまざまなタイプがある。モデル艇はベルクロで止めるタイプ。ほか、ジャムクリートで止めるものもあり

リーチコードを緩めたら、リーチをつかんで真下に強く引く。特に微風時は、風圧だけではリーチコードは伸びない

コラム2 デッキスイーパーの必要性

ジブのフットとデッキの間に隙間がない艤装のことをデッキスイーパーという。

「ジブフットはできるだけデッキに密着するように作られています。主な理由はエンドプレート効果と空力効率の最適化。隙間をふさぐことで、翼端渦の抑制、誘導抵抗の減少などの効果も。デッキに密着すると、気流の乱れが減り、層流の維持も期待できます。特に軽風域のパフォーマンス差を実感すると思います」(荒川さん)

ジブのフットの隙間を示す荒川さん。デッキと完全に密着することが望ましい
デッキスイーパーにかなり近いセール。現代のアメリカズカップ艇では、メインセールもジブもデッキスイーパーを採用している

本稿で必要なヨット用語リスト

  • TWS:True Wind Speed /真風速(WS=Wind speedとも)
  • BSP:Boat Speed/艇速
  • TWA:True Wind Angle/真風角
  • HA:Heel Angle/ヒール角
  • AWS:Apparent Wind Speed/見かけの風速
  • AWA:Apparent Wind Angle/見かけの風角
  • LW:Leeway Angle/リーウェイ角
  • TWD:True Wind Direction/風向(真の風角)
  • VMG:Velocity Made Good/有効速度
  • VMC:Velocity Made Good on Course/コースに対するVMG
  • COG:Course Over Ground/対地コース
  • BTW:Bearing To Waypoint/目的地への角度

監修/荒川海彦さん Umihiko Arakawa

ジャパンカップ、HPRチャンピオンシップなどでチームを優勝に導き、近年の国内のレースシーンの最先端で常に活躍するプロセーラー。海外のワンデザインレースにも精通し、屈指のジェネカーボートの経験値を誇る。2019年にOn TheBreezeを立ち上げ、代表を務める。

本記事と同時に荒川海彦さんの解説動画もぜひご覧ください。本記事のダイジェスト版となります

(監修=荒川海彦 文=中村剛司(舵オンライン編集部) 写真=松本和久、川野純平(Kazi編集部) イラスト=内山良治 協力=大野稔久〈アドニス〉(ベネトウ・ファースト35)オーナー)

Supervision by Umihiko Arakawa, text by Tsuyoshi Nakamura (Kazi), photos by Kazuhisa Matsumoto, Jumpei Kawano (Kazi),illustrations by Ryoji Uchiyama, Special thanks to Toshihisa Oono

本記事は2026年『Kazi』6月号を再編纂したものである。