グラスと料理、ジャズが船上の夜を彩る

ブランドセミナーを終えると、舞台は2階へ。

19時10分、乾杯とともにディナーパーティーが始まった。

料理が並ぶ船内をゲストが自由に行き交い、SCAPA 10年のハイボールやロックを片手に会話を楽しむ。

フォーマルすぎず、しかしカジュアルにも流れすぎない。

船という非日常の空間が生み出す適度な親密さもあって、グラスを重ねるにつれ、ゲスト同士の会話も自然と弾んでいく。

やがて聞こえてきたのは、ジャズギターとウッドベース。

国立音楽院のミュージシャンによる演奏は、華やかでありながら決して空間を支配しない。グラスの触れ合う音や人々の会話の間を縫うように、心地よいジャズの響きが船内を満たしていく。

中神氏がSCAPAにふさわしいと語るのは、「少しラグジュアリーな空間でアクティブに海を楽しんだ後」や、「パーティーが落ち着きを見せる時間」に、ゆっくりとグラスを傾けること。

まさに、この夜のCASINO ROYALEそのものだった。

一枚のキャンバスに描かれていく「SCAPA」

そしてジャズとともに、この夜のもうひとつのハイライトとなったのが、画家・出口雄樹氏によるライブペインティングだった。

1986年福岡県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科日本画専攻を修了し、2019年までニューヨークを拠点に活動。現在は京都にスタジオを構える出口氏が、この夜、F20号のキャンバスに向き合った。

テーマは「SCAPA」。

あらかじめ京都のスタジオで色を載せたという、SCAPAをイメージした青のグラデーションで彩られたキャンバスが登場。

ジャズが流れるなか、仕上げのための筆が走る。

一本の線が生まれ、重なり、次第にひとつの世界が立ち上がっていく。

完成した作品を見るだけではなく、青い空間から作品が生まれる「時間」そのものを目撃する。その傍らに16年、21年という長い時間を重ねて完成したウイスキーがあることも、この夜ならではの面白さだった。

ジャズギターとベースによる演奏と並行して、SCAPAをイメージした作品が制作された。

ジャズは耳へ、絵画は目へ、ウイスキーは香りと味覚へ。

それぞれ異なる感覚に訴えながら、不思議なほど自然にひとつの世界へと収斂していく。

「CASINO ROYALE」の第二幕

ライブパフォーマンスを終える頃、船内の空気は再び表情を変えた。

その名の通り「CASINO ROYALE」の世界へ。

カジノスペースではディーラーを囲み、ブラックジャックなどのカジノ体験を楽しむゲストの姿が見られた。グループの勝者には「SCAPA10年」のボトルが進呈される。その傍らではカクテルが供され、別のテーブルではグラスを片手に会話が続いている。

この夜、SCAPAは「勉強するためのウイスキー」ではなかった。

音楽を聴く。アートを見る。料理を味わう。友人と語らい、ゲームに興じる。

その豊かな時間の傍らに、自然にSCAPAがある。

そこに、このイベントの巧みさがあった。

ラグジュアリーとは、必ずしも何かを過剰に飾り立てることではない。上質なものが互いを邪魔することなく、同じ時間の中に存在すること——この夜のCASINO ROYALEには、そんな成熟した贅沢があった。

そして、16年と21年へ

ザ・リッツ・カールトン東京「ザ・バー」より、ヘッドバーテンダーの和田 健太郎氏が招かれ、この日のために創作したSCAPAを使ったカクテル「Autumnal SCAPA」を披露した

夜が深まるにつれ、いよいよ主役であるSCAPA 16年、21年をじっくりと味わう時間が訪れる。

この日のために、両者はストレートやロックなど好みのスタイルで味わえるよう用意されていた。

16年。

お薦めのストレートをいただく。まず香りを確かめ、少量を口に含む。

中神氏が「ブランドのコア」と位置づける一本であり、その魅力を引き出すには、やはりストレートで、気持ちを落ち着かせ、時間をかけて飲むのがいいという。

そして21年。

熟成年数という数字だけを追うのではなく、その年月を想像しながら味わいたい。

オークニーの冷涼な空気の中で春を迎え、冬を越し、また海から風が吹く。その繰り返しを16年、21年と重ねた原酒が、遠く離れた東京湾の船上でグラスに注がれている。

そう考えると、一杯のウイスキーはまったく違って見えてくる。

急いで答えを探す必要はない。

SCAPAらしい柔らかさ、果実を思わせる華やかさ、穏やかな甘み。その奥にある長期熟成の複雑な表情を、ゆっくりと探していけばいい。

中神氏が語った「平穏で落ち着いた気持ち」という言葉の意味が、この頃になると実感として理解できる。

二つの海をつないだ一夜

出口氏が仕上げた一枚は、本イベントの最終章である抽選会の最高賞品として、参加者の1人に贈呈された

窓の外には、夜の東京湾とゴージャスなスーパーヨット。

グラスの向こうには、遥か彼方のオークニーの海がある。

何千キロも離れた二つの海が、一杯のシングルモルトによって静かにつながっていく。

華やかな時間が過ぎても、船内には不思議な余韻が残った。

それはジャズの最後の一音だったのかもしれないし、出口雄樹氏がキャンバスに残した色彩だったのかもしれない。

あるいは、グラスの底にわずかに残ったSCAPAの香りだったのか――。

中神氏は、SCAPAの世界観について「海を愛する方」に強く響くものだと語る。そして、その根底にあるのは、荒々しい海ではなく、穏やかな海を前にしたときに訪れる、平穏で落ち着いた時間なのだ。

その言葉を、この夜ほど自然に理解できる場所もなかっただろう。

海を愛する人のためのウイスキーを、海の上で味わう。

オークニーの海を背負うSCAPAと、船の文化を次代へ伝えるCASINO ROYALE。

2026年9月12日の一夜は、16年、21年という新たなラインナップを披露するローンチイベントであると同時に、SCAPAがこれから日本で伝えようとしている世界観そのものを、五感で体験する時間となった。

ボトルを開ければ、そこにあるのは琥珀色の液体だけではない。

島がある。潮風がある。船がある。

そして、16年、21年という、人の手では決して早めることのできない時間がある。

SCAPA——その一杯には、海へと続く時間と物語がある。

(文=中山清美 写真=落合明人/舵社)


SCAPA 10年

熟成期間:10年
度数:48%
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:フレッシュパイナップル
希望小売価格(税込):11,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
https://ieno-bar.suntory.co.jp/shopdetail/000000008918

SCAPA 16年

熟成期間:16年
度数:48%
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:熟したマンゴー
希望小売価格(税込):22,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
https://ieno-bar.suntory.co.jp/shopdetail/000000008917

SCAPA 21年

熟成期間:21年
度数:50%(カスクドストレングス)
カスク:ファーストフィルアメリカンオーク
製法:ノンチルフィルトレーション
内容量:700ml
キーノート:アプリコットジャム
希望小売価格(税込):55,000円
※実際の販売価格・送料・在庫状況・販売条件は販売先により異なります
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