Main Sail メインセールのトリム

プロセーラー荒川海彦さんいよるセールトリム解説連載。今回は微風時のメインセールトリムの解説。メインセールをトリムするすべてのコントロールロープにについて、それぞれの効能を詳細に解説する。まず、基本はトップのリーチリボンが100% 流れている状態(水平)を目指す。よりパワフルなセールとハンドリングが必須なのだ!

それぞれのコントロールロープについては、極端に引きすぎた(上げ過ぎた)状態と出し過ぎた(下げ過ぎた)状態を示した。セールのどの部分に、どのような影響が出るかを確認してもらいたい。

ベストトリムについては、前回の④を熟読しよう。

想定するコンディションとセール

  • 風域:4〜10kt(ノット)
  • ジブ:J1/Light
  • モード:パワフルモード/スピード重視

メインシート Main Sheet

緩めるとパワーが逃げるが加速しやすくなる。引き過ぎるとリーチが閉じ、失速(ストール)

アウトホール Outhaul

出し過ぎ(緩め過ぎ)は抵抗を増やし、入れ過ぎ(引き過ぎ)は必要なパワーを削ぎ落としてしまう

カニンガムホール Cunningham Hole

出し過ぎるとドラフトが後ろに下がり失速。入れ過ぎるとエントリーが開き、上り角度が極端に悪化

バックステイ Backstay

入れ過ぎるとメインセールが平らになり、リーチが開き(ツイスト)、微風では全く走らなくなる。デパワー(セールパワーを落とす)やサギング調整として活用

メインシートトラベラー Mainsheet Traveler

上げ過ぎると上り角度は良くなるが、失速のリスクが増大。下げ過ぎるとパワー不足でスピードダウン

ブームバング Boom Vang

入れ過ぎるとリーチが閉じ、風が後ろに抜けなくなってストールを招く。デパワー時に活躍

失速に注意しキャンバーを深く保つ

各コントロールロープの効用を見る。それぞれ極端に引いたり出したりすることで、セールシェイプがどのように変化するのかを確認してほしい。

では、微風時について。ラフテンションは緩め。カニンガムは引かずにメインハリヤード・テンションでコントロール(ブラックバンド範囲内で)。アウトホールも緩めてフルパワー。バックステイも緩め、マストのベンドを減らしてパワーを最大にする。メインシートは少し緩め、セール全体の風を剥離させないように効率よく流す。引きすぎると失速(ストール)する。トラベラーは風上側に上げ、シートを緩めに保つことで、セール上部をツイストさせたままブームをセンターラインに保持。まずはスピードを出し、その後にトリムで高さを求める。

「セーリング・ダイアリー(記録帳)をつけ、速かった時の設定をメモしておくことが上達の近道です」。

(次回⑥へ続く)

コラム メインセールトリマーの目線

メインセールトリマーは、レース中に自分のポジションから移動してセールシェイプを確認することが難しい。練習時に、フット下から、リーチからと視点を変えてシェイプを確認することが重要。トリマーポジションから、これらのベストシェイプを確実に再現できるように練習しよう。

フット中央から見上げた目線。正しくセールトリムを見ることができる
メインセールトリマーのポジションから見上げた目線。この位置から、フット中央から見上げたときと同じトリムができるよう修練が必要となり。最初のうちは、自分で適正と考えたトリムを終えたら、場所を移動しリーチから見上げ、フット中央から見上げ、少しずつ問題点を修正していこう

本稿で必要なヨット用語リスト

  • TWS:True Wind Speed /真風速(WS=Wind speedとも)
  • BSP:Boat Speed/艇速
  • TWA:True Wind Angle/真風角
  • HA:Heel Angle/ヒール角
  • AWS:Apparent Wind Speed/見かけの風速
  • AWA:Apparent Wind Angle/見かけの風角
  • LW:Leeway Angle/リーウェイ角
  • TWD:True Wind Direction/風向(真の風角)
  • VMG:Velocity Made Good/有効速度
  • VMC:Velocity Made Good on Course/コースに対するVMG
  • COG:Course Over Ground/対地コース
  • BTW:Bearing To Waypoint/目的地への角度

監修/荒川海彦さん Umihiko Arakawa

ジャパンカップ、HPRチャンピオンシップなどでチームを優勝に導き、近年の国内のレースシーンの最先端で常に活躍するプロセーラー。海外のワンデザインレースにも精通し、屈指のジェネカーボートの経験値を誇る。2019年にOn TheBreezeを立ち上げ、代表を務める。

本記事と同時に荒川海彦さんの解説動画もぜひご覧ください。本記事のダイジェスト版となります

(監修=荒川海彦 文=中村剛司(舵オンライン編集部) 写真=松本和久、川野純平(Kazi編集部) イラスト=内山良治 協力=大野稔久〈アドニス〉(ベネトウ・ファースト35)オーナー)

Supervision by Umihiko Arakawa, text by Tsuyoshi Nakamura (Kazi), photos by Kazuhisa Matsumoto, Jumpei Kawano (Kazi),illustrations by Ryoji Uchiyama, Special thanks to Toshihisa Oono

本記事は2026年『Kazi』6月号を再編纂したものである。