米サンフランシスコ、ゴールデンゲートブリッジをスタートする、前回の様子。83歳、〈サントリーマーメイドIII〉によって太平洋横断を成し遂げた

海洋冒険家の堀江謙一さんが去る9月8日、新艇〈サントリーマーメイドⅣ〉(横山一郎設計30フィート艇)で来年3月に米サンフランシスコを出発、兵庫県西宮市の新西宮ヨットハーバーを目指し、2022年以来、5年ぶりとなる冒険航海に臨むことを発表した。

成功すれば、史上最高齢88歳での太平洋単独無寄港横断の達成となる。舵オンラインでは、独占インタビューを敢行。新たな冒険に挑む堀江さんに心境などを聞いた。

(聞き手/坂本慎平)

2027年3月出発の冒険航海についての思いを語る堀江謙一さん(2026年10月5日)。新西宮ヨットハーバーにて 
photo by Aki Yamagami

独占インタビュー! 〈サントリーマーメイドⅣ〉について

今回の冒険では30フィート艇となる?

堀江さん「国産の30フィート艇はどこのメーカーも長年愛された型式で高い技術力と性能を有し、それを守っている。今回の冒険では、仕様をいろいろと相談しながら、新しい型になる」

前回の19フィート艇に比べてどうか?

堀江さん「最初の1962年の『太平洋ひとりぼっち』から前回の2022年の冒険まで一貫して小さい艇だったので、キャビンで背筋を伸ばしての起立ができず、窮屈さが当たり前のストイックな環境だったが、それが解消される。また、何よりもヒールコントロールがしやすくなる」

セールの仕様については?

堀江さん「これまでもジブでノースセール製を採用したことはあったが、今回は初めてメインセール、ジブともにそろって同社製になり、合わせたセール面積は前回の冒険時の2.5倍なので、推進力も期待できる」

「楽勝という気構えで臨み、そうでないからこそ冒険」と語る堀江謙一さん
photo by Aki Yamagami

タイムスケジュール、そして年齢との闘い

出発までの予定は?

堀江さん「10月半ばにはツネイシクラフト&ファシリティーズの岩手工場から広島県尾道市の工場へ陸送し、そこで最終的な工程にかけ、11月下旬には完成したものを新西宮ヨットハーバーへ海で運ぶ。西宮で試走やチューニングした後、早ければ2月下旬に船会社に渡して艇を現地に送り、3月10日前後に私もサンフランシスコに渡り、到着翌日にはマストを建てるぐらいのスケジュールで考えている」

88歳という年齢でトレーニングなどは?

堀江さん「決して怠けているわけではないが、特に今回の航海のために、それを目的としたトレーニングはしていない。人生上でジムの類も一度も行ったことがない。日常生活の中での筋力維持、健康維持を自然なかたちでするようにしている」

艇内での食事は?

堀江さん「これまでの冒険でも栄養不足、野菜不足になりがちで、今回も約60日の航海期間中、それぐらい何でもない。もちろんそうならないように越したことはない。積み込む食料の量には限りがあり、便利なパックごはんを持っていく。電子レンジはないが、常温でもよく噛んでいたら軟らかく食べやすくなる。食後の歯みがきも大切で、歯にやさしい馬の毛の歯ブラシを友人からいただいたので、それを使う」

まるで楽勝のようにも聞こえますが?

堀江さん「冒険するにあたっては、最初は楽勝ぐらいの気構えで臨むようにしている。これまでの航海も、毎回そう思って出発し、途中でそうでなくなるから冒険なんだと思う」

舵オンライン読者へのメッセージをお願いします

堀江さん「最初の『太平洋ひとりぼっち』で帰ってきて以来、読者の方々からは長年にわたり多くの声援をいただいてきた。なぜヨットで海を渡るのかという質問には、いつも「渡りたいから渡る」と答えてきたが、それには変わりない。海やヨットのロマンを知る舵オンラインと『Kazi』誌の読者は私の同志であり、今回も読者と共に、そのロマンを艇に載せて臨む」

月刊『Kazi』2026年11月号を手に「同志である舵オンラインと、Kazi誌読者のロマンを載せて、冒険に挑む」と力強く宣言した
photo by Aki Yamagami
88歳での新たな冒険航海を発表する堀江謙一さん。「88歳で再度、『太平洋ひとりぼっち』で航海したいという、チャレンジャーとしてのマグマが噴き出してきたんです」のコメントは日本中を湧かせた
photo by Go Goto
米カリフォルニア州サンフランシスコにある「サンフランシスコ海事博物館に展示された初代〈マーメイド〉(キングフィッシャー19)。堀江謙一さん(右)と、設計者のボートデザイナー、横山一郎さん(前回の挑戦時の一葉)

(文=坂本慎平、写真=山上有紀、後藤 剛、堀江謙一)