琉球の海を訪ねて「廃棄ヨットの復活に馬艦船の伝統を吹き込む」後編

2024.01.18

「舟楫(しゅうしゅう)を以て万国津梁(ばんこくしんりょう)となす」という言葉がある。 
550年もの昔、「舟楫(船と舵)によって、万国の津梁(架け橋)になろう」と銘に刻み、 世界を相手に海へ乗り出した人々の言葉だ。その国は琉球、現在の沖縄だ。 

日本の南洋に栄えた彼ら海洋民族の用いた船、技術はどのようなものだったのか。 

廃棄寸前のヨットを直しながら現地のセーラーと交流し、沖縄のセーリングの現在と、馬艦船(まーらんせん)をはじめとする歴史を体験してきた。 

 

Kazi1月号掲載の記事を無料公開する。その後編。

前編はコチラ!

 

メインカット | photo by Kai Yamamoto | 陸上でセールアップテスト。帆の横方向には何本も「フーザン(帆桟)」という竹のバテンを入れ、そのバテンに直接「テイエンナ(手綱)」と呼ばれる帆とメインシートと同じ役割のロープを取り付ける。これにより、帆はガフリグのラグセールと同様、揚げ下げが容易で、強風時にはバテンをくくることで縮帆することもできた 

 

 

マストパートナーも自作。マストはシングルハンドディンギーのマストを流用 

 

 

いよいよ進水

7月の中旬、最後の仕上げと進水式をするために僕らは沖縄を再び訪れた。計測した数字を元に作ったマストセールを恐る恐るセッティングしていく。多少の調整は必要だったが、無事に全て取り付けることができた。 

進水式にはチームうるまのヒガシさんや地元の海洋少年団の団長池原さんなど地元の方々が参加してくれた。沖縄の船の特徴でもある「目」もしっかり入れ、船をいよいよ浮かべる。この船は重量が250kgしかないのでとても軽い。 

しばらく船のあちらこちらを点検して問題なしと判断したら、早速セーリングに出かけた。 

この時ちょうど雨が降り、どんよりとした天気だったのだが、メンバーの笑顔はヒマワリのように明るい。狭い港内でも、しっかりと風をとらえ、自由に走れる帆走性能は今までの船(6mカッターボート)にはなかった可動式のセンターボードのおかげだろう。船は水面を滑るようにスピードを上げ、ひらひらとタッキングウェアリングと軽々方向転換をする。風上にもよく上(のぼ)り、これならばどこにでも行ける気がした。 

これから僕たちは沖縄本島からこの〈うりずん〉に乗って島々への航海を企画している。そしてかつて山原船(やんばるせん)、馬艦船がつないでいた歴史的な琉球の港を訪ねる航海にもチャレンジする予定だ。 

万国津梁(ばんこくしんりょう/万国の架け橋)のスローガンのように僕らの造った〈うりずん〉が琉球の海洋文化を思い起こさせる架け橋になれればと思っている。 

 

 

完成した〈うりずん〉。全長5.5m、全幅2.0m。喫水1.1m(センターボード張出時)。延べ10日間、10人のメンバーで廃船を復活させた。左端が東 賢一さん

 

 

進水式はもちろん泡盛「久米仙」で。全体にかけた

 

 

スロープを降りる頃、曇り空が一斉に晴れわたった。よい浮き姿勢である。感動の瞬間 

 

 

初帆走する〈うりずん〉。馬艦船の特徴は、スピードもあるが、積載性と堪航性を重んじた船型、安全に珊瑚礁や浅瀬の多い川港にも入っていけるような喫水、ラグセールと同じ構造の少人数でも扱いやすいリグ。いろいろと話を聞いたり、調べて回るうちに、僕らの目指した〈うりずん〉は、まさに沖縄の伝統的な帆船と姿が重なってくるようだった 

 

 

上手回し(タッキング)の挙動を見る

ポートタックからタッキングを開始してみる

センターボードが効き、すばやく旋回 

テイエンナ(手綱。メインシート)を返し完了

 

 

カッターなので、もちろん漕いで進むことも可能。しかし、船が完成して目指す目的地は、西は慶良間諸島! 東は津堅島(つけんじま)! 沖縄本島一周! と目標は大きい。セールがなければ無理だろう 

 

 

那覇空港で見つけた、進貢船のステンドグラス。琉球伝統和船は、これからの世代にもしっかりと受け継がれていくのだ 

 

 

第16回美ら海体験教室

進水式の次の日、地元のはごろも海洋少年団が主催する海洋イベントが開催された。
僕らの〈うりずん〉もこの素晴らしいイベントに参加し、デビューを飾ることができた。
子どもたちの笑顔と青い海、そこに真っ赤なセールが良く映えていた。
あのぼろぼろだった船をここまで一緒に直してくれた仲間たち、そしてそれを支えてくれ応援し、知恵を授けてくれた地元のセーラーの皆さんにお礼を伝えたい。 

 

 

総勢150人の子どもたちと保護者が集まった

 

 

バナナボートも登場

 

 

サバニも人気でした

 

前編もぜひご覧ください!

琉球の海を訪ねて「廃棄ヨットの復活に馬艦船の伝統を吹き込む」前編

 

(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)

※本記事は月刊『Kazi』2024年1月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

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山本 海       

Kai Yamamoto

19歳、セイルトレーニング帆船〈海星〉にボットムセーラーとして沖縄~慶良間~宮古~石垣を5カ月かけて回る。後、世界各地の帆船5隻にクルーとして乗船。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、ジワジワ活躍中。 https://spiritofsailors.com/

 


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