セーラーの秘密基地。桟橋とヨットがある暮らし(前編)

2023.05.13
ときに思索し、ときに友人を招く
桟橋とヨットがある暮らし

自宅から離れた海沿いの別荘。 

そこに自作の桟橋を設置して、大切な愛艇を舫う。 

そんな憧れの暮らしを実践されている、長谷川一仁さんの別荘を訪れた。 

自作とは思えない美しき桟橋と、よく手入れされたそれぞれの古民家。訪れる友人たちを最大限にもてなす、すばらしきホスピタリティーがそこにはあった。 

 

Kazi12月号で話題を呼んだ特集「セーラーの秘密基地」から、長谷川邸の紹介を前後編でお届けします! 

メインカット | photo by Shigehiko Yamagishi | 三重県英虞湾(あごわん)の賢島(かしこじま)エリアのとある一画に長谷川一仁さんの別荘はある。左奥が現地再生された古民家の母屋。その右隣が移築再生された客人用の古民家。右手にあるのが客人用のレストラン。それらを自作の桟橋がつなぐ。桟橋の内側にあるのは、自作したプライベートビーチ(ラグーン)だ 

 

 

長谷川一仁 | Kazuhito Hasegawa

180年の歴史を持つ英国ESSE社の薪ストーブの取り扱いおよび、古民家再生などに携わるグランビル社代表の長谷川一仁さん。四日市海洋少年団で10歳のころからセーリングに親しみ、現在までさまざまなヨットやボートを乗り継いできた。現在は英虞湾の賢島エリアに別荘を持ち、独自の感性で海を楽しむ日々 

 

 

和船に板をはり、桟橋に改造。増築したウッドデッキから自艇を眺める長谷川さん。至福の時間が流れる 

 

 

先の写真を沖側の空中から見るとこのような風景に。来客用のプライベートレストラン前の自作桟橋に愛艇を舫う。食事を終えた友人たちと、そのままヨット遊びに出られる趣向だ 

 

 

薪ストーブを設置したプライベートサウナ。壁は総ヒノキ。ジンジャーの花を添え、香りも演出するおもてなし 

 

 

シービュー独占の猫足バスタブは、長谷川さん自慢のアトラクション。サウナのあとは海へドボン。そしてここで潮を落とします 

 

 

母屋の入り口に掲げられた「CAPTAIN'SQUARTERS(船長の家)」の看板。長谷川船長の秘密基地なのである 

 

 

母屋前の庭で日向ぼっこする門番の愛犬、柴犬のJIRO 

 

 

自作の秘密基地、憧れの暮らしの始め方
古民家再生

数えてみたら、セーリング界、ボーティング界で有名な長谷川一仁さんと初めてお会いしたのは7年前。瀬戸内海で開催されたグランドバンクス(略して、グラバン)のファン・ランデブーのイベントだった。米国の大型トローラー、グラバンの愛好家たちが集まるこのビッグイベントでごあいさつした長谷川さんは、「もちろんグラバンは大好き。でもさ、セーリングも大好き。今は賢島(かしこじま)の別荘に自分で桟橋を作って、遊んでいるんだ」とおっしゃっていた。 

そんな話を、画家のBow。さんが描いた1枚の絵を改めて見たときに思い出した。長谷川さんの友人、海洋写真家の矢部洋一さんに仲介をお願いして、やってきた三重県英虞湾。賢島エリアにある長谷川さんの秘密基地は、まるでBow。さんの絵をそのまま具現化したかのような、夢想に富んだ至極の場所であった。 

長谷川さんがここ、賢島エリアにベースを構えたのは17年前。それまでは京都府若狭湾、日本海のマリーナに艇を置いていた。 

「日本海はすばらしい海でした。歴史ある北前航路の海。北は北海道、南は九州まで、クルージングゲレンデに富んだ美しい海です。30年くらいお世話になりました。そんな折、三重県の英虞湾にご縁があり本拠地をこちらに移したんですね。マリーナではなく、別荘とその目の前の海面を使わせていただく憧れの物件でした」 

しかし、その道のりは必ずしも楽なものではなかった。地元民ではない人が突然やってくるわけである。近隣住民との間には多少なりとも壁があった。長谷川さんは、まず購入した土地の目の前の海の掃除からはじめた。 

「日本海とは違って、干満差がすごいある。日中は仕事があるので夜に干潮になるときを狙ってここに来て、胴長を着込んでゴミを拾う。購入した土地に重機で穴を掘って、拾ったガラを捨てました。そんなことからはじめて、近隣の方ともコミュニケーションをとって、少しはお仲間となれたかもしれません」 

その時間には5年ほどの月日がかかったという。ではなぜ長谷川さんは、そのように苦労してまで海沿いの別荘にこだわったのだろう。 

 

 

深夜、満天の星を見上げる別荘の桟橋。静穏な入り江に映った星々の影。幻想的な風景に包まれる 

 

 

夜明けの長谷川さん別邸。先の星空写真と同じアングルから撮影。風がやみ、潮が止まった海面に映る朝日。まるでウユニ塩湖のようなスペクタクルが1日のはじまりを告げる 

 

 

英国式の三つの家

「私の仕事は英国ESSE(エッセ)社の薪ストーブの輸入販売などなのですが、そのESSE社の社長のマーティンとは乗っていたメインの車もサブの車も同じだったりしてなぜか馬が合いまして。彼が言うんです。英国では家は三つ持つのが普通だ、と。

一つはメインハウス。自分の領土=カントリーでありルーツとなる家。次に、タウンハウス。英国ならロンドンなどの都会に拠点を持つ。情報がいち早く入ってくる場所です。そして最後はサマーハウス。夏の別荘です。その話に感銘を受けました。若狭湾はマリーナだったので、そうではなくサマーハウスを持とうと」 

そうして始めた賢島エリアのサマーハウス。もともと古民家再生など建築業も専門であったため、購入した土地にあった古民家の現地再生はスムーズに行った。さらには明治時代の古民家を移築再生し、サマーハウスを自分がデザインした形に近づけていった。 

「移住したころはね、日本海は北海道から九州までいけるけれど、ここ三重県なら東は相模湾、三河湾、そして西は大阪湾から瀬戸内海まで行ける、と夢をいだいていたわけです。でも、実際は古民家の再生、造成、桟橋の設置などやることが多すぎてなかなか思ったようなクルージングはできていないんです(笑)」 

さらには作家の椎名 誠に憧れ、ビーチに椅子とテーブルを出して足を波に洗われるなかでビールが飲みたい、と、敷地に小さなビーチ=ラグーンをおいた。京都の桂離宮の砂をダンプ19台分購入。その作業には写真家の矢部さんにも手伝ってもらった。 

「ラグーンを造ったらイカが入ってくるようになった。干潮になるとイカが浜に打ち上がる。まるで古代の漁法です」 

 

 

竜宮城のような夕食のおもてなし

母屋のダイニングテーブル。床の間には、ヨットの模型と海洋写真家であり友人の矢部洋一さんの作品が展示されている。矢部さんもまた、この秘密基地の常連である 

 

 

解禁されたばかりのイセエビに、カワハギの肝和え、ホラガイなどのお造り。海女で謎の料理人、志摩JIROさんによる料理の数々。酒が好きな乙姫様がもてなす宴は、まさに竜宮城だ 

 

 

イセエビはさらに姿を変え、今度はパスタに変身。地元のワタリガニも加えた、夢のような一皿 

 

 

クライマックスはイセエビの土瓶蒸し。衝撃的なうまさでした 


 

夢のようなおもてなし。長谷川さんの秘密基地の紹介は、後編に続きます

 

(文=中村剛司/Kazi編集部  写真=山岸重彦/舵社)

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