
130年の探検船の歴史をもつHX(エイチエックス)が、日本市場への取り組みを本格化
2026年、創業から130年という節目を迎えた英国のHX(HX Expeditions)が、日本市場への取り組みを本格化している。9月8日、東京で開かれた記者会見には、CEOのゲブハルト・ライナー氏も出席。探検クルーズ専門会社としての歴史と、今後の日本市場に向けた事業戦略が紹介された。

HXのルーツは、1896年に始まる。ノルウェーを起点とした探検航海の歴史を受け継ぎ、現在では南極から北極圏、アラスカ、グリーンランド、ガラパゴス、北西航路など、世界各地の遠隔地を巡るエクスペディション・クルーズを展開している。
そのブランドを象徴するメッセージが、「Change the way you see the world(世界の見方を変えよう)」だ。

一般的なクルーズでは、寄港地を訪ね、観光名所を巡ることが旅の大きな目的になる。一方、HXが掲げるエクスペディション・クルーズは、そこに暮らす人々の文化や歴史、自然環境、野生動物などを、専門家によるレクチャーや上陸体験を通じて深く知ることに重点を置く。船上にはサイエンスセンターを備え、エクスペディションチームが自然科学、歴史、文化などについて解説する。




記者会見で示された資料によると、日本人ゲストの85%が南極を選択しており、現在の日本市場において南極が突出した人気を持っていることが分かる。一方で、HXは今後、南極以外の目的地についても日本での認知を高めていく考えだ。
その背景には、世界的に見たHXの南極における実績がある。2025/26シーズンのIAATO(国際南極ツアーオペレーター協会)のデータをもとにした同社資料では、南極への探検旅行においてHXを選んだゲストは、国際市場全体で10%、アジア市場では約15%、日本人では10%とされている。


では、HXは日本市場をどのように育てていくのか。
会見では「Our 3-Year Ambition: Growing Together」と題したロードマップが示された。2026年を基盤づくりの年と位置づけ、日本におけるBtoBでの取り組みとHXの認知度を高める。2027年にはBtoBマーケティングへの投資を増やし、南極以外のデスティネーションの認知拡大を進めるとともに、スイート利用の拡大を図る。そして2028~29年には、日本をアジアにおける第2位の市場として確立し、南極だけでなく、北極圏、アラスカ、ガラパゴスなどへの需要を育て、個人旅行とグループ旅行の双方が健全に伸びる市場を目指す。興味深いのは、同社が日本人旅行者の「南極人気」を単純に拡大するのではなく、そこを入口として、より多彩な探検航路へと関心を広げようとしている点だ。

たとえば北極圏では、グリーンランドやスバールバル諸島、北西航路がある。アラスカでは野生動物や大自然を身近に感じる航海が楽しめ、ガラパゴスでは独自の進化を遂げた動植物との出会いが待っている。さらに北西航路は、かつて多くの探検家が挑んだ歴史的航路そのものを旅する、まさにエクスペディションならではの目的地だ。
こうした旅を支えているのが、HXの5隻の探検船だ。
〈MS Roald Amundsen〉と〈MS Fridtjof Nansen〉は、それぞれ2019年、2020年に就航した定員490人の探検船。特に〈Roald Amundsen〉は、世界初のハイブリッド動力を採用した探検船の一隻として知られる。

一方、〈MS Fram〉は定員200人。極地航海を意識した船で、2025年には大規模なリニューアルを実施し、サイエンスセンターも刷新された。
より小型で機動性を重視した〈MS Spitsbergen〉は定員150人。小回りの利く船体を生かし、大型船では近づきにくい海岸やフィヨルドなど、より奥深い場所へアプローチできるのが特徴だ。

そして、ガラパゴスを専門に航海するのが〈MS Santa Cruz II〉。定員わずか90人という小さな船で、群島の島々を巡りながら、陸上での上陸探検を組み合わせた旅を提供している。

大型豪華客船とは異なり、HXの船は「船そのものを楽しむ」ことだけを目的としていない。むしろ船は、訪れることの難しい場所へゲストを運び、そこから一歩踏み込んだ体験へ導くための存在だ。

南極の氷原、北極圏の野生動物、アラスカの原生自然、ガラパゴスの独特な生態系、そして歴史に刻まれた北西航路など。

130年にわたって培われた探検の経験を背景に、HXが日本市場で目指しているのは、単に「南極へ行くクルーズ」を増やすことではない。その先にある、まだ日本人旅行者には十分知られていない世界へと、旅の視野を広げることなのだろう。
Change the way you see the world.
その言葉は、HXが提供する旅のスタイルを端的に表している。
(文=田久保雅己 Sea Dream編集長)
インターナショナル・クルーズ・マーケティング株式会社(HXエクスペディションズ 日本総代理店)
〒107-0052 東京都港区赤坂5丁目2-33 Isal AkasakA 409
TEL.03-6434-5401





















