
2026年7月、ベトナムのアナマリーナで「VPS CUP FAREAST19R OPEN」が初開催された。注目のワンデザインボートを用いた国際レガッタに、日本からは新門司マリーナヨットクラブが参戦。アジアの強豪が集まる中で見事に優勝を果たした。若者たちが貴重な海外レースを経験するまでの経緯や、大会の模様、そしてその意義を、同チームを率いた藤田武己氏がレポートする。(舵オンライン編集部)
スービックでの出会いから実現したベトナム遠征
今回、新門司マリーナヨットクラブとして参加するきっかけとなったのは、同年春にフィリピン・スービックで開催された「FAREAST 28R(以下、FE28R)」の国際レガッタだった。(記事はコチラ)
新門司マリーナの「ECL AGENCY CUP」を勝ち抜いたPapillon Sailing Teamの海外遠征に帯同した際、現地で「SEANATA」ディレクターのBui Anh Tuan(TONI)氏と意気投合。レースの合間に、アジアのキールボートシーンの将来や若い世代へのセーリング普及について語り合った。
その場で、新門司マリーナで継続しているFAREAST 28Rのワンデザインレースや「SAILING BOOTCAMP」の取り組みを紹介したところ、TONI氏から「ベトナム初の国際キールボートレガッタを開催するので、ぜひチームを編成して参加してほしい」と打診を受け、今回の遠征が決定した。
日本チームは、新門司マリーナのレースやSAILING BOOTCAMPに参加してきたメンバーを中心に編成した「新門司マリーナヨットクラブ」として参戦。
ヘルムスマンに佐藤帆海、タクティシャンに島本拓哉、フォアデッキマンに吉野佑哉を配し、筆者はチームキャプテン兼ヘッドセールトリマーを担当した。
参加チームには、2008年北京五輪470級シンガポール代表のXu Yuan Zhen氏や、マッチレースやSSL韓国代表で活躍するSungwok Kim氏など、国際経験豊かなセーラーが集結。こうした実力派と同一海面で競える点も、本大会の大きな魅力だった。


徹底したホスピタリティと練習レースでの課題
大会をメインスポンサーとして支援したのは、ベトナムの証券会社VPSだ。空港送迎から宿泊、食事、レセプション、ガラディナーに至るまで手厚いサポートが提供され、海外チームが競技に集中できる万全の環境が整えられていた。
ボートドロー(抽選)により、日本チームには「4号艇」が割り当てられた。
しかしプラクティスレースでは、他艇に比べて走り(帆走角度とスピード)に違和感を覚える。着艇後に確認すると、船底には予想以上の貝や藻が付着していた。そこで翌朝は早朝からハーバーへ向かい、チーム全員で船底のグラインディングとクリーニングを実施した。
大会期間中のニャチャン海面は、午後になると8〜12ノットの良好なシーブリーズに恵まれ、予定されていた全6レースを滞りなく消化した。
船底を整えたことでボートスピードは上位陣と互角になったものの、風上側に位置する大きな島の影響によるガストとシフトへの対応が一歩遅れ、日本チームは初日を「2-3-2」の総合3位で折り返す。
首位には「3-1-1」と安定した走りを見せたシンガポールチームが立ち、2位には韓国チームが続いた。ただし、上位3チームの得点差はわずか2点(首位5点、2位6点、日本7点)と、混戦のまま最終日を迎えることとなった。



課題の修正と怒涛の3連続トップフィニッシュ
初日のレース後はチームミーティングを実施。トラベラーシーティング、ジェネカーランでのヒールバランス、ダウンウインドでのVMG向上、アップウインドでのコース選択などを徹底的に話し合った。各自が艇上で感じた違和感を共有し、翌日の具体的なアジャスト方法を整理した。
最終日は、その修正が走りと展開の双方に見事に結びついた。
強豪のシンガポール、韓国両チームと激しい首位争いを演じながら、第4レースから第6レースまでをすべてトップでフィニッシュ。
最終成績「2-(3)-2-1-1-1」で見事な逆転優勝を果たした。
3レース連続1位という結果はもちろんのこと、初日に浮き彫りとなった課題をチーム全体で解決し、翌日のパフォーマンス向上へ直結させられたことに大きな手応えを得る大会となった。


ワンデザインの魅力とアジアセーリングの展望
主催者が同一コンディションの艇を用意して競うボートドロー形式のレースでは、短時間で艇の癖や状態を把握し、チームワークを最適化する対応力が求められる。自艇を海外輸送することなく手軽に国際レースへ挑める点は、このスタイルならではのメリットだ。若手セーラーにとっても、海外のトップ選手と拳を交え、ノーティカル・スキルと交流を深める絶好の機会となるだろう。
会場となったニャチャンは午後の風に恵まれ、アナマリーナからレース海面や市街地へのアクセスも良好だ。
第1回大会にして9艇の新艇を揃え、アジア各国からチームを招聘して全レースを成立させた主催者の熱意には敬服する。TONI氏によれば、今後はさらに参加艇数を増やし、大会規模を拡大していく計画もあるという。
今回の遠征は、スービックでの出会いと、新門司マリーナで積み重ねてきた地道な活動が結実したものだった。将来、ニャチャンやスービックで切磋琢磨したチームを日本の新門司へ招き、FAREAST 28Rで再び熱戦を繰り広げられる日を楽しみにしている。


(文=藤田武己/ECL Agency、写真=VPS CUP)
本大会の様子は9月5日発売の月刊『Kazi』10月号にも掲載予定です。そちらもぜひ。




















