貸しボート店探訪記/⑤みうらボート店でカレイねらい

2022.12.29

月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。

今回は、『BoatCLUB』2022年3月号に掲載された「釣れない二人でカレイ釣り」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。

※取材は2022年1月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。


 

釣れない魚をねらう

みなさま、こんにちはMr.ツリックです。

毎年、冬のあいだはターゲット選びに苦労するのですヨ。趣味の釣りならば、釣行するたびに好きな同じ魚種を釣っていても誰も文句を言いませんが、連載となると毎回同じネタを書くわけにもいかない。昔の神奈川県・横須賀周辺ならば、カレイ、アイナメ、カワハギをメインに、1月には大きなイシモチ(シログチ)が大量に釣れていたし、3月になれば良型のウミタナゴにメバルも釣れたりして、冬のレンタルボート釣りはけっこうアツかったのだ。

ところが、二十数年くらい前からカレイとアイナメがパッタリと釣れなくなってしまった。なのに、なぜかそのカレイを釣りたいと編集のY男がのたまう。「イヤ、釣れないから」と言っても聞かない。

コレはツリックイジメか? 普段、釣れる釣りに行ってもロクに釣れないコンビに、マコガレイが釣れるワケがない。ましてや、正月休み中にだと。昔、カレイが釣れまくっていた時代に、〝釣期は10月から5月までのロングラン。しかし、カレイも1月は正月休み中〟なんてぇ見出しを、当時の連載に書いた覚えがある。

さらには、ボート屋さんに予約を入れたとき「今は釣れないからせめて2月になったら来てくれ」と、言われたそうではないか。そりゃ、ボート屋さんにしても、ツレナイ記事を全国誌に書かれても困るよなぁ。

でもまぁ、月刊誌はひと月先取りがセオリー。この号が発売されるころには、ちったぁマコガレイの釣れる確率は上がっているだろうが、それでもキビシイですゾ。まだ、横浜や木更津(千葉県)の沖堤からねらったほうがヒット率は高いと思う。

 

冬の東京湾はキビシイ。特に走水は海岸が北向きのため、北風をまともに受ける。なので、冬はチョイト風が吹けば、波長の短い波がバシャバシャな海になる

 

幸先よく、当日はめったにないベタナギに。普段の釣行でもなかなか遭遇しないナギである。ただし、このあたりは漁船や大型船の航行量が多く、ナギの日でも常に波立っている

 

店先で受け付けをするとポイントマップを渡してくれる。乗船は砂浜からだが、波が静かでスタッフのアシストは完璧。よって、ウェダーは不要。長靴で十分である

 

カレイの思い出

そもそも、カレイの旬は夏。横須賀で1月に釣れないのは、産卵の真っ最中でエサを食わないからだ。2月になれば、ハタキ終わってエサを食いだすが、いかんせん絶対数が少ない。しかも、産卵後なので身はペラペラである。なのに、気のせいかカレイ独特のヒキは増すような気がする。

カレイが釣れなくなって以来、20年以上もカレイ釣りをしていませんが、コツンと小さなアタリのあとに、〝ぐるりん〟と強い手応えをサオに伝えるカレイのヒキは鮮明に覚えております。

ドガチャカと釣れている時代のカレイ釣りは、2本のサオでボート下をコヅキ、誘って聞きアワセをする、といったアクティブな釣り方でしたが、マコガレイの減少にともない、サオ数が増えて待ちの釣りに移行していった。

最終的にオイラの釣り方は、仕掛けを意地でも動かさない〝タルマセ完全放置釣法〟にたどり着いた。もともとアンカリングでの釣りですが、アンカーを打っていてもボートは微妙に動く、その動きに仕掛けが引っ張られないようラインをたるませておくのですヨ。その放置時間は長ければ長いほどイイ。最低15分以上で、できれば1時間近く。こうなると釣りといえるか微妙ですナ。

要するに、忍者のようにじっと風景に仕掛けを溶け込ませ、動きのあるエサだけを際立たせて、同じくじっとしているカレイを待つのである。当然、こんな釣り方をしていれば、鈍足のヒトデでもイソメを飲み込むことができる。ましてやフグなんぞがいたら最悪なのだ。

 

わかりやすいカレイ仕掛け。シロギスのモノを太くした感じだ。サオとリールはシロギスタックルの流用でOK。あ、万が一のためにランディングネットは必要ですナ

 

震える手でエサ付け。アオイソメのハリ付けは、丸ごとの1匹掛け、2匹掛け、半分くらいに切って房掛けなどさまざま。とにかく、アピール度を最優先にエサはふんだんに

 

そのまま丸々の2匹掛けは、2匹が絡み合い泳ぎが悪くなってアピール度が下がる。さらに最悪なのは、ハリスまで巻きついてオマツリになる。2匹掛けにするなら1匹は半分に切る

 

今回の釣行マップ(神奈川県横須賀市)

※「海釣図V」(マップル・オン)より転載

 

カレイの誘い方

まず、釣り始めてから数本のサオをセットし終わるころには、最初に投入した仕掛けは15分以上経っている。静かにラインを張り、サオ先を頭上まで上げて聞きアワセをする。このときにコツンとくればシメタもの。ただ重ければヒトデか根掛かりだ。スカッと軽ければ、エサもしくはハリごとフグにとられている。

首尾よくコツンとアタリがきても、すぐにリーリングしてはいけない。ふた呼吸ほど間をおいて、ビシッとしっかりアワセを入れる。このアワセを忘れると海面でのスッポ抜けを招くことになる。これはカレイの姿を見ているだけに超絶悲しいですゾ。しかも、大型になるほどスッポ抜けやすいのだからシビレル。なので、取り込みは必ずネットでランディングしましょうネ。

むなしい過去の話はさておき、今回、都内の大型釣具店にカレイ仕掛けを求めに行って驚いた。なんと、カレイ仕掛けがないのだ。売り切れたのではなくもともと扱っていないよう。しかたなく違う店舗にいったらかろうじて1種類だけ、カレイ・アイナメ兼用の仕掛けが売られていた。全盛期には何種類ものカレイ仕掛けを各メーカーが販売していたのになぁ。

そのころは、カレイ釣り用の仕掛けや釣り方がいろいろ研究されていた。2本のハリを近づけてエサを大きく見せる段差バリ仕掛けも、カレイ釣りから派生した。ほかにも、集魚力のあるイワイソメ(マムシ)とよく動くアオイソメを同じハリに付ける〝アオマム〟なんてハリ付け方法もあった。

 

完全な待ちの釣りになるから、サオ数は多いほうが有利である。この日、オイラは5組のサオとリールを用意したが実動したのは3セット。やる気があるのか、ないのか

 

どこで釣ってもフグばかり。移動後の1投目からフグがヒットする。まるでフグに餌付けをしているようだ。付けたばかりのアオイソメはおろか、ハリまで失うのだからタマラン

 

お得意のタルマセ完全放置釣法をするため仕掛けを遠投する。しかし、潮が速くてラインが張ってしまう。さすが走水。といっても、周辺の潮の速さが地名の由来ではない(※Y男注 諸説あり)

 

強風につき早々に撤収

さてさて、年明けに横須賀は走水のみうらボート店さんにおジャマしてきました。マアジが好調なのに、まったく釣れないカレイを釣りに来るなんて、この人たち変態かしら? なんて空気に包まれつつ店頭で受け付けを済ます。わかっていますヨ、マアジが好釣なのは! そして、このへんは真冬でもアジやメバルが釣れる、都心から近い貴重なゲレンデだということもネ。

砂浜からはわからないけれども、沖に出ると沖に向かって左手に富士山が見えて右手から朝日が昇る。内房の館山同様、北向きの海岸は相模湾育ちには調子が狂うのである。

あ、サングラスを忘れた。オイラには、忘れ物をすると好釣果に恵まれるジンクスがあるが、クルマには積んできているので忘れ物なのか微妙だ。今から戻るのはメンドイので、このままポイントへ向かうとする。まぁ、すぐ近くなのですがネ。 

遠くの対岸にかすんで見える工場の煙突からマッツグに煙が立ち上っている。千葉のどこかのコンビナートかと思っていたが、よくよく考えれば川崎の扇島ですナ。横須賀~横浜~川崎だから、そんなに遠くない。ほぼ無風なのでかすんで見えたのか。

しかし、しばらくすると、垂直だった煙突の煙が右へ90度倒れて真横へ流れるようになった。あちらは強い西風が吹き始めたのであろう。やがてコチラに来る。予報では北西から北風に変わるとか。それから1時間ほど、フグとヒトデに遊ばれていたら、海面がざわつき始め、ボートは向きを変え、強い風が吹いてきた。対岸の煙突を見るが煙は見えない。多分、こちら側に向かって勢いよく流れているのだろう。

さぁ、撤収ぢゃ。次回こそ釣れる釣りに行こうではないか。するとY男がこう言った。「次はクロダイにしましょう」

 

カレイ釣りには付きものであるゲストのヒトデ。ちゃんとイソメを食べてフッキングしている。大型のヒトデの場合、ハリを外すと口からズルズルとイソメが出てくることも

 

大物ならば50センチ前後も夢ではないマコガレイだから、仕掛けもそれなりに太い。ビーズ玉や蛍光パイプなどが付いているが、オマツリしてもほどきやすい

 

須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。

 

(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=BoatCLUB編集部/幸野庸平[Y男])

 

今回お世話になった貸しボート店

2021年の5月号でもお邪魔した、みうらボート店。今回も前回同様2馬力の船外機付きボートを借りた。ほかに、手漕ぎボート、20馬力の船外機付き(定員4名)、30馬力の船外機付き(定員8名)がある。生きエサや仕掛けなども販売しているので、買い忘れがあっても安心だ。

みうらボート店
[住 所]神奈川県横須賀市走水1-2-7
[連絡先]046-841-5626
[料 金]4,000円~
[定休日]第2、4火曜日


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