〈DMG MORI SAILING ACADEMIE 2〉(セールナンバー1048)澤田皓希(左)/國米 創(右)ペア。photo by Lizzart Production / Duo Concarneau 2026

クラスミニ6.50によるダブルハンド外洋レース「デュオ・コンカルノー(Duo Concarneau)」のプロトクラスで2
位を獲得したDMG MORIセーリングチームの若手育成プログラム〈DMG MORI SAILING ACADEMY 2〉の澤田皓希(こうき)/國米 創ペア。そのコスキッパー、國米 創さん(愛称、アレックス)から、レース展開に関する詳細なレポートが届いた。ヴィエイユ灯台で有名なイル・ドゥ・サン(Ile de Sein)の潮流との闘い・・・。リアルな激闘の模様をぜひ!(舵オンライン編集部)

Welcome back!の祝福!

お久しぶりです! 9月17日に「デュオ・コンカルノー(Duo Concarneau)」のダブルハンドレースに〈DMG MORI SAILING ACADEMY 2〉(セールナンバー1048)で澤田スキッパーのコスキッパーとして出場しました!

クラスミニ6.50(以下、MINI)のレースはミニ・トランザット以来で、ほぼ1年ぶりのレース。それだけじゃなく、皆さまがご存知のミニ・トランザットの事故以来のレースでした。このレースに出れると聞いたときに心が上がりました。それは嬉しさからと同時に緊張からきたと思います。レース会場に到着したとき、MINI協会の皆さまと、去年一緒にレースをした仲間たちにWelcome back! って祝福してもらいました。

先に言っておきますが、残念ながら今回はトラブルありませんでした! トラブル記事を期待していた皆さま、ぜひ最後まで読んでください!

ミニレースではお馴染みのコース表とリザルト。スタート前日の夜にコース変更もよくあります

澤田皓希/國米 創ペアのリザルト詳細

  • セールナンバー:FRA 1048
  • 艇名:〈DMG MORI SAILING ACADEMIE 2〉
  • 選手名: Koki SAWADA,(H) / Hajime KOKUMAI,(H) [澤田皓希/國米 創]
  • 到着時刻: 2026年9月19日 13:30:29
  • 実走時間:1日23時間04 分29 秒
  • 1位との差:11分09秒

レース2日前の追悼式

このレースはコンカルノーからスタートして、南の風車を回ったあと、北にあるレ・ピエール・ヴェルト(Les Pierres Vertes)のマークを回ってからコンカルノーに戻る約310マイルのレースです。日本で例えるなら蒲郡→八丈島→横浜です。

レース2日前の15日にオフショアのレジェンド、シャーリー・ダランの追悼式がコンカルノーで壮大に行われました。コンカルノーはシャーリーのホームポートで、長年ゆかりのある場所になっていました。追悼式にはMINI仲間と見にいき、オフショアセーラーがどのように皆んなの人生に影響を与えたんだろうと話し合い、目標にするべき唯一無二の人物だと多くの仲間たちと再認識しました。

レース1日目、スタートは2線目から

スタート予告は14時でした。レースに出る47艇はエンジンがついていないため、レース運営のゴムボートが順番にみんなを曳航(えいこう)して出してくれました。雨が降っていおり、早く出ると外で長時間待つことになるので、いい感じの時間になるまで船内で澤田と雨宿りして、あまり早く出されないように隠れていました(笑)。

スタートは1回目はゼネラルリコールで2回目にオールクリアでスタートしました。僕たちはスタートを失敗して2線目で出たものの、順調に走ることができて1マークは1位で通過しました。マーク回航後はダウンウインド、すぐに後ろから同クラス艇が3艇ついてきました。この3艇とは僕は去年から馴染みがある船で、今回のレースのライバル艇といえる船です。そのなかでも注目していたのは〈UOUM〉(セールナンバー1026)のロバンソンです。

個人的には彼とは2年間ずっと一緒に練習をしてレースもしており、最後まで勝つことができなかった友達です。ライバル艇の得意な走り方も頭に入れて、自分たちのできる最速の走りに集中しました。途中で小さなミスがありつつも、2人で話し合い、調整しあってミスを最小限で済むように努力しました。

photo by Lizzart Production / Duo Concarneau 2026

睡魔と格闘したレース2日目

2日目の朝は微風でした。ただでさえ眠たいのに、まわりの静かさと船の揺れのせいで睡魔が襲ってきました。交代で睡眠をとりながら、リラックスをして食事を2人で取りました。このレース最初の食事はフランスで買ったカップ焼きそばでした。フランスのカップ焼きそばは日清ブランドで結構楽しみにしていましたが、お湯がうまく切れていない状態でソースを入れてしまったのでべちゃべちゃな仕上がりになってしまいました。ダブルハンドのいいところは、こういう小さな悲しい瞬間があるときに人と話せてとても嬉しいです。自分のミスなのに愚痴り倒して僕はまた睡眠に戻りました。

最新天気情報が状態で、無風状態で来るかも分からない西風を目指して船をポジショニングするのは、とても神経を使いました。自分の持っている情報を信じているけれど、頭のなかの無駄な声が「本当にその風はくるの?」と、不安を煽ってきます。我慢と辛抱の末、昼過ぎに予報よりも少し遅れた西風がしっかりと入ってきました。パワーアップウインド(VMGよりも角度低めで走ること)のスピードがうまく乗らなくて苦戦しましたが、なるべく相手とは距離を離さずに、このレースで最も攻略しないといけないところに到着しました。

イル・ドゥ・サン(Ile de Sein)の向かい潮攻略


フランスでレースするにあたって誰もが知っているイル・ドゥ・サン(Ile de Sein)の、強い向かい潮の時間帯に通過しなければいけない状態でした。東側にあるヴィエイユ灯台がとても美しい景観で有名です。

ヴィエイユ灯台。photo by S.Möller

幸いこの日の潮汐係数はそんなに高くありませんでしたが、それでも表だと2.4ノットの向かい潮が来ていました。僕たちは少し低く走っても潮の流れの弱い西ルートを攻めました。一方、ロバンソンは早めに少し低く走り、潮が強いエリアを走らないといけないとしても、僕たちより少し高めに走って突破する作戦にでました。結果的には僕たちが少し早めに潮流の強いエリアを抜けましたが、相手のほうが次のマークまでの角度がよく、スピード負けをして抜かれてしまいました。

当日の潮流参考図

帰路の困難

北のマークを04:30ごろに回航し、再び南に戻って行きました。北に向かっている途中の他艇をAIS(船舶自動識別装置)で確認すると、2位に〈Seven x Seven(セブン・バイ・セブン)〉(セールナンバー998)の高原奈穂とポール・クザンを確認できました。シリーズクラスが3艇固まってい「これは接戦だな」と澤田と話していたら、まさかの3位ポジションが〈DMG MORI SAILING ACADEMY 1〉(セールナンバー1051)の遠藤航大/ダミアン・クロアレック(Damien Cloarec)でした! 澤田と2人、テンションが上がり、自分たちも頑張ろうと気合いが入りました。

喜んでいるのも束の間、3艇の後ろから20艇以上の船が僕たちに目掛けて走っていました。この時はまだ真っ暗だったので、AISと目視で船を確認し、国際VHF無線で相手をコールしてコミュニケーションを取りながらレースをしました。相手を避けながら走っていてなかなか思い通りに追いつけず、相手と1マイルの距離のままゴールまでラスト10マイルにきました。

ラスト10マイルの勝負

最後の勝負はダウンウインドでした。3位とは結構差があったので、ここは相手とセパレートして(別のコースを取って)勝負するしかないと2人で判断しました。トラッキングをみると悪あがきのように見える最後の足掻きかもしれません。でも、ただ単に相手の逆を走ったわけではなく、一つ一つのジャイビングと走りを丁寧にして、短いコースのなか僕たちに配られたカードで勝負しました。最後は1マイルの差を縮めることができずに相手は僕たちの目の前でフィニッシュし、11分語に僕たちもフィニッシュをして2位でレースを終えました。

澤田と一緒に今シーズン初優勝できなかったことがとても悔しかったです。悔しい気持ちがありながらも不思議と僕は気持ちがよかったです。今思うと、この気持ちはレースに戻ってきたからだけでなく、今年から選手ではなく整備士だったため、忘れかけていたレーサーとしての気持ちと自分はセーリングとレースが好きだという気持ちを思い出したからだと思います。改めて今回一緒にレースに出ることを誘ってくれた澤田には感謝です。次こそチームジャパンでレース優勝できるように頑張ります!

たくさんの応援ありがとうございました!これからもDMG MORI SAILING ACADEMYの成長を楽しみにしてください。

澤田皓希コメント

「常にトップ争いが見える位置で戦えただけに、勝ちきれなかったのは悔しいです。一方日本人ペアで、フランスのトップセーラーたちと優勝を最後まで争えたことは大きな意味があると思っています。個人的には今季3度目の準優勝。来年こそ、届かなかったあと一歩上を目指します」

(文・写真=國米 創 写真= Lizzart Production / Duo Concarneau 2026)

text & photos by Hajime Kokumai, photos by Lizzart Production / Duo Concarneau 2026

國米 創 Hajime Kokumai

1994年ハワイ出身。DMG MORI セーリングアカデミー所属。愛称はアレックス。ハワイで幼少期を過ごし、高校は岡山県へ。ユースアメリカズカップ出場、オリンピックキャンペーンも経験する。プロトタイプの〈DMG MORI Global One Mini 2〉(セールナンバー1048)でデュオコンカルノーで2位獲得。