
単独大西洋横断ヨットレース「ミニトランザット2025」に出場した高原奈穂さん、中山寛樹さん、國米 創(はじめ)さんら日本人3選手によるアフタートークショーが、12月20日にゴールドウイン本社(東京都港区)にて開催された。司会進行として、ミニトランザット2019、2023、2025と3大会を取材した、バルクヘッドマガジン編集長の平井淳一さんが選手と共に登壇。約60分のトークと質疑応答、記念撮影が行われた。
レース中の食事や睡眠のサイクルなど、限られた環境での生活についてのトークでは、中山さんは1食ずつ無洗米をメスティン(アルミ製飯盒)で炊いたと話した。一方、高原さんは尾西食品のフリーズドライのご飯を愛用し、「それに梅干しをトッピングするのが最高の食事でした」と振り返った。

平井淳一さん(バルクヘッドマガジン。写真左)は今大会でもスタートを取材。90艇が1艇ずつドックアウトするときの感動的な様子を語った。選手は右から國米 創さん、高原奈穂さん、中山寛樹さん
3人はヘリーハンセンのウエアを着用してレースに挑んだ。中山さんは第2レグの18日間、「リファ」を着続けたが全く臭くならず、その性能の高さを実感。高原さんは4〜5日でトップスを交換していたそうで、「明日はTシャツを替える日だ」とそれも楽しみのひとつになっていたという。國米さんは未確認浮遊物(本人はクジラと推測)との衝突により、第1レグの4日間だけのレースとなった。スコールも降れば、太陽に照らされる時間ももちろんある。なかなか着替えられない中、「ヘリーハンセンのカッパを着ているとレースに集中できました」と話した。

会場には3人が着用したヘリーハンセンのウエアも展示された。右から中山さん、高原さん、國米さんのウエア

中山さんへの応援メッセージが書き込まれた地図と国旗
トークショー終盤、中山さんは「マストが折れたなどの他艇の状況を知って保守的なレースをしてしまい、『なんて自分は保守的なのか』と自己嫌悪との戦いがつらかった」と、単独レースならではの自分との戦いについて語った。「序盤の無風地帯で出遅れて、巻き返せると思う自分と完走さえできればいいと思う自分がいたが、レースをしに来たということを考え直し、自分の思うレースをやり切ることができた」とは、高原さん。國米さんは序盤、良い順位をキープできていたこともあって悔しさをにじませたが、「ポルトガルでクラッシュして貨物船に救助されて、ガーナで下船するまで18日間。僕だけ別のミニトランザットになりました」と話し、聴衆の笑いを誘った。
最後にこの挑戦とレースを通じて学んだことをそれぞれの言葉で語り、締め括った。
今後の展望として、中山さんは2027年の単独世界一周グローバルソロチャレンジに挑戦、國米さんはジ・オーシャンレース参加を表明しているDMG MORIセーリングチームのテクニシャンとしての活躍とレース参加、高原さんは会社員をしつつ20日間ほどのレース参加を目指すという。
3人それぞれのミニトランザットのレポート記事は、2026年1月5日発売の『Kazi2月号』に掲載するので、こちらもぜひご覧いただきたい。
(文・写真=森口史奈/Kazi編集部)
