世界一のシーマンシッププレイヤーはベルギーに決定! 国際大会を制する/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会5-4

2025.11.06

世界各国から6チームが参加した、シーマンシップを競う国際大会「アトランティックチャレンジ」。カイ&エリこと、山本 海さんと絵理さんが参加したこの国際イベントを制したのは、ベルギーチームであった。バントリーベイギグ(全長38フィート、全幅2mの木造船)を使い、メーン州のベルファストを舞台に繰り広げられた10日間におよんだシーマンシップの攻防。次回大会へ向けて意欲的な、カイ&エリのレポートをお届けする。(編集部)

◆メインカット 
photo by Kai Yamamoto | 優勝はベルギーチーム!  歓喜に沸き、海へ飛び込むメンバーたち

 

 

歓喜し、海にダイブ。国旗を掲げ優勝を分かち合うベルギーチーム

 

 

2026年フランス大会へ向けて

メーン州のベルファストで開催されたアトランティックチャレンジ。10日間の激闘を制したのは、ベルギーチームだった。僕らインターナショナルチームはセーリング&オールのレースで1 位を取ることができたものの総合優勝は逃した。

この大会はセーリングやオールで漕ぐということが基本にはなっているが、それだけでは勝てる競技が限られ、総合優勝には届かないようになっている。例えばMOB(落水者救助)では、実際に人が水に飛び込みその人をいかに早く助け出すかが競われる。ナビゲーションでは指定された地点に海図を使わずにブイを投下し、その位置が指定された位置といかに近いかを競うのだが、必要なのはクロスベアリング技術とGPSを使わずに船のスピードを測る技術、一定の速度を保つ体力など、かなり難しい。

スラロームでは舵が外され、オールへの号令だけでブイを回るので号令を伝えるリーダーシップが問われる。ジャックステイ・トランスファーではアンカーを打つタイミング、船を180度回転させてヒービングラインで橋にロープを渡しロープウェー(ジャックステイ)を作る速さを競う。一番単純と思われるオールのみで漕ぐレースも2マイル(3.7km)もコースがあるので、スピードを維持する駆け引きと戦略が必要になる。どの競技も単純なものは一つもなく、シーマンシップが養われていなければできない競技ばかりだ。

大会中は毎晩港の会場でダンスパーティーが開かれたり、競技が終わったら近くのレストランやパブで食事やビール(もちろん成人のみ、腕に成人か未成年か分けるリストバンドを全員装着する)を楽しんだりできる、夢のような時間だった。

無人島での生活を楽しんだ僕らインターナショナルチームは、競技者としてはまだまだ練習をしなければならない結果となったが、どう練習すれば良いか、どんなチームを作り上げれば良いか、僕とエリの頭の中はすでに次回の大会に日本チームとしてどう戦うか、そんなことを考えていた。

次回は2026年フランス大会。僕らはこの大会に向けて20人のチームを作ろうと考えている。まだまだ準備しなくてはならないことが多いが、僕らには全国にセーリングカッターという練習に適した船がある。僕らはこれから、日本から世界のシーマンシップにチャレンジする「アトランティックチャレンジJAPANチーム」を作り上げていく。

2026年には間に合わないかもしれないが、日本の木を使ってバントリーベイギグも建造して、日本の船で世界に挑戦する計画を立てている。ぜひ仲間になってくれる人は連絡をしてほしいし、僕らの活動に注目してほしい。

 


シーマンシップ大会を振り返る
JACKSTAY TRANSFER解説
ちょっと変わった競技、ジャックステイ・トランスファー。マストとジャックステイ(ロープウェイ)を使って陸の荷物を艇に積み込む競技。まず、船はマストを立て、陸との間にジャックステイを作り、ザックを艇内へ。受け取った船はマストを倒し再びスタート地点に漕いで戻る。その時間を競うのだ。

 

①陸上のクルーへヒービングラインを投てき!

 

②橋に到着したら、マストを立てる!

 

③マストと陸上をジャックステイ(ロープウェイ)でつなぎ、荷物を運ぶ(トランスファー)!これをカッコよく決めることができるとちょっとしたヒーローになれる

 

PIVOT ピボット 
オールの前後を切り替えて左右逆に漕ぐことで一気に船を回転させる技術、ピボット。これ自体が競技ではないが、この技術は多くの場面で活用された。

右舷と左舷のクルーが逆に座っている。オールを漕ぐことで、艇がその場回転するのだ

 

オールがしなるほど力強く漕ぐ!

 

競技中の破損は自分たちで修理

僕らのチームはマストに亀裂が入ってしまった。エポキシと補強のロープで固く縛り上げた

 

プッシュしすぎて折れまくったオール

 


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和船帽子の陽気なダグラスさんとの出会い/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-1

 

(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=ディラン・ラッズ、山本 海、山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)

 

※本記事は月刊『Kazi』2025年6月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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山本 海
Kai Yamamoto
セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com


 

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