無人島(米・メイン州グリーンアイランド)一周計画に挑む、カイ&エリこと、山本 海さんと絵理さん。多国籍メンバーが集まったナショナルチームは、習得したセーリング技術に固執し、前半をUSAチームに先行される・・・。無人島一周はトレーニングではあるが、USAチームとの競争の場でもある。負けることは、相手よりも技術が劣るということを明確にしてしまうのだ。いち早くその間違いに気付き、ローイングに変えてUSAチームを追い上げる。最初の航程を終え、若者たちは次の航海の準備を始めた。(編集部)
◆メインカット
photo by Kai Yamamoto | 僕たち、インターナショナルチームのバントリーベイギグ〈ロイヤリティー〉(18世紀、フランス海軍の軍艦に積まれていた大型ボート)。帆走技術はかなり上がり、USAチームにも劣らない自信がついてきた。しかし、それが落とし穴であった・・・
Starting over!
最初のレグを終え、2チームは再出発する。次のレグは難所が多い。十分な準備が必要だ。
ブルースアンカーを石ころだらけのごろた浜に掛け、艇を仮留め。体を休めるとともに、次のレグの準備を行った
左が〈ロイヤリティー〉、右がUSAチームの〈ヒューマニティー〉
難所の水路、漁具の障害物
インターナショナルチームのバントリーベイギグ(18世紀、フランス海軍の軍艦に積まれていた大型ボート) は、南の岬を回り、入り江に入る。岩がちなビーチだったが、船をビーチングして全員でランチ休憩となった。
全体の三分の一もきていないが、皆の顔は明るい。これからは天国のようなコースが待っている。
これから向かう海域をビーチから眺めると波は島の陰に隠れて海面はフラットになり、風は5~6m/sと最高のコンディション。
ランチを食べて体力も回復した僕らは、一気に沖に漕ぎ出し帆を揚げた。風が強すぎたので、完全に島陰になるまではセールをリーフ(縮帆)して走った。船は午前中とは比べものにならないスピードで、僕らを北にぐんぐん運んでいく。島の間や谷間を吹き抜けるブローに気をつけながら、船は島と島の間の水路に入る。さらに海面と風は穏やかになるが、浅瀬や岩礁が多くなり、同時にロブスターポット(ロブスター用の漁具)が海面に増えてきた。海図を見るナビゲータ役と見張りが、舵を取るコックスンに障害物を次々に伝える。
波と戦う体力勝負の時はにぎやかだった船内が、じっとりと緊張に包まれシャラシャラと流れる波とバウに立つ見張りの張り上げる声が島にこだまする。ほかのクルーはいつでもセールを操作できるように、ロープを握ったままスタンバイの姿勢で動かない。まるでレースをしているような緊張感だったが、僕にはとても充実した時間に感じられた。
水路を抜け、島の北西側の広い海域に出た時は全員がキラキラと光る笑顔で喜び合った。
島の北側にキャンプを構えるUSAチームとはここでお別れなので、キャンプの沖でアンカリングし、一日中太陽に晒され熱った体で思い切り海に飛び込みお互いの旅を労った。
Navigation is key
各チームのナビゲーターの腕の見せ所である。複雑な水路、変化に富んだ風を読み、航海計画を再確認。
伴走艇の上からも海図を元にコースをサポートした
セールを揚げるが風が強い。リーフ(縮帆)で対処した
島の東側の水路に入ると、波が穏やかになるが突然ブローが入り、緊張が走る。プレーニングとまではいかないが、難しい水路内でのセールトリムはエキサイティングだった
波が穏やかな場所は格好の漁場。静穏なエリアに入ると、漁具の一つロブスターポットが出現
Snack & Swim Time
グリーンズアイランド一周を終えて、おやつタイム&水泳タイム。緊張が解けた瞬間だ。
漕走、帆走でかいた汗を海水で流す。ひとときの休憩タイムである
ギグのチェアにお菓子を並べる面々(笑)
おやつタイムに突入するため、速攻でセールをたたむ
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和船帽子の陽気なダグラスさんとの出会い/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-1
(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)
※本記事は月刊『Kazi』2025年5月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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山本 海
Kai Yamamoto
セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com