米・メイン州の無人島、グリーンアイランドへ上陸したカイ&エリこと、山本 海さんと絵理さん。ついに、自分たちの大型ボート=バントリーベイギグ〈ロイヤリティー〉に出会う! まずその前に、真っ先に行われたのはチームビルド、チームの絆の大切さを痛感させられるプログラムであった。(編集部)
◆メインカット
photo by Kai Yamamoto | これから僕らインターナショナルチームが乗ることになる、フランス海軍の軍艦に積まれていた大型ボート=バントリーベイギグ〈ロイヤリティー〉。全長38フィート、全幅2m
●GREENS ISLANDに上陸
目的地、グリーンズアイランドに着くと、真っ先に行われたプログラムとは……
一本のロープを全員で持ち、全員で体重をかけていく。そこで一人が手を離すと……。チームの大切さを知る貴重な体験プログラムだった
島での生活が始まる前にプログラムが解説される
“I can’t change the direction of the wind,but I can adjust my sails to always reach my destination”
「風向きは変えられないが、セールを調整し、いつでも船を目的地に向かわせることができる」この言葉を掲げ、若者にシーマンシップを伝える団体「アトランティック・チャレンジ」。
2年に一度、各国のチームが集まりシーマンシップを競う大会が開かれるという。日本にも学びの場所と、世界につながるチームを作りたい。 カイ&エリこと、スピリット・オブ・セイラーズの山本 海と絵理が、日本人として初めて参加してきた。
一本のロープ
僕らの目的地であるグリーンズアイランド(Greens Island)は、ヴァイナルヘイブンの港からさらに南西にボートで20分のところに位置している。
上陸して初めに行ったのはUSチーム、インターナショナルチーム全員で輪になり、一本のロープを持ち、そこに全員が体重をかけ、綺麗な円を作ること。全員でバランスを取るまで少しの時間、隣の人と互いにあーだこーだとやりとりが行われる。全員で綺麗にバランスが取れたところで、チーフインストラクターでアトランティック・チャレンジの責任者でもあるアリスタ・ホールデンが一人に「ロープから手を離してみてほしい」と指示する。40人近くいる人数の中で、たった一人が手を離しただけで、輪のバランスは崩れ全員にそのショックが伝わる。離した本人はなんともないが、ロープを持ち続けている僕らは何人かが倒れそうになるほどだ。
アリスタは続ける。
「これがこれからあなたたちが経験するチームというものです。たった一人抜けただけでチーム全体に影響が及び、時にはチームの危機につながることもあるかもしれません」
言葉よりも体で感じたこの「チーム」というものは僕の心に強く残った。船は決して一人では動かない。英語も得意でない僕はこのチームの一員としてやっていけるだろうか。ただ、僕もすでにチームの一員なのだ。
それからお互いが仲良くなったり、それぞれの出身が分かりやすくなったりするようなプログラムを経て、USチームは島の北側にキャンプを、僕らインターナショナルチームは島の南西側にキャンプを張りトレーニングを開始することになった。
(次回へ続く)
●Bantry Bay Gigとの出合い
無人島でバントリーベイギグと対面する。その美しさに見ほれる……
まずは、バントリーベイギグの船底に溜まったビルジをポンプアウト。木造船なので常に必要な作業だが、なかなか疲れる
船の基本動作であるオールの扱い方、こぎ方、号令などを学ぶ
船を出港させる際は細心の注意が必要だ。船体が長いためにオールを出す順番、タイミングを間違えただけでコントロールが効かなくなる
日本のカッターとは違い、掛け声ではなく漕ぐタイミングはオールの音でそろえる
第1話を読む
和船帽子の陽気なダグラスさんとの出会い/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-1
(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)
※本記事は月刊『Kazi』2025年3月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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山本 海
Kai Yamamoto
セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com