魚の皮を加工したフィッシュレザー

魚の皮をなめした「フィッシュレザー」って知ってますか? そう、牛革や馬革と同じ「革」の一種で、その名の通り魚の皮から作られています。魚ならではのウロコ模様や質感を生かした、ちょっと変わり種のレザーです。

(文=水野一彦、写真提=落合明人、写真提供=オーシャンレザー)

魚皮ならではの質感が独特のフィッシュレザー。写真のように単色に染めたものと、魚本来の色味を再現したリアルカラーのものがラインアップされています

オーダーメイドにも対応

フィッシュレザーは、高知県の「オーシャンレザー」が製作・販売しています。こちらは、もともとは40年続く水産加工会社で、3代目の高橋大海(ひろみ)さんが新規事業として立ち上げたもの。

聞けば、マダイを刺身する場合、「だいたい60~70パーセントぐらい廃棄される」そうで、「もったいないなと思って、活用方法をいろいろ考えてたどり着いたのが、フィッシュレザー」だったそうです。

オーシャンレザー代表の高橋大海さんが、家業の水産加工の作業中にこのフィッシュレザーのアイデアに行きついたそう


魚の皮というと、つい「生臭いのでは?」と思いますよね。もちろん、特殊加工されて商品となったフィッシュレザーはそんなことはなく、「繊維がクロス構造になっているため強度も同厚の牛革と同程度、引っ張り強度はむしろ強い」とのこと。

さらに、自分で釣った魚を使うオーダーメイドにも対応してくれる、とのことなので、今回、実釣で魚を用意し、実際に作ってもらうことにしました。

いざ、マダイの調達釣行へ

オーダーメイドで製品を作ってもらうにあたり、自前でマダイを調達することに

この日の海は穏やかで、絶好の釣り日和。ただ“マダイを釣らなければならない”プレッシャーが、時間とともに大きくなっていきます

素材確保の釣行に協力いただいた海村さん夫妻。タイラバでのマダイ釣りは、一年を通じて一番多い釣りとのことで、大変心強い!
前後の両舷に分かれ、4人でサオを出します。ボートはスズキ・アグレッサー21。ドテラ流しではなく、船首のアイ・パイロットを使って風上に向け、流れるスピードをコントロールします
ここ数年、東京湾でも異常に多いサバフグに、この日も悩まされました。タイラバのスカートをボロボロにしていくのは本当に困ったものです
サバフグの猛攻をかいくぐり、海村さん夫妻のダブルヒットでようやく本命を確保。しかし、「長財布の場合は全長50センチ以上、二つ折りの財布の場合でも全長40センチ程度はほしい」ので、これだと少し足りない……(左のチャリコはさすがにサイズが小さいのでリリースしました)
この日一番の強烈なヒキ! 正体は本命マダイではなく、50アップのシロアマダイでした。これは“皮”こそがおいしい魚なので、海村家の食卓用にキープ
最後に移動したポイントでようやくこのサイズのマダイが釣れました。「逆転サヨナラホームランが出ましたね!」と、船頭役の海村さんもホッとした様子。目標サイズの50センチには少し足りなかったけれど、問題なく財布に仕上げてもらえるととなりました!
この日の当たりルアー。カルディバ・サクラドロップ80グラム赤金に、カーリーとストレート(オレンジシュリンプ)のネクタイ
“魚革として加工後の状態”で、製品に使うことができるサイズの目安となるチャート。SSはキーホルダー、Sはコインケース、Mは名刺入れ、Lは財布というイメージです

フィッシュレザー製品のできるまで

現在のフィッシュレザー製品のラインアップは財布、名刺入れ、コインケース、キーホルダーなど。使う魚はマダイ、ブリ、シイラ、スズキ、サーモンといったところです。「オーダーメイドの場合、GT(ロウニンアジ、カスミアジ)やハタ類が持ち込まれることも多いですが、魚種によってできる、できないがありますので、まずは問い合わせをしてもらう」のが基本です

皮に残った身を取り除く
① 肉そぎ

傷がつかないように細心の注意を払って皮を引き、残った身を取り除きます
包丁で取りきれなかった身は、スクレーパーを使ってきれいに取り除きます。魚の皮の厚さは、魚種にもよりますがだいたい0.7~0.9ミリ程度で、ヘビ皮と同じくらい。ウロコは取ってしまってもいいですが、次の洗い/脱脂工程で自然に取れるので、最初はついたままのほうがきれいに仕上がるとのことです

脂分やニオイを抜く
②  脱脂

ドラムと呼ばれる機械に入れ、毎日水を替えながら1週間程度洗って、脂分とニオイを取ります
脱脂した皮は色が抜けて白っぽくなり、ニオイもなくなりますが、このままでは干物のように硬い状態。脱脂の際はアルカリ性の洗剤を使いますが、魚皮はダメージを受けやすい(特に酸に弱い)ので、ペーハーを抑えた洗剤をごく少量使い、牛皮やヘビ皮に比べて2~3倍の時間をかけます。脱脂後は中和剤を加えてペーハーを調整します

しなやかで腐らない“革”に
③ なめし

皮を柔らかくするとともに、防腐処理を施す工程が“なめし”。なめし剤をメインとする薬剤を毎日投入し、これも1週間程度かけます
なめし剤は植物タンニン(写真はミモザ由来)と合成タンニンを使い分けます
植物タンニンは柿渋と同じで、このような色がつきます。なめし工程では、一度抜いた脂分を持たせるための加脂も行います。耐熱性や耐薬品性も加わり、これを乾かして素材としての革ができあがります

風合いを活かして染める
④ 染色

なめしの済んだ革と染料をドラムに入れて染色を行います
現在の製品はリアルカラーのほかに、ブルー、ブラック、オレンジ、ピンク、グリーンといった色が使われています
顔料による表面塗装ではなく、染料を革の内部に浸透させる染色は、自然な革の風合いを出すことができます。それぞれの魚のウロコ模様が活かせるので、同じ色の染料を使っても、微妙に風合いが変わるのがフィッシュレザーの魅力

魚本来のリアルな色も
⑤ 塗装

耐久性を高めるためにスプレーで透明な塗料をコーティング。薄く吹いて圧着、を繰り返します
こちらはマダイの色を再現したリアルカラー塗装の様子。なめしの段階でベースの色が白っぽくなるよう、合成タンニンのなめし剤を使います
マダイの青い斑点を、型を当てて彩色しているところ。リアルカラーは色を決めるのに時間がかかり、現在すぐ対応できるのはマダイ、ブリ、シイラといった魚種に限られています

製品に仕上げる
⑥縫製

製品を作る際は一般的な革製品と同じく、カットしてミシンで縫製します。革同士を何枚かはぎ合わせて大きなものを作ることも可能で、アパレルメーカーから注文を受けることがあるそうです
強度的には魚の皮だけでも製品にはなりますが、薄いので重厚感が出ないことと見栄えも考えて、製品にする際には内側に牛革や布などを使っています。ほかの工程と同様、縫製も専任のスタッフが手掛けています

ウロコ模様がリアル!
⑦ 出来上がり

今回釣ったマダイでオーダーメイドした、リアルカラーの財布とコインケース。製作期間は、魚種や作るものにもよりますが、基本的に3カ月から半年。費用も幅がありますが、1万円から10万円程度をイメージしてもらえば、とのことです
マダイのウロコ模様がリアルレザーの証。質感と手触りは唯一無二のものです
内側は牛革仕上げ。見た目だけでなく実用性もしっかり考えられています
コインケースも内側は牛革を重ねて仕上げています
できあがった財布とコインケースを手に、うれしそうな海村夫妻。ガンガン使って経年変化も楽しんでくださいね

※本記事は『ボート倶楽部』10月号から抜粋・再編集したものです。バックナンバーもぜひご覧ください。

問い合わせ

オーシャンレザー(興洋フリーズ)
TEL:080-8630-2878

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