青森と北海道の函館という美しき北国を行き来する北田 浩さんのセーリングライフ。JOSA(日本オーシャンセーラー協会)のオーシャンセーラーであり、単独大西洋横断レースを次々と完走した猛者。日本人初参戦、初完走を果たしたルート・デュ・ラムデスティナシオン・グアドループ2018など、数々の記録も持つ。そんな北田さんのコースタルデイズ、後編をどうぞ。


函館の丘の上から描く未来
青森県下北半島のオフィスと住まいを構えたオーシャンセーラー、北田 浩さん。活動拠点はフランス・ロリアンだったが、日本の南北海道外洋帆走協会での活動が本格化するにつれ、北海道函館の函館山、景観のよい丘の上に新たな拠点である「風の家」での活動を始動させた。
JOSA(日本オーシャンセーラー協会)代表理事。〈貴帆〉(クラス40ポゴ40-S3)による大西洋横断レースの実績は、ザ・トランザット(2016年)、ノルマンディ・チャネルレース、レ・サーブル=オルタ、オルタ=レ・サーブル、ファストネットレース(2018年)、ルート・デュ・ラムデスティナシオン・グアドループ2018(日本人初参戦、初完走)、ファストネットレース(2019年。フォイリングIMOCA60による参戦)、トランザット・ジャックバーブル(2019年)など。主にソロでのチャレンジをメインとし、大西洋を駆け抜けた。そんな北田さんが考えるこれからのセーリング活動とは。
元来、北田さんはおしゃべりではない。これからの計画なども心の中にはあるのだと思うが、べらべらと語るタイプではない。数日間、風の家にお邪魔するなかで、この新たな拠点で構想する未来について、少しずつその胸の内を聞いた。




風に立つ日
「育成はこれからも続けていく。その中で、ポゴ30をプログラムに加えることにした。いきなりポゴ40S3だと少し過激だから、段階的にステップアップしながらつなげていく。今は、その準備を進めているところなんだ」
このところ、育成中心の活動ですがご自身のセーリングは……?
「ここ3年くらい、自分のためのセーリングってしていない。けれど、函館に移ってゆっくりと自分を見つめなおす時間が増えて。実はね、この前クラス40でソロで走ってみた。久しぶりにヨットっていいなあって心の底から思った。その夜、ボロボロ涙が出てさ。久しぶりにときめいた……。そろそろ自分も動こうかなと思っています」
ザ・トランザットのときには、フランスの新聞で“51歳のルーキー”と報道された北田さん。今年で61歳になる。
「サント・マリーヌでは70代のオールドソルトが毎日クラス40に乗っています。かっこいいなと思いますね。私ももう一度チャレンジ。“61歳のルーキー”。いいじゃない(笑)」
美しき函館港を見下ろす風の家のリビングで、少年のような笑顔で語ってくれた北田さん。次なる挑戦のお話も、またここで聞かせてください。






北田 浩さん Hiroshi Kitada
青森県出身、61歳。国内外のオーシャンレースを経て、ザ・トランザット2016、ルート・デュ・ラム2018を完走したソロセーラー。JOSA代表として、外洋レースを目指す日本の若者を支援する。
海辺暮らしのこぼれ話 text by Hiroshi Kitada
海と陸の境界に「風の家」はある。
これからどこに向かいたいのかを問いかける場所だ。
若い世代も、同年代も、先輩方も、それぞれが自分の海に向き合っている。そこに優劣はない。
速さだけではない、距離でもない。
どこに立つか、どこに向かうか。それぞれの海だ。
あの時に見た海景が、今もどこかに宿っている。
海はいつも同じではない。
自分もまた、ルーキーとして向き合う。
また、ここから始める。
(文=中村剛司/舵オンライン編集部 写真=中村剛司、北田 浩)
本記事は月刊『Kazi』2026年6月号からの抜粋






















