■〈DMG Mori Global One〉は南半球へ

単独無寄港世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」は、スタートから3週間が経過。フランスをスタートしてから大西洋を南下していたレース艇団は、大荒れ必至の高緯度海域、寒風吹きすさぶサザンオーシャンへ突入した。

白石康次郎が乗る〈DMG Mori Global One〉は、11月14日のワイルドジャイブが原因でメインセール上部を大破してレースの続行が危ぶまれたが、陸上のショアチームやセールメーカーと連携して、1週間かけて、カーボンパーツやバテンの製作なども伴う大掛かりな補修を行い、戦線に復帰。レース艇団からは大きく遅れたものの、その後は無事に航海を続け、アジア人初のヴァンデ・グローブ完走に向けて奮闘を続けている。

 

メインセールの再アップからおよそ1週間、11月27日に赤道を越えて、南半球に入った白石康次郎は、長年のスポンサーでもある「八海山」で乾杯して赤道通過を祝った。以下は動画コメントより抜粋。
「〈DMG Mori Global One〉は初めての南半球に入りました。みんなの支えで、傷だらけですが奇跡的に赤道を通過できました。本当にうれしいです。ありがとうございました」
photo by Kojiro Shiraishi / DMG Mori Global One

 

■優勝候補の〈HUGO BOSS〉がリタイア

11月28日にはビッグニュースが入ってきた。前々大会3位、前回大会2位という好成績を残し、今大会で英国人初の優勝スキッパーを目指していたアレックス・トムソンの〈HUGO BOSS〉がリタイアを表明した。今大会にも斬新なコンセプトの最新世代のフォイル艇で臨み、一時はトップに立つなど高い実力を見せていたが、右舷のラダーに修復不可能なダメージを受けて、無念のリタイアとなった。
古くからの友人である白石康次郎は、自身のSNS上で以下のコメントを出した。
「残念でなりません。斬新な船を造り、最先端のプロジェクトを常に作りあげる彼のことを尊敬しています。ヴァンデ・グローブは過酷なレースです。私もさまざまな問題に直面していますが、アレックスの想いをつなぎゴールできるよう全力を尽くします。アレックスが無事にケープタウンに寄港し、家族と再会することを祈ってます」

 

今回が5回目のヴァンデ・グローブで、有力な優勝候補だったアレックス・トムソンが戦線を離脱。最も勝利に飢えていた男の挑戦は、最新艇の本領を発揮するはずだったサザンオーシャンを前に終わった。
photo by Alex Thomson / Hugo Boss

 

〈HUGO BOSS〉のスタート直後の姿。現在はアフリカ大陸南端の都市ケープタウンに自力で向かっている。
photo by Vincent Curutchet / Alea

 

■トップ争いは……

現在フリートの先頭に立っているのは、シャルリー・ダランの〈APIVIA〉。ここ1週間で、〈HUGO BOSS〉とトマ・ルイヤンの〈LinkedOut〉を逆転してトップに立っている。
〈LinkedOut〉は一時的にトップに立った直後に、左舷のフォイルに数カ所のひびが入る重大なトラブルが発生。陸上のショアチームやデザイナーと協議の上、フォイルの先端から2mを切断するという危険を伴う作業を行い、レースを再開した。性能低下が10%なのか20%なのかは、現時点ではわからないという。

 

トラブル艇を横目にトップに立った〈APIVIA〉のシャルリー・ダラン。
photo by Charlie Dalin / Apivia

 

スタート直後の〈APIVIA〉。
photo by Yvan Zedda / Alea

 

〈LinkedOut〉もサザンオーシャンに突入。現在2位、約300マイル先行する〈APIVIA〉を追う。
photo by Thomas Ruyant / LinkedOut

 

3位につけているのが、上位グループ唯一のフォイルなし艇〈Yes We Cam!〉で奮闘するジャン・ルカム。ヴァンデ・グローブ5大会連続出場中のベテランだ。
photo by Olivier Blanchet / Alea

 

最新（11月29日21日UTC）の状況。レースはいよいよ中盤戦、上位20艇ほどがサバイバルコンディションが予想されるサザンオーシャンに入って針路を東にとり、それ以降の艇は大西洋の南下を続けている。スタート後にトラブルで一度スタート地に戻って、実質9日遅れの再スタートとなったジェレミ・ベユーの〈CHARAL〉も赤道を通過して順調に追い上げている。その前にいるのが、トラブルを抱えて奮闘する白石康次郎〈DMG Mori Global One〉だ。

 

（文＝Kazi編集部／中島 淳）

 

●Vendée Globe公式サイト
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