台湾レース | カメラマンが見た国際レースのリアル

2023.10.20

2023.6.10~15

第19回 台琉友好親善国際ヨットレース 台湾・基隆(キールン)~日本・沖縄県宮古島

 

1998年に発足した台琉友好親善国際ヨットレース。台湾と沖縄県・宮古島または石垣島を結ぶこの国際レースは第19回となる今回、2019年大会以来実に4年ぶりの開催となった。

渡真利将博さんによる考察を前後編でお届けしたが、今回はカメラマン目線の番外編を。

〈ACADIA NANA〉(ラグーン450。マルチハルディビジョン優勝)に同乗した山岸重彦カメラマン。そこで得た、新たな気づきとは・・・。

月刊『Kazi』9月号の記事をここに再掲載します(編集部)。 

 


 

わずかな風をジェネカーに受け、快走する〈ACADIA NANA〉(ラグーン450)。バウトランポリンはカタマラン艇の特等席だ 

 

 

スタート直後の風景。〈ACADIA NANA〉は風下からクリアエアーをつかんだ 

 

 

フライブリッジで操船するメンバー。わずかなパフを探し、海を渡る 

 

 

カメラマンが体感した国際レース、その同乗撮影記

文・写真=山岸重彦/舵社 

 

台湾レースへの誘い

 

ボルボオーシャンなどの外洋レース艇に同乗して、南氷洋やホーン岬など過酷な海で撮影をするカメラマンの姿を見たことがあった。ヨットを被写体に撮影するカメラマンとして、将来は自分もそうなりたいと思ったことは、一度もない。 

まず、過酷な海の中でカメラを構えて仕事をできるかどうか、仕事どころか、そこで何日も過ごすことができるかどうかの話になってくる。今までクルージング取材でも、オーバーナイトをしたことは数えるほどしかなく、多良間島から石垣島までのワンオーバーナイト(1泊2日)か、夜の下田を出航し、式根島へ向かったことくらいしか経験がない。 

そんな折、台湾の基隆(キールン)から宮古島へ向かう台琉友好親善国際ヨットレース(以下、台湾レース)の取材の話がきた。 

本来はエアーでの移動を第一に考えるが、レース艇への同乗を検討した。日本からのエントリーは12艇。その中に1艇、旧知のオーナーが出場していた。〈ACADIA NANA(アケーディアナナ)〉(ラグーン450)の相澤規勝オーナーとは知り合って20年。思えば最初にオーバーナイトで式根島に行ったのも相澤さんのヨットでのこと。今回の取材で、同乗させてもらう余地はあるかと聞いてみた。 

艇体重量が気になっていたが「いーよ。まったく問題ないから。正式に決まったら教えてー」と快諾いただいた。しかもラグーン450は、カタマラン艇。これは、過酷な海況を避けたい自分としては、まさに渡りに船。こうしてミッションが決まった。 

台湾レース当日、この日の風は弱く、スタート時には2.3m/sのそよ風しかない。何とかスタートしたもののほとんど進まない。北へ流され続け、遠くに尖閣諸島の景色を見たというチームもあった。 

日没になると暗闇に包まれ、遠くに光るヨットの航海灯がよく見える。空は雲に覆われているが、三日月が時折見え、他船の航海灯と自船の航海計器の赤や緑のライトが暗闇に浮かんでいた。時々、スコールのような雨も降ってきたが、操船席全体を覆うエンクロージャーが完備されたラグーン450のコクピットは常にドライ。うーん、外洋レースに同乗して撮影してきたとは大きな声で言いにくい、恵まれた環境だった。 

 

 

コクピットテーブルの食事風景。この日はソウメンと炊き込みご飯! 

 

 

食料調達はフィッシングで!

 

クルーの1人、ベス(Beches Shingeo)がスマ(ヤイト)をゲット! 

 

 

スマの切り身を炙る! 

 

 

スマの漬け丼、完成です!

 

 

美しき日没。しかし、それはナイトセーリングの幕開けでもある 

 

 

西表島通過、まだ先は長く・・・

 

夜が明けても風はない。波もなく、ローリングもなく、快適といえば快適な船上生活。時間を決めずにワッチ担当を交代交代で行っていくのが、〈ACADIA NANA〉の流儀。疲れた人から休みに行き、起きてきた人がワッチする。長い時間を共有できるので、ロングレースに出た人同士の絆が一気に強くなるのがよく分かった。西表島(いりおもてじま)の島影が遠くに見えていたが、ここから先も、石垣島、多良間島を過ぎた先が目的地、宮古島だ。この日も夜がやってきた。 

残りの距離と時間を計算し、ここからドン吹きの風が入ったとしても、制限時刻には到着できないことが分かり、夜中のロールコールのタイミングでリタイアを告げた。風に悩まされたレースとなったが、不思議とみんなの表情は明るい。国際ロングレースにおいて、レースの成績に対する重点の置き方は、少し違うようだ。入念な準備をしたとしても、自然任せのヨットレースの場合、うまくいかないことも多い。 

今回クルーとして参加の松本浩司さんは、メルジェス20で国際レースに何度も出場している。松本さんいわく「ロングレースには、潮っ気が必要。状況が変わるたびに、的確に戦略を変えていける経験値が重要なんだね」とのこと。まさにそのとおりだと感じた。経験豊かなヨットマンの言葉が沁みた。 

 

 

夜間航行で見上げる月と灯台ほど、不安を安らげてくれるものはない 

 

 

2日目の夜、リタイアを決断した〈ACADIA NANA〉チーム 

 

 

航海の支えとなった倫子さんの食事。船内で玄米を精製し、土鍋で炊き上げたおむすび、博多のがめ煮(筑前煮)や切干大根、自家製高菜。明日への活力であった 

 

 

心強き〈ACADIA NANA〉のクルーたち。左から西尾倫子さん、村松範之さん、相澤規勝オーナー、松本浩司さん、金子 勉さん、Beches Shingeoさん 

 

*

ヨットで国境を越えて行く国際レースの一つとして、台琉レースは比較的ハードルが低い。新しいヨットレースの楽しみ方として、一考の価値はある。 

実際に台湾から宮古島までのレースに同乗させてもらい、国際レースに出場するのもヨットの新しい楽しみ方の一つと思えた。とはいえ、厳しい外洋レースの同乗取材の話がきても、即答で乗りたいと言えるまでにはなっていないが、来年の台湾レースに行ける機会があれば、行きたいと即答する気持ちになった。 

 

(文・写真=山岸重彦/舵社)

 

 

※本記事は月刊『Kazi』2023年9月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

台琉友好親善国際ヨットレース公式サイト

 

山岸重彦
Shigehiko Yamagishi

水球部出身。職業ダイバーを経て舵社へ。ヨット、ボートを撮影して20数年。ある意味、編集者より海の経験が多彩。8月、オープンウオータースイムレース、びわ湖横断リレー水泳大会へ出場し2位に。テレビ番組「世界の果てまでイッテQ!」チームとも戦い、内村光良さんらとともに琵琶湖を泳いだ。好きな飲料は牛乳。 

 

 

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