【水路を航く】#9/琵琶湖疎水クルーズ

2021.07.27

日本各地にある海峡や運河などを巡る、月刊『ボート倶楽部』の人気連載「水路を航く」。舵オンラインでは、過去に誌面で取り上げた水路の中から、印象的だったいくつかの水路を再掲する。 第9回は、『ボート倶楽部』2019年9月号に掲載された、琵琶湖疎水クルーズを取り上げる。

※本記事の取材は2018年5月に実施しました。


 

琵琶湖と京都府の蹴上(けあげ)とを結んだ水路、琵琶湖疏水(びわこそすい)。明治時代に作られたこの水路は、いくつものトンネルを抜け、1日200万立方メートルの水を京都へ運んでいる。この水路を利用し、春期と秋期に観光船が運航されている。歴史的建造物である疏水のトンネルや、秋には紅葉の中を観光船が通り抜けていく。

琵琶湖と京の町とを結ぶ水路を作る計画を、最初に立てたのは平 清盛と伝えられている。その後、天下人となった豊臣秀吉や徳川家康も同様の計画を持ったというが、実際には明治23年に4年8カ月の工事のあと、完成した。水路は舟運で人や荷物を運ぶだけでなく、高低差を利用し発電も行われていた。昭和には水運や発電の機能は活用されなくなったが、平成30 年、歴史的建造物として価値のある水路での観光船運航が始まった。

琵琶湖疏水には流れがあるので、琵琶湖から京都へは流れに乗ってゆっくり、京都から琵琶湖へ向かう便は流れに逆らうため水をかき分けてダイナミックに進む。周辺には桜や紅葉の木が多く、春には満開の桜、初夏には青紅葉、秋には燃え上がるような紅葉が訪れる人を楽しませている。

 

(トップ画像説明)
周りを緑色の木々に囲まれた狭い水路を駆け抜けていく、びわ湖疏水船。鮮やかな朱色の欄干が印象的な橋は、山科にある本圀寺(ほんこくじ)の参道

 

滋賀県・大津の発着場を出てすぐの第一隧道(ずいどう)へと向かうクルーズ船。トンネル入り口には、水路の安全を祈願し「気象萬千(きしょうばんせん)」と書かれた伊藤博文の篆刻(てんこく)がある

 

京都から琵琶湖方向へ向かうときは、流れをかき分けて進むため大きな曳き波が立つ。クルーズ船のルーフは透明なので、景色も見やすい

 

南禅寺のすぐ近くにある水路閣は、疎水事業の一環で施工された水路橋で、今も琵琶湖疏水からの水が流れている。アーチ構造に作られたレンガ造りが美しい

 

36メートルの高低差がある坂を昇降させるため、フネを台車に載せて運んだ蹴上インクライン。現在は使用されていないが、当時の線路が残る跡地を歩くことができる

 

琵琶湖疏水の中間、山科にある日蓮宗本圀寺。緑の濃い山の中に朱色の門が目を引く

 

(文・写真=舵社/山岸重彦)

 

※本記事は、『BoatCLUB』2019年9月号に掲載された記事を一部抜粋したものです。最新刊およびバックナンバーもぜひご覧ください。なお、この記事の情報は、誌面掲載当時のものです。

 


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