辛坊治郎さんを支える/古野電気のエレクトロニクス

2021.05.27

5月28日(日本時間)。辛坊治郎さんの太平洋横断航海出航から49日目を迎えた。

最終目的地のサンディエゴまでは、残り約1,700海里(約3,148km)。間もなく航海は大詰めを迎えようとしている。

たった一人で嵐を乗りきり、すべての物事を己の力でこなしていくしかない日々。遠く離れた太平洋の真ん中で、いったい辛坊さんは何を思っているのだろうか。

 

と、あらためて、今回の太平洋横断チャレンジは、辛坊さんがたった一人でおこなっているもの。サンディエゴに向かってヨットを走らせ続けなければいけないのに、一人だから休むことなくヨットを走らせ続けなければいけないし、かといって何日も寝ずにいるわけにはいかない。いったい、どうしているのか・・・なんて、素朴な疑問をお持ちの方も多いのではないだろうか。

いやいやご安心ください。辛坊さんには強い味方がついています。

そう。舶用機器メーカーである古野電気のテクノロジーが、辛坊さんをしっかりサポートし続けているのだ!

一般の方々にはなじみが薄いかもしれないが、古野電気といえば、大型商船、漁船、そしてプレジャーボートまで、船にかかわるすべての人を支える製品を広く提供している、国内舶用機器メーカーのトップランナー。魚の居場所を知る魚群探知機を世界で初めて実用化したのも、実は古野電気。製品化までの不屈のストーリーは、NHKの番組「プロジェクトX」にも取り上げられた。

 

その古野電気は、ヨットとマラソンによる間 寛平さんの地球一周プロジェクト「アースマラソン」、また前回2013年の辛坊さんの太平洋横断プロジェクト、そして2013年の辛坊さんのパートナーであった全盲セーラー、岩本光弘さんの太平洋横断をサポートし続けてきた。

そして今回の辛坊さんの太平洋横断に際しても、機器およびサービスの提供という形でかかわっている。大阪・淡輪(たんのわ)を出航して以来、ここまでの数々の苦しい場面をともに戦ってきたのが、古野電気のテクノロジーともいえる。

 

で、一人でヨットに乗っているのに、寝ないで平気なのか? という疑問。

いやそれは全然無理! 太平洋横断ともなれば、1日のなかで数時間単位のショートスリープで対応するのが常だが、眠っているときにも他船や障害物の接近を知らせてくれるのが、「レーダー」という航海機器なのだ。

 

船内のチャートテーブル(ナビゲーションをおこなう作業スペース)の前には、古野電気のレーダー「MODEL1815」(右)が鎮座している。

 

レーダーというのは、ごくごく簡単にいうと、自船の装置から電波を発信し、物体にあたって跳ね返ってきた電波の反応を利用して、他船や障害物の存在、そしてその距離を表示する機器。夜間や霧の発生時など、視界不良時にも大きな力を発揮するツールだ。(下図参照)

 

だから、仮に視界が悪いときでも、レーダーの画面には物体の存在が表示されるというわけ。その反応がなんなのかはわからなくても、「そこに何かがある」ということを把握することができるので、安全航海のためには必須の航海機器といえるだろう。

そんなシンプルな原理のレーダーが、現代ではさらに進化している。例えばこんな機能が・・・。

 

こちらはアラーム(警報)機能。あらかじめ指定した範囲に対象物(他船など)の反応が見られた場合には、警告音で知らせてくれるというもの。辛坊さんのヨットが進むスピードは、速くても約10ノット(時速約18km)程度だから、この警告エリアを数海里(1海里≒1.852km)ほど先に設定しておけば、たとえアラームが鳴ったとしても、いきなり衝突なんていうことにはならない。辛坊さんのごく短時間の睡眠中の「見張り役」は、レーダーがしっかりと任務を果たしているというわけだ。

 

小さな対象物の存在もしっかりとらえてくれる。こちらは、自船近くを漕いでいるSUP(パドルボート)がいたシーンだが、画面にはその存在がしっかりと表示されている。

 

レーダーのアンテナは、マストの中腹に設置されている。

 

ちなみに、以下はプレジャーボートユーザーへの補足になるが、辛坊さんのヨットに搭載されているレーダー「MODEL1815」は、出力が4kW。したがって、開局手続きこそ必要だが、運用する人の免許である海上特殊無線技士免許などの従事者免許が不要。

 

レーダーの心強さを再確認したところで・・・レーダー以外にも、古野電気の航海機器がまだまだ満載なので紹介しよう。

 

船内の右舷側には、GPS魚探プロッター「GP-1870」が設置されている。一般の方にごく簡単な機能を説明すると、これはクルマにおけるカーナビに相当するもの。マップデータの上に自船の現在位置が表示される。

また、本モデルは、航海計画を立てたり、あるいは航跡を残すことも可能。詳細なマップデータ(ニューペック)も標準装備。また、本モデルは魚群探知機の機能も備えている。

ちなみに、太平洋横断に出航する以前から、1ユーザーとして辛坊さんはこの機器を愛用していたそうだ。

 

レーダーの左には、GPS航法装置「GP-33」が設置されている。GPSプロッターのバックアップという意味も大きいが、自船の現在位置(緯度・軽度)を数値で表示するなどの機能を備えている。

 

そして! 本航海では市販製品以外のサービスを活用したサポートも見逃せない。

辛坊さんの愛艇〈カオリンV〉(ハルベルグ・ラッシー39)に搭載された機器が、衛星通信を利用して、定期的に位置情報を発信。それをマップ上に展開することで、辛坊さんの現在位置情報がほぼリアルにわかるようになっている。

 

みなさんもご存じですよね。この情報は、古野電気の特設サイトで誰でも24時間、辛坊治郎さんの現在位置を自由に閲覧することが可能。ワタクシも、辛坊さんの出航以来、毎日何回も何回もサイトをチェックするのが日課となっている。

この衛星通信を使ったサービス。陸地から遠く離れた太平洋を辛坊さんと一緒にバーチャルで航海しているようにもなれるし、もちろん陸上から辛坊さんの動向を常に把握することができるから、「見守り」という意味での安全に対する備えとして、その機能を見逃すことはできない。

 

また現在、辛坊さんのアメリカ到着日時を予想するクイズも実施されている。到着時刻を予想するには、こちらのサイトの情報が必須ですね!

●辛坊治郎さんのアメリカ到着日時予想クイズの詳細はコチラ

 

いよいよアメリカ大陸に近づくにつれて、気象パターンも変わってくることが予想されるうえ、大型商船などの航行量も増えるはず。歓喜と感動のフィニッシュまで、古野電気のエレクトロニクス製品が、辛坊さんをしっかりと支えてくれるに違いない。

 

(文=舵社/安藤 健 写真提供=古野電気)

 

 

●古野電気
https://www.furuno.com/jp/

●辛坊治郎さんのアメリカ到着日時予想クイズ

https://www.kazi-online.com/articles/shinbou_quiz

 

辛坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを応援しよう!
古野電気の特設ウェブサイト

https://www.furuno.com/special/jp/shinbo-challenge/

 

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