世界最速サーキット/SailGP、その驚愕の世界

2020.10.10

ヨットレース界の最速サーキットとは何か──もちろん、誰もがまっさきに頭に浮かべるのはアメリカズカップである。
しかし、忘れてはならないビッグイベントがもう一つある。2019年に第1シーズンが開幕し、各国の代表が世界を転戦するサーキット、 それがSailGPだ。
採用艇は、F50(エフゴジュウ、またはフィフティ)。全長15m、全幅8.8m、マスト高24mの“フォイリング”カタマラン(双胴艇)ボートだ。そう、”フォイリング”するヨット……水中翼によってハル(艇体)を水面から離し、空を飛ぶように滑走する、ヨットなのだ。
その最高速度は53kt(時速約100km)。風の力だけで、時速100kmという驚愕の艇速をたたき出す、まさにモンスター級のセーリングボート、F50。現在、最も最先端で、最も成熟したインショア・フォイリングレーサーであり、そこにはさまざまな叡智が結集している。
ダガーフォイルとラダーフォイルのレーキ(前後傾き)コントロールは、まるでゲームのようなコントローラーで直感的に操作し、中央にそそり立つウイングセール(硬質セール)は、旅客機のそれと同等の大きさにして、そのタック付近には風速風向潮流を示すディスプレイを完備。プレイヤーはヘッドセットで会話し、あらゆるデータを瞬時に解析し、操船に生かす。
第1シーズン、日本チームは惜しくも準優勝。勝者はオーストラリア(スキッパー:トム・スリングズビー)だった。
現在、第2シーズンはコロナの影響で、第1戦シドニー大会以降すべて延期されている。早期の再開が待たれる。

(文=Kazi編集部/中村剛司)

 

photo by Chris Cameron for SailGP 

 

SPEC

●全長:15m
●全幅:8.8m
●ウイングセール高:24m(18~28mに換装可能)
●乗員:5人 体重制限:438kg(1人平均87.6kg)
●最高速度:53kt(約100km/h)
●オンボードカメラ&マイク:各3セット

 

photo by Beau Outteridge for SailGP

その速度は53kt(時速100km)! 風の力だけでこの領域に達する、まさにモンスターボートだ

 

photo by Jon Buckle for SailGP 

レースの様子(マルセイユ大会)。スタート後、第1マークを目指し爆走する各チーム。左端の日本チームがトップスタートを切っている!

 

第1シーズン最終レースのコース(左。マルセイユ)と、リザルト(右)。最終マッチはオーストラリアと日本で繰り広げられ、日本は惜しくも敗れた。「悔恨の78cm」と呼ばれた熱戦については、また今度語りたい……

 

第2シーズン第1戦のリザルト。中国が外れ、イギリス、デンマーク、スペインが参戦。現在7カ国がエントリーする

 

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