2021年の東京五輪後に日本セーリング連盟オリンピック強化委員会の委員長に就任した宮本貴文さんと、ヘッドコーチの中村健一さんに、パリ五輪での20年ぶりのメダル獲得、さらにその後の五輪を見据えた新体制での取り組みを伺った。そのインタビューの後編をお届けする。前編はこちら。
■パリ五輪代表選考は2大会で
パリ五輪の代表選考はまず、国枠をかけて8月のセーリング世界選手権(オランダ・ハーグ)から本格化。ここで国枠が取れなかった場合、9月末のアジア大会(一部種目)および12月のアジア大陸予選と来年4月のラストチャンスレガッタ等で国枠獲得を目指す。なお、アジア大陸予選で国枠は獲得できなかった。
来年1~3月中の種目別世界選手権、プリンセスソフィア杯、ラストチャンスレガッタのいずれか2大会で、より上位に入り、多くの選考ポイントを獲得した選手が日本代表となる仕組みだ。
宮本:ラストチャンスレガッタは、五輪を目指す選手全員が必ず出場するものになり、国枠獲得がこの大会までもつれ込む場合もあります。また、2024年の世界選手権で表彰台に上がることのできた選手は、基本的に五輪開催と時期が離れるとはいえ、五輪でもメダルを取る力を持っていると考えられるため、ボーナスポイントを付与することになっています。
■オリ強の強化活動への関わり方
トップアスリートからコーチに立場を変え、長年、強化に携わる中村さんは次のように話す。
中村:2004年のアテネ五輪からずっと、良い選手はたくさん育ってきたと思っていますが、メダルを獲得できなかったのも事実です。現在、オリ強では少ない強化費の中でどうやって頑張っている選手を支えるか、時間をかけて仕組みを構築してきました。今年のNT入りの条件は、4月のフレンチオリンピックウイークと5月の470級欧州選手権で上位30%の成績を収めることでした。これはメダルが取れる数字ではありません。ただ、あと1年で入賞というラインには、僕は届くのではないかと思っています。現実的に「1種目メダル、1種目入賞」の可能性があるということです。
新体制のオリ強の成果は、早速4月のプリンセスソフィア杯と8月のセーリング世界選手権で、岡田奎樹(けいじゅ)/吉岡美帆(トヨタ自動車東日本/ベネッセホールディングス)の優勝という形で現れたのではないだろうか。
中村:成果はオリンピックでメダルを取って初めて評価できるものになると思います。今年の1月と2月には470級の合宿を与那原(沖縄県)でたくさん行いましたが、NT-AとNTの要望に応えて全国からセーリングパートナーとスタッフを集めました。今後もさまざまな要望に応じて取り組みを行っていきます。
宮本:オリ強の役割をしっかりと定義付けすることで、企業チームをはじめ関係者の皆さんの理解を得ることができると思っています。また、そうすることで相互補完的に「チームジャパン」を形成していければ。これは競技団体の重要な仕事のひとつと考えます。
新体制の取り組みの成果が見られる大会成績に、ぜひ注目していきたい。
※この記事は『Kazi10月号』の新連載「GO! PARIS 2024」を再編集したものです。
(文=Kazi編集部/森口史奈 写真=ワールドセーリング)
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