次回ACはナポリで開催&バーリングがルナロッサに加入!|AC日記2025-8②

2025.09.01

次回第38回アメリカズカップ(以下、AC)開催地がイタリア・ナポリに決定し、同国のジョルジャ・メローニ首相らと防衛者のエミレーツチーム・ニュージーランド(以下、ETNZ)が発表会を行った。

前編では、この決定に対して英国、米国、スイスのACに関連する3カ国が「挑戦者チームへの事前相談の不足」などを理由に、不満を訴えたことを報じた。

後編では挑戦者たちの声明に対するETNZの反応と、同チームを電撃離脱していたピーター・バーリングの新天地が決定したことについて、プロセーラーの西村一広さんに解説していただく。(編集部)

※本記事は月刊『Kazi』2025年8月号に掲載されたものです。前編はコチラ

 

◆タイトル写真
photo by Ian Roman / America's Cup|ETNZは、約束した期限内に、防衛者の当然の権利としてイタリア・ナポリを次回開催地と発表した。サン・ピエトロ大聖堂で行われた発表会で銀杯を掲げるのは、イタリアのジョルジャ・メローニ首相

 


揺るがなかった王者

ETNZは、英国、米国、スイスの三つの第38回AC挑戦関係チームのクレームが出そろうのを待つようにして、感情的になることなく、下記のような淡々とした声明を発表した。

●声明その1
贈与証書に従えば、防衛者は開催地を決める権利と責任を持つ。そしてさらに、前回ACが終了した直後に挑戦者代表(実質的に英国のベン・エインズリー)と防衛者とがそろって署名した覚書にも、第38回AC開催地を決める完全な権限と責任は防衛者にあると明記されている。
防衛者は今後も、挑戦チーム(複数形)と協力して将来のAC(複数形)のパートナーシップを作り上げることに尽力する。

●声明その2
挑戦者代表と防衛者とがそろって署名した覚書には、第38回AC本戦とそれに先立つ挑戦者選抜戦の開催地は防衛者が独自に決定して前回の第37回AC最終レースから8カ月以内に発表する、そしてそのレース日程はその開催地発表から2カ月以内に発表する、と記されている。

歴戦のAC挑戦チーム(英国、米国、スイス)が、贈与証書が防衛者に開催地決定の独占的権利を与えていることを忘れていたという驚愕を一応置くとしても、ETNZの声明文にある、エインズリーも署名したという防衛者との覚書が正しいなら、エインズリーはそのことを米国とスイスに隠していたことになり、ともに防衛者非難の声明文を出した両者は、エインズリーからハシゴを外されて恥をかかされた気分になっているはず。

その2チームを巻き込んだその声明によって何をどうしたかったのかもよく分からないし、ベン・エインズリー卿、この先大丈夫だろうか? でも、頑張って。

 

バーリングがルナロッサに入団!

ETNZを離脱したピーター・バーリングが、イタリアのAC挑戦チーム、ルナロッサに入団したことが6月20日に発表された。
ただ、ルナロッサはすでに次回ACで若い天才イタリアン・セーラー2人が率いるセーリングチーム体制を発表しているし、前回ACとは別のチームで次回ACに出場することを禁じる通称“バーリング・ルール”もあって、バーリングは次回イタリア艇に選手として乗ることはできないはず。詳細は次号で。

 

ETNZを離脱した本当の理由をいまだに明らかにしないバーリング。謎が謎を呼んでいる
photo by LUNA ROSSA

 

(文=西村一広)

 

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西村一広
Kazu Nishimura

小笠原レース優勝。トランスパック外国艇部門優勝。シドニー~ホバート総合3位。ジャパンカップ優勝。マッチレース全日本優勝。J/24全日本マッチレース優勝。110ftトリマランによる太平洋横断スピード記録樹立。第28回、第30回アメリカズカップ挑戦キャンペーン。ポリネシア伝統型セーリングカヌー〈ホクレア〉によるインド洋横断など、多彩なセーリング歴を持つプロセーラー。コンパスコース代表取締役。一般社団法人うみすばる理事長。日本セーリング連盟アメリカズカップ委員会委員。マークセットボットジャパン代表。

 


 

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