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白石康次郎が振り返るヴァンデ・グローブ vol.2

2021.04.17

自身2度目の単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」で、目標の完走を成し遂げた白石康次郎さん(DMG MORIセーリングチーム)。
完走後のインタビューの第2弾をお届けします。2024年大会への参加も決まり、新たな挑戦が始まりました。

 

■2024年大会の目標は8位以内

――フィニッシュ後、森 雅彦オーナー(DMG森精機 取締役社長)とはどのようなお話を?

すごく喜んでもらって、みんなも満足しているということでした。次の方針も決まり、「次もまた白石君と挑戦したい」と。

まず「僕は満足です」と伝えたんです。「ここで腹を切れと言われれば、切ります」と。そうしたら森さんは「前回は日本人初のヴァンデ・グローブのスタート、今回はフィニッシュして16位。次は白石くん、8番以内ね」と。絶妙なんですよ。「優勝してくれ」って言われたら「無理です」って言おうと思っていました。断り切れない微妙な数字。だから、うんって言っちゃった(笑)。そういうことで、次の2024年大会も挑戦します。それからは日本の若手の育成に尽力してほしいとオーダーをもらい、承知しました。

だから三つですね。今年は日本に〈DMG MORI Global One〉を持ってきてキャンペーンを行って、日本の方にもっと知ってもらうこと。2024年は僕がスキッパーで8位以内。そしてヴァンデ・グローブに挑戦する日本人若手セーラーを育成すること。

 


3月31日、DMG MORIセーリングチームは白石康次郎さんをスキッパーとして、「
ヴァンデ・グローブ2024」に挑戦することを発表。右がチームオーナーの森 雅彦氏
photo by Fumina Moriguchi(Kazi)

 

――次回大会も〈DMG MORI Global One〉での出場ですか?

そうです。フォイルなどを改造します。

2024年は57歳。トップ8は楽じゃないですね。前回大会の〈スピリット オブ ユーコーⅣ〉なら、今大会で7位くらいかな。トップフィニッシュから24時間であれだけ入って(※)。次のトップ8はもっと難しいんじゃないかと。新艇を造っているチームもあるし、僕は歳も取るし。ですが3度目のヴァンデ・グローブ、約束したからには全力で臨みます。

※今大会はトップの〈APIVIA〉のフィニッシュから、24時間以内に8艇がフィニッシュするという大混戦だった。

 

■フォイル艇での生活は楽じゃない

――船内の生活について教えてください。

6時間に1回、フレッシュな気象情報をルーティングソフト「アドレナ」で得ます。他艇の位置は4時間に1回。だから寝られるときに寝る。

でもフォイル艇の場合は寝られないし、体が休まらないんです。艇速が20kt以上だと、四つん這いじゃないとやってられません。お湯を沸かすだけでも大変です。準備の時間がなくて、いかに楽に船内で生活できるかまでは全然手が回っていませんでした。それがきつかったですね。次のテーマは、いかに楽に、いかに安定的に過ごせるかも重視して、時間があるので内装をしっかり仕上げたいと思います。

 

――スタート前、コーチのビルー(ローラン・ジョルダン)に1日1回は船をチェックするようにと言われていました。

1日1回以上やりました。飛ばしているときでも、1回船を止めました。夕暮れ時のこれから夜になる前に。特にフォイル艇は音がうるさいから、衝突しても聞こえないんです。何かが壊れても聞こえない。水漏れの音も聞こえない。だから船を止めて、デッキを回ってチェックしました。音を頼れない分、目視で。

 

――バーンバーンと、フォイリングして着水して、という感じで走るんでしょうか?

フォイル艇の欠点は、安定したスピードではないということ。波に乗って一気に30ktまで加速するんです。波に突っ込んで、船内が暗くなる。結局、大きなフォイルを作っても、波に突っ込む分、平均スピードは変わらない。フォイル艇は安定してコントロールすることが難しいです。今後は〈L'OCCITANE EN PROVENCE〉みたいに、バウのふくらんだ船が増えるんじゃないかな。

 


バウが丸みを帯びている〈L'OCCITANE EN PROVENCE〉。今大会は11位。建造:ブラックペッパーヨット
photo by Pierre Bouras / L'Occitane en Provence

 

――メインセールが破れて、次いつ壊れるか分からない不安がある中、船の頑丈さは安心感がありましたか?

ジェレミ・べユーの〈CHARAL〉を見て、ストラクチャーやキールがすごく丈夫で、フレームに高さがあって、それが気に入って買いました。
これ安心だなと思ったんです。ただ誤算は、予選レースのヴァンデ・アークティック・レ・サーブル・ドロンヌの時。36ktまで出したら、スターンがつぶれた。

フォイル艇はスターンを引きずって走るので、お尻がつぶれたんです。そこの強度を気にしてなかった。
レース後にスターンのほうに、フレームのハニカムを取ってコアを入れました。150㎏のカーボンを足して直した。ジェレミは両方で、僕らは右をつぶした。

 

■ドライバー席は少ない

――4回、5回と、ヴァンデ・グローブに出場するセーラーがいます。出たいと思いますか?

勘弁してください(笑)。
やめていく人のほうがはるかに多くて、ジャン・ルカム(5回出場)は特別。アレックス・トムソン(5回出場)も優勝したらやめたいだろうけど、やり残しがあるから出るんだろうね。

あと、いつまでも僕みたいなのが上にいたらだめ。若いセーラーに道を譲らないと。ドライバー席は少ないからね。老兵なりに道を開けないと。日本で若手を育成することもそうで、役割が変わるということです。

 


舵社でインタビューを受ける白石さん。「多くの方に〈DMG MORI Global One〉を見てもらいたいですね」と話す
photo by Shigehiko Yamagishi(Kazi)

 

インタビューはvol.3に続きます。また、このインタビューは、4月5日発売の『Kazi5月号』に掲載された記事を再編集したものです。

 

(文=Kazi編集部/森口史奈 トップ写真=Thomas Deregnieaux)

 

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