ヴァンデ実況/白石康次郎、世界3/4周をクリア!

2021.01.18

■トップ集団はいよいよ北半球へ

単独無寄港世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」は、スタートから71日が経過(1月17日)。1月9日に女性スキッパーの先頭を走っていたイザベル・ヨシュクの〈MACSF〉がリタイアしたのに続き、かねてからオートパイロット(自動操舵装置)とステアリングに問題を抱えて大きく遅れていた〈Merci〉(セバスティアン・デストルモ)が1月16日にリタイア。スタート時に33艇だったフリートは25艇となって、フィニッシュ地のフランスを目指している。

現在、23位までの艇が南アメリカ大陸最南端に位置するケープホーン(ホーン岬)を通過。ついにスタートした大西洋へ戻って北上している。そして上位9艇は赤道を通過して、いよいよ最終レグとなる北大西洋のラストスパートに入った。

前回のレポートでお伝えしたように、サザンオーシャンでばらけていたトップ集団は、ここにきて団子状態。トップを走るシャルリー・ダランの〈APIVIA〉から、7位のジャンカルロ・ペドーテ〈PRYSMAN GROUP〉までが、なんと100マイル以内にひしめいている。ここまで2万マイル以上を走った状態でのこの状況は、過去に例のない大混戦といえる。トップ艇はフィニッシュまで約3,000マイルとなっており、いよいよ優勝者が決まる瞬間が近づいてきた。

 

トラブルを抱えた状態で最後方でレースを続けていた〈Merci〉のセバスティアン・デストルモだったが、1月16日に無念のリタイアとなった。
photo by Sebastien Destremau / Merci

 

混戦の中でトップに立っている〈APIVIA〉のシャルリー・ダラン。
photo by Charlie Dalin / Apivia

 

1カ月前の暫定順位8位から驚異の追い上げを見せて、最新の状況でトップから21マイル差まで詰めてきたルイ・バートンの〈BUREAU VALLEE 2〉。暫定2位。写真は昨年秋のトレーニング時のもの。
photo by Stephane MAILLARD

 

■白石康次郎も残り1/4

白石康次郎の乗る〈DMG MORI Global One〉も1月13日に、嵐の中で無事ケープホーンを通過。その後も順調に大西洋を北上している。現在の順位は20位で、世界一周全航程のちょうど3/4を走ったという状況だ。艇上から配信された動画レポートから、いくつかコメントを拾ってみよう。

「今回で4回目のケープホーン通過です。まだ大荒れなんですけれども、無事に通過できてよかったです。本当に奇跡が起きました。最初メインセールが破れたときにはもうダメかと思ったんですが、チームの支え、みなさんの応援のおかげで、ここまで運んでくれたと思っています。本当にありがとうございました。」(1月13日

「(ケープホーンの北東側に浮かぶフォークランド諸島の沖を航行しながら)実にスタート以降、初めて陸地を見ました。60何日ぶりですね。僕は4回、ケープホーンを越えているんですが、1回もフォークランドを見たことがなかったんです。うれしい。実はうちの師匠の多田雄幸さんと(冒険家の)植村直己さんが、ここですれ違っているんです。植村さんがフォークランド紛争で南極横断を断念して船で帰る途中に、なんと第1回のBOC(単独無寄港世界一周レース)に出場中の多田さんと、このフォークランド沖ですれ違うんですね。そのときに無線でお互いを励ましあったそうです。冒険家の友情ということで感慨深いですね」(1月15日

 

久しぶりの陸地を見て興奮する白石の表情は元気そうで、ケープホーン通過時に吹かれた強風でも、船に大きなダメージはなかった模様。フィニッシュまでは、残り6,100マイルだ。
photo by Kojiro Shiraishi / DMG Mori Global One

 

(文=Kazi編集部/中島 淳)

 

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