心躍る美しき異国|トルコ・マルマリス

2022.11.21

世界のヨット乗りが舳先を向ける、最後の楽園「マルマリス」

 

エーゲ海に面した至高の泊地

昔から、世界のクルージング派が憧れるトルコの南岸。セーリングの中心地とも言えるマルマリスは、国際ヨットレースの誕生で、レース派にとっても憧れの海となった。今回マルマリスを訪問したのは、今年で第3回を数えるセーリングクルーザーによる大統領府国際ヨットレースの第1ステージのスタート地であり、西のフィニッシュ地ボドルムまで110マイルのディスタンスレースの模様を取材するためでもあった。

 


同レースは5月に開催された第1ステージ(写真)と、10月にイスタンブールで開催された第2ステージ(三つのショートレース)で競われ、第1、第2ステージのトータルポイントの勝者に名誉ある大統領カップが与えられる

 

レース委員長を務めるエクレム・イェムリハオール氏は、ここマルマリスやフィニッシュ地のボドルムには数多くのヨットチャーターがあるので、日本のセーラーもぜひ参加してほしいとのことだった。トルコの南西海岸は南エーゲ海に面しており、ターコイズブルーの美しい海に浮かぶ美しい島々を巡るディスタンスレースは、セーラーなら一度はセーリングしてみたいコースといえよう。

 

マルマリスは、湾の入口を塞ぐように大きな島(Yıldız Island:星の島)と小さな島(Keçi Island:山羊の島)が鎮座しており、風や潮の影響を受けない静穏な湾に面している。湾の北に位置する旧市街には、1522年にスレイマン1世によって建てられたマルマリス城がそびえており、そこから南西に向けて約10kmにわたるマルマリス アーバン ビーチが続いている。

 


海側から見るマルマリスの旧市街。海岸沿いに大型のチャーター艇が軒を連ねている

 

温暖な気候と無数に点在する好泊地

旧市街は、なだらかな細い坂道が交錯しており、カラフルな色合いの個人の建物がエーゲ海の雰囲気を漂わせている。海岸通りに降り立つと、岸壁には日帰りから週単位でチャーターできる木造のセーリングクルーザーがずらりと並び、所々に受付カウンターが設置されている。数十人から100人を超えるような大型観光船が係留されている場所もあるが、ここにある木造のヨット群はトルコでは「グレット」と呼ばれ、古くからヨットチャーターを生業としている地元の業者が多い。

 


夕景のマルマリス湾をサンセットクルーズ。ランチ&スイミングを楽しんだあとだけに、船上にはくつろいだ雰囲気が漂う

 

サイズも大きく、50ftから80ftクラスが中心だが、中には100ftを超える大型艇もある。食事とフリードリンク付きで、マルマリス近郊の入江へ日帰りするコースもあれば、週単位で家族や仲間でチャーターして長距離クルージングを楽しめるものもある。クルーが操船し、客船と同様にコースが設定されていて、乗客には客室が与えられ、他の乗船客と共にクルーズするケースもある。これらのヨットは「トルコ ヨットチャーター」などのキーワードで検索すると数多く出てくるので参考にしたい。

 


左:旧市街の小路に入ると、エーゲ海の風情が漂うカラフルな家並みに出あう
右:普段は人でごったがえすアーケード街。衣料品や生活雑貨などが所狭しと並ぶ

 

左:岩だらけの岬に建つマルマリス城は、1522年にスレイマン1世によって建てられ、マルマリスのシンボル的存在になっている。城内には博物館があり、歴史的な文化財や出土品が収蔵されている
右:マルマリス城からは、地中海の沿岸に広がる「ターコイズ海岸」と呼ばれる雄大な景色を眺めることができる。深い緑の山に囲まれた静かな湾は天然の良港で、最近はヨットハーバーとして国際的に人気が高まっている

 

マルマリス周辺をクルーズするだけでも好泊地はたくさんあるが、さらに東へ行くにつれて自然のままの風景があり、波風を避けることができる美しい入江が無数にある。

 

その昔、筆者がマルマリスを訪れた時も、当然ながら港の沖にはさまざまな国からクルージングで来ているヨットが係留していた。そのうちの30ftほどのヨットでカナダから来ていたご夫婦を取材する機会を得て、デイクルーズも含めて2日間共に過ごした。その時に彼らが言った「私たちは世界をクルーズして、いまここ(マルマリス)にいますが、トルコはクルージング派にとって地球上に残された最後の楽園だと思います。さまざまなエリアで周囲のセーラーたちもそう言って薦めてくれました」という言葉が忘れられない。カリブ海、南太平洋、東南アジア、地中海……クルージング派が行き尽くしたエリアにはない魅力がこの海域にはあるというのだ。

 

物価が安く、食べ物が美味い。けがれのない美しい大自然が残っており、小さなヨットゆえに停泊できる入江が無数にある。しかも、海から行って遺跡を巡ることもできる。世界のクルージング派がトルコへ舳先を向ける理由は、いまも健在だった。

 


マルマリスの湾内は静穏な海域のため、絶好のセーリングゲレンデだ

 


左:黒海、地中海、エーゲ海に囲まれているトルコでは、シーフードも豊富に獲れる。日本と緯度が近いため、鮮魚売り場では、日本でなじみがある食材を多く目にすることができる
右:スズキはトルコで、おいしい魚としてよく食べられている。スズキの塩焼きはトルコ語で「レヴレッキ・ウズガラス」と言い、レモン、ルッコラ、タマネギが添えてある

 

※この記事は2022年10月号の『Kazi』誌を再編集したものです。

 

(文=舵社/田久保雅己 写真=舵社/山岸重彦 協力=トルコ観光広報・開発庁)

 


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