辛坊さんと132日間の太平洋航海/帰港直後のヨット解剖・外装編

2021.10.01

今年の4月9日に大阪を出航し、念願の太平洋横断航海を成功させ、アメリカ・サンディエゴに到着した辛坊治郎さん(65歳)。なんと復路も単独無寄港の航海を成功させ、愛艇〈カオリンV〉とともに8月24日に大阪に帰還した。ホームポートに戻った直後のフネの様子を、前後編に分けて写真でご紹介します。今回は外装編です。

 

8月24日の朝、復路のゴールに向けて大阪湾を力強く走る〈カオリンV〉(ハルベルグ・ラッシー39/スウェーデン製)だが、エンジンを含め、各所に不具合が発生していた。もともと前オーナーが世界一周航海を目指して購入したが、病気でその計画がなくなり、大分県で放置されていたものを辛坊さんが中古で手に入れた。

 

「ある日、大きな物音がして外に出てみると、マストに付いているハリヤード用ウインチのカバーが外れ、大きな部品がデッキ上をゴロゴロと転がっていた」という話を興奮気味に語る辛坊さん。上の写真で右手に持っているのが転がった部品(軸)で、下の写真が応急処置の状態で帰港したウインチ。数カ月、24時間揺られ続けると、ふだんは考えられないトラブルが起こる。

 

日本を出発する直前に新調したメインセールは、スライダーに取り付けるための平織りロープが数カ所破断している。

 

ファーリングジブのほうも、ほつれたり裂けたりしている箇所があちこちに見られる。

 

船内にビルジがたまるようになったため、ハッチやウインドーのふちをテープでふさいでみたが、原因ははっきりとしていない。

 

スタンションにガタが出たため、高強度ロープで引いて固定した。

 

風雨から辛坊さんを守ってくれたコクピットドジャーにも修理のあとが。

 

辛坊さんが、非常に有用だったと話したウインドベーン(ハイドロベーン)。風に合わせて舵を一定に保つ、自動操舵装置だ。機走時には電気式のオートパイロットも使用した。

 

今回はここまで。次回は船内の写真を紹介します。

 

前代未聞! 北太平洋往復の航跡

往路と復路の航跡がまったく違うのは、アメリカから東南アジアを目指す際に追い風となる“貿易風”をつかむために、北緯20度前後まで南下したため。復路のスムーズな航跡に対して、フネのトラブルや向かい風、嵐に遭った往路の前半は、迷走ともいえる航跡を描いている。禁無断転載。

 

記録

[往路]
●2021年4月9日~6月17日(日本時間)
●所要日数:69日
●航海距離:約12,828km
[復路]
●2021年6月22日~8月24日(日本時間)
●所要日数:63日
●航海距離:約12,600km
[往復]
●所要日数:132日
●航海距離:約25,428km
※古野電気のGPSトラッキングデータから算出した数字。

 

■波乱万丈の往路航海を追体験

辛坊さんの公式YouTubeチャンネル『辛坊の旅』では、7月4日から、往路航海の模様を毎日動画でアップしている。4月9日の出航以降の様子が、1日1本ペース(往路)で辛坊さんの「自撮り」で報告されており、太平洋横断を追体験できる、非常に興味深い内容になっている。

 

(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)

 

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※辛坊さんの航海についての詳しい記事は、毎月5日発売の月刊『Kazi』2021年5~11月号に掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。

 


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