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USCGのシーマンシップの真髄を日本語で学べる一冊

2020.10.26

スポーツマンシップという言葉に引きずられてか、日本でシーマンシップというと、“船乗り魂”のような、精神的な意味合いで捉えられがちだ。しかし本来は、船を安全に航行させるための具体的な「運用術」を指す言葉である。
ここで紹介する『BOAT CREW SEAMANSHIP MANUAL』は、米国における海上レスキューのプロ、USCG(U.S. Coast Guard:米国沿岸警備隊)の、小型船艇に搭乗する隊員(BOAT CREW)が任務を遂行するために必要な、広範囲にわたる知識・技術と手順をまとめた一冊。
その収録内容は、隊員として必要な身体能力、応急手当、ロープワーク、気象・海象、航海計画の立案とナビゲーション、荒天航行、そしてボートの曳航や転覆船の復原方法にいたるまで、極めて多岐にわたる。
同書を日本語訳したのが、『ボートクルー シーマンシップ マニュアル 日本語版』だ。

左が原書、右が日本語版。 日本語版では、アメリカ国内およびUSCG内のみに関する項目を大幅に割愛しているが、それでも、全464ページ、A4判で厚さ約3センチというボリュームだ

 

アメリカでは年に一度、USCGと水上レスキューなどに関連する諸団体とが開催している海難・水難防止のための頂上会議「IBWSS(International Boat & Water Safety Summit)」が行われている。
これに倣い、日本における水上安全に関する情報交換を行う場として、海上保安庁、日本海洋レジャー安全・振興協会、マリンスポーツ財団、海難学会などが共催しているのが、日本版IBWSSともいえる「JBWSS」だ。
この水上安全を軸とした日米の交流の中で、USCGの長い歴史の中で培われたノウハウが詰まった『BOAT CREW SEAMANSHIP MANUAL』が日本側の関係者にもたらされ、その優れた内容をぜひ日本にも紹介したいということで、日本語版が誕生したのである。

『ボートクルー シーマンシップ マニュアル 日本語版』は、できるだけ低価格で提供したいということから、全ページモノクロ。また、図版は、原書のままのシンプルな線図が中心だが、わかりやすく内容的にもしっかりしているのは、挿し絵の描き手自身が海や船のことを知っているからだろうと思わせる。
本書で印象的なのは、多国籍国家である米国だからだろうか、さまざまな手順を事細かに、かつ、重要な部分は繰り返し説明している点。ナビゲーション関連の計算も、足し算、引き算のレベルまで説明されているといった念の入れようだ。
さらに、日本ではこれまで紹介される機会があまりなかったノウハウも満載されている。

応急手当てに関する章は非常に充実しており、「こんな症状まで」と思う項目も多数含まれている

 

ロープワーク関連の内容は「マリンスパイキ術」の章に。フック開口部の閉鎖方法なども解説

 

狭い水路を航行する際の、船首尾の吸引/反発の影響をまとめたページ。都市部の水路巡りをするときなどに役立ちそうだ

 

ナビゲーションに関する内容にも多くのページを割いている。近年ではデジタルナビゲーションが一般的になってきたが、やはり基本はしっかり押さえておきたいもの

 

USCGのマニュアルだけあって、救助任務に必須の曳航に関する内容も多岐にわたる

 

転覆船の復原方法の解説ページ。右は、縦(船首尾船)方向にボートを回転させる方法。キールに沿ってわたしたロープを船首で固定し、このロープを船尾側に引くと、エンジンで重くなった船尾を支点にして復原するという。マジ!?

 

プロ向けのマニュアルなので、一般的なプレジャーボートユーザーにとっては“too much”と感じられる部分も少なくないだろう。
しかし、ボート免許取得時にも、また、その後のボートライフの中でも、きちんと学ぶ機会が得られにくいけれど、知っていると大いに役立つといったノウハウが数多く記載されているので、ぜひ一度、手にとってその内容をご覧いただきたい。

(文・写真=Kazi編集部/今村 信)

 

『BOAT CREW SEAMANSHIP MANUAL』(ボートクルー シーマンシップ マニュアル 日本語版)
●価格:2,500円+税
●判型:A4判
●ページ数:464ページ
●発行:舵社(JBWSS連携協議会 編)
ご購入、詳細はコチラから


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