多島海生まれのブランド

日本における北欧ボートの人気はますます高まる一方だが、そんな中の一つがスウェーデンのニンバスボート(Nimbus Boat)だ。

美しい自然に囲まれたスウェーデンは、プレジャーボーティングが非常に盛んなエリア。「アーキペラゴ」と呼ばれる多島海は、そこかしこに島々が浮かび、入り組んだ海岸線が続く。クルージングをするには、夢のようなゲレンデだといえよう。オーロラを見ることもできる北欧諸国の冬は長く暗い。だからこそ、短い夏を誰もが存分に楽しんでいる。

ニンバスは、そんな土壌をバックボーンに生まれたビルダーだ。1968年、同じスウェーデンのボルボ・ペンタが自社のパワーユニットのプロモーションのために、ボートをオーダーした。そのボート「ニンバス26」は大いに好評を博し、ラースとハンスのヴィクルンド兄弟(Lars & Hans Wiklund)はニンバスボートの看板を掲げ、本格的にプレジャーボート造船業に参入。20~30ftクラスのクーペタイプのボートを中心に手掛け、さらにオープンボートやエクスプレスクルーザーまでラインアップを拡大していった。

2000年代に入るとバキュームインフュージョン方式での建造に取り組むなど、積極的に新しい技術も導入。また、2012年に経営体制が変わったあとには、ベラ(Bella)やアクアドール(Aquador)、フリッパー(Flipper)といったブランドで知られるフィンランドのベラグループ、アルミ艇ビルダーのアルキン(Alukin)、アメリカのエッジウォーター(Edge Water)を買収するなど、ニンバスグループとしての成長を続けている。

現在のラインアップは、クーペクルーザーシリーズとスポーツクルーザーの二本立て。伝統的なスタイルを踏襲するクーペクルーザーは、305、365、405、495の4モデルがあり、このうち405と495についてはフライブリッジ仕様も用意している。

フラッグシップ

今回紹介するのは、フラッグシップに位置付けられる495フライブリッジ。2024年に発表されたモデルで、ヨーロピアン・パワーボート・オブ・ザ・イヤー2025(Up to 18m部門)のウィナーとなるなど、マーケットにおいて大きな成功を収めている。

筆者は今年7月にスウェーデンを訪問。日本1号艇の出荷直前のシートライアルの場で試乗の機会を得た。ちなみにこの試乗艇は、9月25~27日に開催された横浜ボートフェア(横浜ベイサイドマリーナ)で初お披露目され、大きな注目を集めたことは記憶に新しい。

さて、この495フライブリッジは、ニンバスにとっても次代に向けての意欲作となる。ブランドマネージャーのヨナス・ゲーテベルグさんは次のように語る。

「長期間にわたる冒険のようなクルージングにしても、身近な群島の中でくつろぎの休暇を過ごすにしても、安全かつ快適に過ごすことができ、船上に長く滞在したくなるようなボートを目指しました。実際、495を購入されたオーナーの多くは、外洋での長期クルージングにこのボートを活用しています」

その外観を見ても、従来のクーペクルーザーシリーズとは、一線を画すデザインが目につく。箱型のパイロットハウスにボリュームのある船体は、トローラーやエクスプローラーのそれに通じるものがある。

広々としたフォアデッキは、絶好のサンベイシングエリア。大人2人が横になっても、まだまだ余裕たっぷりのサンベッドが配置される。前後の行き来は左右の通路からとなるが、ハウスが左舷側にオフセットされており、右舷側が主通路という位置付け。

フライブリッジは、前方左舷側に独立した操船席と助手席、その横にサンベッド、後方にラウンジエリアという配置になっている。操船席周りはシートも含めて現代的なデザインとなっており、若い世代のユーザーも意識していることがうかがえる。ラウンジのソファはL字形で、4~5人がゆとりを持って座れるだけのスペースがある。

大型のディスプレーが2基鎮座するヘルムステーション。バウスラスターやジョイスティックシステムが装備されており、イージードライビングを実現してくれるはず。左舷側のシートの後方に見えるのは冷蔵庫。

アフトコクピットにはL字形のソファが配置され、さらに最後部には電動のウインドスクリーンが備わる。ハウス後部の大きなガラスドアとウインドーを開放すれば、船内と一体になった空間が生まれる。エンクロージャーで周囲を囲えば、このエリアが季節を問わずに快適に過ごせる部屋となる。

ハウスの左舷側の脇には、セカンドステーションも設けられている。約50ftクラスの大型艇であっても少人数で運航できるような配慮が目立つ。

スイムプラットフォームに乗り移り、船尾の右側の取っ手を引くと、シンクとバーベキューコンロを備えたウエットバーが現れる。アフトコクピットへのアクセス性もよく、とても使いやすそうだ。

ロワーヘルムステーションの脇のドアから通路に出ると、舷側にはボーディングゲートが設けられており、ドライバーが係留作業をする際にも便利だ。

高級感漂う船内空間

パイロットハウスの後方ドアから、船内に足を踏み入れる。大きな窓が周囲を囲っていることもあって、とにかく明るい空間だ。

ドアを入ってすぐのエリアには、右舷側にL字形の本格的なギャレー設備。後部のウインドーを開放することで、外に向けてカウンターを展開することが可能だ。調理中も、目の前がウインドーになっていることもあって、とても開放的なギャレー空間となっている。

ハウス内のミジップは、くつろぎの空間という位置付け。左舷側にコの字形の大きなソファ、右舷側にベンチシートという構成で、座ったときにほぼ全面がガラス窓ゆえの贅沢な景色が広がる。

ハウス内前方の右舷側には、ロワーヘルムステーション。日常的に使うことになるだろうジョイスティックは、ステアリング脇のこの位置に設置されている。

ハウスの最後部はギャレーエリア。右舷側にシンクやコンロ、レンジなどが配置される。ハウス後部のウインドーを全開にすると、カウンターを外側に延長することが可能だ。

通路を挟んで左舷側には、大きなカウンターが設けられていて、大人数で集まったときなど、料理の準備をするのにとても使い勝手がよさそうだ。カウンター下には大型の冷蔵庫が設置されている。

居住空間となるロワーデッキには、三つのキャビンが備わる。ミジップにマスターステートルーム(上写真)、船首にVIPステートルーム、その間のスペースの右舷側に2段ベッドのゲストルーム、右舷側にトイレ&シャワールームというレイアウト。

ビームを最大限に生かしたオーナーステートルームは、とても落ち着いた雰囲気が漂う洋上のスイートルーム。

船首にはVIPステートルーム。前方にかなりボリュームを持たせた船型の効果もあって、十分なゆとりを持つ空間が実現している。ハウス後部の床面を開けると、大きなストレージスペースを備えている。大人が縦向きに寝られることができるスペースがあるので、クッションを敷いて、ここをクルーキャビンとして活用することも可能になっている。

共用のトイレ&シャワールームと通路を挟んで反対側(右舷側)は、二段ベッドが備わるゲストルーム。ここも余裕があるので、居心地がよさそうだ。

最新の操船システムを搭載

カメラ艇がなく取材艇の航走シーンは撮影できなかったが、ニンバスと縁の深いボルボ・ペンタが所有する495
フライブリッジの写真を撮影できた。

試乗時は風も弱くフラットな湖面で、最高のコンディション。全部で7人が乗船したこの日の最高速度は、3,730回転/分で28.3ノットを記録した。もっとも、このボートの性格からすれば、20ノット強の巡航速度で走るのが、燃費的に考えてもベストだろう。安定した走りは、乗員に安心感を与えるものだと強く感じた。

また、同じスウェーデンのボルボ・ペンタとはビルダーの出自からして縁が深く、現在も開発のシーンでさまざまな技術交流が行われているとのこと。今回特に感動したのは、新型のジョイスティックシステムだ。操船していると、「まだステアリングを握って操船しているのか?」とニンバスのスタッフに言われ、ジョイスティックでの操船を促された。

造船所では、495フライブリッジが何隻も建造されていた。効率的な生産体制も非常に印象に残ったことの一つ。

ニンバスが満を持して送り出した495フライブリッジは、欧米のマーケットでの高い評価もうなずける一艇だった。ライフスタイルの変化により、日本でもボート遊びのスタイルが多様化している。ニンバス495フライブリッジがねらう「長く滞在したくなるようなボート」というコンセプトは、今の時代にマッチしていると思う。リアが、快適に過ごすためのスペースとして活用できるように考え抜かれている。

(文・写真=安藤 健/舵社 取材協力=ウインクレル)

左からニンバスCEOのヨハン・インデンさん、日本のディーラーであるウインクレルの井ノ口公彦さん、ニンバスのブランドマネージャーのヨナス・ゲーテベルグさん、ウインクレルの辻本裕貴さん

【SPEC】
●全長:15.0m
●全幅:4.60m
●喫水:1.20m
●排水量:19,100kg
●燃料搭載量:1,700L
●清水搭載量:520L
●エンジン:ボルボ・ペンタD6-IPS650(480PS/353kW)×2
●価格:問い合わせ

(問い合わせ)
ウインクレル
〒231-0032 神奈川県横浜市中区不老町3-12-5 WINCKLER BLDG 4F
TEL:045-681-0104
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