スパンカー付きのボートがそろう貸しボート店/熱海・亮知丸

2023.07.12

月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。

今回は、『BoatCLUB』2023年3月号に掲載された「激シブの冬の海はこたえるゾ」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。

※取材は2023年1月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。


 

網代の思い出

今回のボート店は熱海市網代の亮知丸サン。近年すさまじい勢いでレンタルボート店が姿を消していくなか、2020年に新たに起業した貴重な店です。昨年から来たいと思っていたのが、やっと念願かないました。船外機艇のほか手漕ぎボートのレンタルもあります。

いきなり蛇足ですが、ワタクシメが初めて一泊釣行のボート釣りをしたのがここ網代港だった。もう三十数年も前になるかしら。釣具店に宿とレンタルボートの手配をしてもらい、温泉一泊釣り旅気分を出すためにワザワザ電車で行ったなぁ。ただし、プライベートでなく釣り雑誌の取材でした。しかも、同行編集者もカメラマンもいなくてただひとり。5月の末だったが、ポジフィルムをクーラーボックスへ大量に詰め込んで行った記憶がある。

釣果の定かな記憶はないけれども、生きアジのエサでイケス周りのヒラメねらいだったかな。とにかく、生きエサ用の装備に釣り道具にカメラに、さらには着替えまで抱えて電車釣行なんてぇ、今のオラには信じがたい行動力ですナ。

そんな昔からなじみの釣り場ですが、今回の釣り場は網代港外がメイン。いってみれば初めてのゲレンデである。網代多賀側にある長浜海浜公園から何回か可搬艇でエントリーしたこともあったが、沖を流した記憶はない。

 

駐車スペースはボート乗り場のすぐソバの護岸なので、車内が砂や土で汚れない。近くには水道ホースがあり、帰りのタックル洗浄は完璧。しかも高水圧でありがたい

 

防寒およびコマセ臭対策用、超薄手のゴム手袋。安価なポリエチレン製の手袋でもいい。どちらも、多少指先部分が破れても装着していないときよりは暖かい

 

亮知丸の受付事務所外観。海側の護岸にあるスワンボートが目印。国道135号から網代魚市場への脇道に入り、そのまま直進するとあります。トイレはさらに先の右側にある

 

ボート乗り場は網代港内の突堤。足場がよくて高低差も少ないので乗りやすい。沖へのアプローチ上には障害物が少なくて、沖から帰着するときもわかりやすい場所にある

 

エントリー前のレクチャー。イラストを参考に釣りエリア、禁止区域、釣りポイントなどをていねいに説明してくれる。船外機艇の釣りエリアはけっこう広い

 

今回の本命はカイワリ

ヤッパ、初めての場所は一抹の不安はあるものの期待感のほうが大きいですナ。しかも、亮知丸にある3隻の船外機船にはレンタル艇には珍しいスカンポ(スパンカー)が付いている。しかし、今回レンタルしたフネは直前にスカンポが折れてしまったようなので、しかたなくドテラ流し。アマダイ釣りやジギング、もしくはタイラバならまだしも、水深70メートルでドテラ流しのコマセ釣りはチトきびしいが。

そして、今回の本命はY男がぜひ一度食べてみたいというカイワリ。まぁ、おいしい魚ですからネ。Y男にもカイワリのプリプリの歯ざわりと甘みを堪能していただきたい。そこに昨年末、青ものに交じってカイワリが載っていた亮知丸サンのウェブサイトに目が留まったのだ。

ところが、現地で釣況を聞いてみると、12月中旬までは青ものもよかったけど、暮れから1月はサッパリだという。

まぁ、そういうことで、慣れ親しんだ釣り場ですが、手探り状態で釣り始める。ポイントを定置網沖にするか、悩んだ末に赤根埼沖のカケアガリ水深70メートルにした。日ごろの行いのせいか、この日は朝から穏やかなベタナギ。正月早々縁起がイイですナ。風がないので暖かく、ボートの流れも緩やかで釣りやすい。

 

一般的なコマセ釣り仕掛けを使用した。コマセ釣りの水深は20~80メートルぐらいか。なので、オモリは40~80号。アミコマセに付けエサはオキアミを使った

 

コマセは、アミ2キロ、オキアミ1.5キロの冷凍ブロックが予約できる。バケツやタモはボートに置いてある

 

赤根埼沖のポイント。ちょっとしたカケアガリの水深70メートルラインを流す。マダイやアマダイがヒットする可能性がナイとはいえない

 

海から見る熱海城。右下の建物がホテルニューアカオ。アカオ前もカケアガリの好ポイントですが、釣りエリアぎりぎりなので、範囲外に出ないよう要注意だ

 

体長20センチ前後の魚ですが、肉厚でしっかりとした白身は美味です。飛び出た目はすぐに引っ込みました。タマガシラは、フエダイかフエフキ系かと思っていたがイトヨリ系だったとは。顔付きも身の質もイトヨリとはまったく似ていないのに

 


今回の釣行マップ(静岡県熱海市)

「海釣図V」(マップル・オンより転載)

 

釣り日和⇒強風

最初にすることといえばコマセ撒きである。ただし、コマセを撒くのはオラひとり。Y男はカメラが汚れるのを理由にジギングとタイラバである。カイワリを食いたいと言ったのはアンタだろうが。

80号のプラカゴにコマセを詰めて、70メートル落としてコマセを振ってタナを取り、しばらく待って反応がなければ、巻き上げてコマセを詰める、の繰り返し。これは何かの罰ゲームですかネ。立ってシャクるのは困難なので翌日の腰痛および筋肉痛確定。

それでも、何投目かにコツンと小さなアタリが発生。仕掛けを上げてみればタマガシラ。この魚は群れているから1尾釣れればあとが続いて数が伸びる。この際、タマちゃん祭りでもいいではないか。釣果ゼロさえ免れればヨシ! といった感じの超絶低いココロザシなのであります。

今まで、タマガシラはフエダイかフエフキダイの仲間だと勝手に思っていました。それは、沖縄のタマン(ハマフエフキ)の幼魚と形が似ているから(色と柄は違うが)で、どちらもおいしくて人気の魚です。そういうのもあって、タマンの幼魚もタマガシラも、ワシはタマチャンと呼ぶ。でも、調べてみたらタマガシラはイトヨリ系でした。まぁ、姿かたちは似ていませんが生息域は近いですからネ。

ところが、タマちゃんを1尾釣った直後から強くて冷たい北西風が吹き始めた。今まで、ヌクヌクで釣っていたのでこの風はこたえた。ほうほうのていで港近くのポイントに避難。ここで、Y男がホウボウをゲットして、なんとか料理のできる魚を確保できた。

その後も風が収まらず、港内にある亮知丸専用のブイに係留して釣りを再開したが水深は20メートルで、真冬の釣りには少し浅いような気もする。しかし、かならず何かしらの魚が回遊してくると信じて釣り続けるもジャミアタリのみで終了。

今回は超貧果でしたが、この釣り場の攻略法はおぼろげながら見えてきた。再チャレのチャンスがあれば絶対に釣ってみせる。ただ、そのチャンスはいつになるのかなぁ。

 

オイラがせっせと撒いたコマセに寄ってきたホウボウをゲットして、漁夫の利を得るY男

 

風が強くなってきたので、風裏になっていて穏やかで釣りやすい港内に、そそくさと逃げ込む。釣果よりも快適さを優先すれば、おのずと結果は見えてくる

 

港内では、船外機船は指定された亮知丸用の係留ブイ以外の場所での釣りは禁止されている。水深20メートル。真冬の魚はもう少し深い場所を好むと思うが仕方ない

 

本日の成果。本命というかねらいの魚はなんでしたっけ。むしろ何も釣れなかったほうが潔い気もするが、釣り始めから釣果ゼロというのもなぁ

 

釣果が少なくたって、亮知丸では10種類ほどの干物の販売もしているのでお土産の心配はない。家に持ち帰って干物を焼けばすぐに食べられる。こんなラクチンなことはないナ

 


須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。

 

(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=幸野庸平/舵社)

 

今回お世話になった貸しボート店

今回借りた20馬力船外機艇のほか、25馬力艇と手漕ぎボートが借りられる。予約状況はウェブサイト上で随時確認でき、予約にLINEが使えるなどなんとも現代風。事前に予約をすれば釣りエサを用意してくれたり、1,000円で魚探がレンタルできるのもうれしい。

亮知丸
[住 所]静岡県熱海市網代156
[連絡先]0557-55-9715(16時まで)
[料 金]5,000円~
[定休日]なし


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