シーマンシップを競う11種目、僕らが考えた島一周計画/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会3-1

2025.08.07

シーマンシップを競う世界大会に参戦する、カイ&エリこと、山本 海さんと絵理さん。その前に、米・メイン州の無人島、グリーンアイランドへ上陸し、大会へ向けた最終調整に入る。大型ボート=バントリーベイギグでのトレーニング、無人島での暮らし・・・。そこには数えきれない気付きがあった。(編集部)

◆タイトル写真
photo by Kai Yamamoto | カナダとの国境近く、米メイン州の無人島グリーンズアイランドの入り江。沖掛けした大型ボートが今回の使用艇、バントリーベイギグ

 

 

拠点としたビーチに隣接する木陰に設置したテントの風景。干満の差によって、海水はテント近くまで上がってくる。テントで作業するエリ(山本絵理)

 

 

 

 

シーマンシップを改めて考える

シーマンシップを競う大会「アトランティック・チャレンジ」に参加するために、トレーニングとしてやって来た、米メイン州の無人島グリーンズアイランドでの生活が始まり、初日を終えた僕はシーマンシップとは? なんて考えながら眠りについた。

朝、バシャ・・・バシャという水の音がテントのすぐ近くで聞こえて、僕とエリ(山本絵理)は飛び起きた。テントのすぐそばまで波打ち際が迫っているのだ。

テントサイトのデッキが設置されてたので問題ないだろうと、潮汐を確認せずにテントを立ててしまっていた。僕らは荷物を運ぶのが面倒だという理由から、ビーチに一番近い場所のサイトにテントを設営したのがまずかったか、このまま潮が上がれば全ての荷物が濡れてしまう。

すぐにベースとなるナロドニーハウス(Narodnie house /国際的な家)に行き潮汐表を確認して、いまが満潮であることを確認。潮の高さもどうやらこれ以上高くなる日はなく、引っ越す必要はなさそうだ。一安心と共に、なるほどこんな形でシーマンシップを突きつけられるのか、と反省した。

ここでの生活はさまざまなことが「シーマンシップ」とつながっている。ロープワークは自分たちの唯一の海上移動手段である船をつなぎ止めるのはもちろん、テントを張る、洗濯ものを干す場所を作る、修理にも大いに役に立つ。

水は雨が降らなければ補給できないのでタンクの水量を確認しながら大切に使う、食料は冷蔵庫(プロパンガス燃料を使う)が限られているので過不足ないように工夫する。ここにはコンビニもスーパーもガソリンスタンドもない。外からの補給は限られた資源しかない中で言葉だけでなく、文化習慣が違う人々が共同で生活をするには共通のルールがないと簡単にぶつかり合ってしまう。海のルールが国際的に統一されているのも頷ける。

島での生活はまるで大きな船で、長期間の航海をしているような生活だ。海という広大な場所を共有する僕らセーラーが、長い年月をかけて作り上げてきた「シーマンシップ」とは精神論で語られがちな部分が多いが、実際に海を安全に渡り、自分たちの力で船を維持する具体的な方法論なのだ。

 

●Greens Islandでの暮らし

島での生活は水の管理、トイレのコンポストの管理と結構忙しい・・・。

雨水が足りない時は、湧き水を島の反対側まで汲みに行く

 

湧き水の井戸では貴重な水を存分に楽しめて、はしゃげた!

 

 

●Rope Workの必要性

ロープワークが常に自分たちに必要であることを、さまざまなシーンで体感した。

船でのセールの扱いはもちろん、ハンモックや、桟橋を直したり、そのための丸太をロープで縛って運んだり。ロープはなんでも使える大切な道具だ

 

テーブルの上はいつも海図とコーヒーとロープ。わいわいと船のこと、海のことに集中できる幸せな日々だ。こんな日々を日本の若者にも、人生で一回で良いから経験してみてもらいたい

 


 

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和船帽子の陽気なダグラスさんとの出会い/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-1

 

(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)

 

※本記事は月刊『Kazi』2025年4月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ

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山本 海
Kai Yamamoto 

セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com

 


 

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