モーニングスイムから始まる無人島の朝。今日も練習のため船を漕ぎだした/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会3-2

2025.08.11

米・メイン州の無人島、グリーンアイランドでのトレーニングを続ける日々。 カイ&エリこと、山本 海さんと絵理さんは、シーマンシップを競う世界大会に参戦するため、この無人島でセーリング、ローイング(漕走)、そしてロープワークなど、勝つための訓練に集中。ときに迷いながら、無人島での暮らしに没頭した。(編集部)

◆タイトル写真
photo by Kai Yamamoto | 沖に停泊させていた木造練習船、バントリーベイギグを泳いで取りに行き、数人で漕いで岸際まで持ってくる。元気な子たちが朝から競争しながら船まで泳いでいる姿は頼もしい

 

●Morning Swim & Rowで目覚める朝

朝起きてすることは、体操、モーニングスイム、そして、モーニングロー!

僕も泳いでみたけど、水が冷たくてめまいがしてきた(笑)

 

毎朝の日課、モーニングローの風景。真面目なトレーニングの日もあれば、風景をのんびり見に行ったり、歌を練習する日もある。楽しい時間で大好きだった。アシカやイルカなど野生動物にも出会えた

 

料理を担当してくれたコーラル。モーニングローから帰ると、コーラルとその日の料理当番のメンバーが朝ごはんを作って待っていてくれる。手作りの食事が動かした体に染み渡り最高

 

コーラルの手伝いをする人はモーニングローやモーニングスイムなどの練習に出ずに、ナロドニーハウス(Narodnie house /国際的な家)でみんなの食事を作る。料理当番は交代制。楽しく調理する

 

 

 

この大会に勝ち目はあるのか

島生活で感じるシーマンシップは毎日、海でも鍛えられる。

僕らが朝起きて一番にすることは、モーニングスイム。目の前のビーチから海に入り、体を目覚めさせるのだ。潮の干満で座礁しないように沖に出してある船まで泳ぎ、船を漕いでビーチまで連れて帰ってくるのだ。これが毎朝の始まり。気持ちよさそうに聞こえるが、水が冷たい。サウナの水風呂みたいな冷たさの海に入ると、肌がピリピリとして神経がたたき起こされるのが分かる。気温も低い。朝は17度くらいしかない。太陽が上がると24度くらいまで気温が上がってくれる。最初はつらかったこのモーニングスイムも、慣れてくると体がポカポカとして、なんとも言えず体に良いのが分かってくる。タオルに包まり紅茶を啜りながら感じる朝日は、ありがたみを感じさせる。

船の準備ができたらモーニングロー。朝の一漕ぎといったところで、30分~1時間くらい船を漕ぐ。この時期、霧が深いこのあたりの海域は、毎日違う風景を見せてくれる。自由に行き先を決めて良いのだが、「あそこは潮が引くと岩礁があったから近づかないほうが良い」とか、海図を片手にさまざまな海の表情を観察することができる。島の見え方、変わった形の岩を自分たちなりのランドマークにして海図に描き込んだりと距離と時間を感覚的に覚えていく。

ここは島々に囲まれているおかげで波がほとんどなく安全だし、アシカやイルカなどの野生動物もたくさん生息しているため、バントリーベイギグを漕いでいても全く飽きることがない。

モーニングローから帰ると、朝食が待っている。運動した後の朝食はおいしい。みんなでガヤガヤと食事をしながら今日の予定について話し合う。「まずは、目標を大会ではなく、この島を一周することに向けて船を練習しよう」ということになった。

確かに大会は11種目の競技でシーマンシップを競うものなので、セーリングがうまい、とか、筋肉を鍛えてローイングで差をつける、とかそういったことでは何年も練習しているほかのチームに勝ち目もないし、11種目のなかでは海図やロープワーク、アンカリング技術、果てはヒービングラインの投てき技術まで総合的な力が求められるのである。種目については後ほど詳しく説明するとして、これらを一気に練習するには、計画的なクルージングをすることが一番だと思えた。

 

 

●Sail Hoistの練習

セールホイスト&ダウンは、とても重要な作業。タッキングでも必要になるのだ。

伝統的なリグを採用しているバントリーベイギグでは、ハリヤードサイドステイとしても使うので、タッキングごとにいったんセールを下げて、もう一度揚げる必要がある

 

カッチ色の帆布を使用したラグセール(不等辺四角形の縦帆)

 

全員でセールの揚げ降ろしを何度も練習した

 

USAチームのセールダウンの風景

 

島の海岸にある大きな四角い石。海からもよく見えて、霧の中でも良く目立ち、素晴らしい物標となった。海図にも記載されている

 


 

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和船帽子の陽気なダグラスさんとの出会い/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-1

 

(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)

 

※本記事は月刊『Kazi』2025年4月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ

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山本 海
Kai Yamamoto 

セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com

 


 

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