シーマンシップを競う大会「アトランティック・チャレンジ」に参加するため米・メイン州へやってきた、カイ&エリこと、山本 海さんと絵理さん。ロックランド滞在を経て、ついにチームビルディング&大会に向けての練習のため、無人島・グリーンアイランドへ向かう。その道中は実に賑やかなバイオリンの音楽が奏でられた!(編集部)
◆タイトルカット
photo by Kai Yamamoto | グリーンズアイランドに向かうフェリーでバイオリン演奏の素敵なサプライズ。すぐに場が和み、インストラクターやほかの参加者とも自然に会話が生まれた
●CARPENTER'S BOAT SHOPで過ごした2日間
トレーニングが始まるまでの2日間、カーペンターズボートショップに宿泊した
造船学校であるカーペンターズボートショップの趣きある建物
ここカーペンターズボートショップは9カ月のボートビルディング・コースを実施しているが、なんと授業料は無料。職業訓練校として始まった歴史を持ち、寄付や公的支援を受けて活動している。「アトランティックチャレンジに挑戦しにきたんだ」というと、「それは最高だね! きっと素敵な経験になると思うよ。そして、かなりのハードワークになると思う」。前半の部分は良いとして、後半がとても気になる。詳しく聞いても、「たくさん歌うよ!」とか「無人島の暮らしは楽しいよ」とかちょっとはぐらかされているような不安な気持ちになった。明日からの無人島暮らしを前に、豊かな時間を過ごせた。
生徒は課題を制作しながら、インストラクターにいつでもアドバイスを受けられる。船だけでなく家具なども制作
作業場の屋根裏にある隠し部屋のようなリビング、生徒の一人が住んでいる
“I can’t change the direction of the wind,but I can adjust my sails to always reach my destination”
「風向きは変えられないが、セールを調整し、いつでも船を目的地に向かわせることができる」この言葉を掲げ、若者にシーマンシップを伝える団体「アトランティック・チャレンジ」。
2年に一度、各国のチームが集まりシーマンシップを競う大会が開かれるという。日本にも学びの場所と、世界につながるチームを作りたい。 カイ&エリこと、スピリット・オブ・セイラーズの山本 海と絵理が、日本人として初めて参加してきた。
ケルティック音楽の歓迎
米メイン州ロックランドにたたずむ造船学校、カーペンターズ・ボートショップ(Carpenter’s boat shop)で2日間を過ごした僕とエリ(山本絵理)は、いよいよ無人島でのトレーニングプログラムに参加する。
フェリーターミナルにガヤガヤと集まったメンバーたち。ここにはUSチームと今年初めて作られたインターナショナルチームの2チームが来ている。僕とエリはインターナショナルチームに参加だ。USチームは毎年行われているサマートレーニング・プログラムをすでに経験済み。僕らインターナショナルチームは、数回のオンラインミーティングでしかコミュニケーションしていない。よく言えば世界選抜、平たく言えば即席チームなので、そのまま大会に出場すると危ない。今回の無人島渡航は、チームビルディングと大会に向けての練習を兼ねてのトレーニング期間なのである。
ぎこちないあいさつを数回交わした程度で、参加メンバーたちは誰が自分のチームなのかも分からないままフェリーに乗り込む。ここから1時間程度の船旅で、フォクスアイランズ(Fox Islands)のヴァイナルヘイブン(Vinalhaven)に到着する予定だ。
フェリーの中では、資格を持ったインストラクターからメディカルチェックを受ける。デッキに戻ってみるとインストラクターがバイオリンやギターを出し、デッキでセッションを始めていた。心地よいケルティック音楽とこの海域独特の深緑色の海、乾いた青い空、小さな島々に霧がかかり、僕らの冒険の旅のオープニングとしては最高の景色と音楽だった。
(次回へ続く)
●VINALHAVENへの船旅
フォクスアイランズのヴァイナルヘイブンまで、1時間の船旅での素敵な歓迎!
デッキでのバイオリン演奏に盛り上がる参加者たち
ロックランド港外の灯台。灯台守が住めるようになっているのだ
晴れていたと思うとすぐに霧に囲まれる。この海域は夏には霧が頻繁に発生する
ヴァイナルヘイブンから、さらに無人島グリーンズアイランドへ向かうボートを待つ
無人島であるグリーンズアイランドのビーチにアンカーを置いて、潮汐を確認し沖に仮泊した大型ボート、バントリーベイギグ。この方法は一時的なもので、一晩止めるなどの場合は別の方法を行う
(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)
※本記事は月刊『Kazi』2025年3月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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山本 海
Kai Yamamoto
セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com