ロックランドの造船学校で木造船を造る技術に触れる/カイ&エリが挑戦・シーマンシップ大会1-2

2025.07.01

ついに、シーマンシップを競う大会「アトランティック・チャレンジ」の創設者、 ランス・リーさんと遭遇を果たしたカイ&エリこと、山本 海さんと絵理さん。米メイン州での出来事は、毎日驚きの連続であった。ロックランドの造船学校、カーペンターズハウスなどで、海に生きる技を学んでいく。スクーナー祭りにも参加しました!(編集部)

◆メインカット

photo by Kai Yamamoto | ダグラスさんの知り合いが運営しているということで、2日間泊めてもらったカーペンターズ・ボートショップ。とてもきれいで心地が良い場所だった

 

前回から登場の陽気なダグラス・ブルックスさん

 

アパレンティスショップの中で進行中の一番大きな船のプロジェクト。ダグラスさんの友人が一人で造っているそう。製作者は留守で会えなかった

 

TO DO リストがあり、少しずつプロジェクトが進んでいる様子がうかがえる。製作者の夢へのリストでもある

 

CARPENTER'S BOAT SHOPの看板

 

“I can’t change the direction of the wind,but I can adjust my sails to always reach my destination”

「風向きは変えられないが、セールを調整し、いつでも船を目的地に向かわせることができる」
この言葉を掲げ、若者にシーマンシップを伝える団体「アトランティック・チャレンジ」。

2年に一度、各国のチームが集まりシーマンシップを競う大会が開かれるという。日本にも学びの場所と、世界につながるチームを作りたい。 カイ&エリこと、スピリット・オブ・セイラーズの山本 海と絵理が、日本人として初めて参加してきた。

 

 

ロックランドの造船学校

アパレンティスショップに着き、工房を案内してもらう。ここでは1日~数日の木工体験から、半年~3年かけて本格的に木造船を造り上げるコースまである。

まずは、基本の船であるモンヒガンスキフ(Monhegan skiff)と呼ばれる地元で伝統的に使われている船を造るコースから始まるそうだ。オールはもちろんセーリングもできるこの船は、地元のロブスター漁師にいまでも重宝されている小舟で、港のあちこちで見かけることができる。沖に留めた船に行くためのテンダーや足船として活躍しているこの丈夫でかわいい小さな舟は、日本でいうベカ舟といったところか。

ここで、どうして造船学校がシーマンシップを学ぶ団体につながるのか、と思い尋ねた。

「木造船を造る技術を手に入れることは、木工がなんでもできるということだ。この辺りで船が造れれば、造船のヤードに就職するだけでなく家具を直したり、家を直したりと、手に職を持つことと同じなんだ。船を動かすためには、人と協力したり、リーダーシップ、計画性、自然を観察したりすることが必要で、その過程で忍耐強さを養うことができる。だから船を造ったり、船で海を渡ったりすること自体が、これから社会に出る若者への教育の機会になる、と創設したランス・リーは考えたんだよ」

なるほど、ボートショップには造船だけでなくその先にあるセーリングの写真が飾ってあったり、家具や工芸品などさまざまなものが置いてある。「自分で選択し、自分の力で成し遂げる」という精神がここには満ちあふれていた。

(次回へ続く)

 


●CARPENTER'S BOAT SHOPを見学!

牧師が始めた木工、ボートビルディングなどを無料で学べる私立学校をダグラスさんに案内してもらった!

9カ月のプログラムで木工を学び、アパレンティスショップと同じく地元の「モンヒーガンスキフ」と呼ばれる小舟を作製する。木工を覚えることが職業訓練にもなるということから、多くの人の寄付で運営が成り立っている

 

製作された船はショップの展示室で販売されている。購入された収益は造船学校の運営にあてられる

 

 

寄付はお金ではなく、船でもできる。それをレストアして販売もしている。良い循環を生み出している

 

 

ボートショップの横には、教会がある。この教会がボートショップの始まりの場所

 

●Schooner Festivalが開催!

リーさんの家の前で行われていたスクーナー祭り。地元のスクーナーが大集合。レースもするらしい!

アパレンティスショップ、アトランティック・チャレンジの創設者、ランス・リーさん(中央)と会えた!アウトドアでの冒険教育を提唱し、アウトワード・バウンド学校を創設した教育学者クルト・ハーンから冒険教育を学んだ。地元で多くの人々に尊敬されている

 

港の前には、ボートに土を入れた花壇が展示されていた。カラフルなカラーリングもおしゃれ

 

木造の帆船に木造のディンギー、まるで18世紀に迷い込んだよう

 

ダビット(小型クレーン)は、ボートを降ろせばハンモックに早変わり。この発想こそ本場

 

舷側に設置された木製の船梯子(ふねばしご)。連結部で折りたためる

 

舳(へさき)のロープ製カバーは、大型船を押して離着岸を助けるためのもの

 

(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)

※本記事は月刊『Kazi』2025年2月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

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山本 海
Kai Yamamoto 

セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com

 


 

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