市野直毅の470軽風特化クリニック|①タッキング

2021.10.11

月刊『Kazi』2021年6~10月号に掲載した、短期連載「市野直毅の470軽風特化クリニック」。監修を、470級トップセーラーの市野直毅さんにお願いした、470級の軽風域にフォーカスしたハウツー連載です。

市野さんは、ロンドン、リオ、東京と3度の五輪キャンペーンを経験した、自他ともに認める世界トップレベルのスキッパー。数々の国際大会や合宿で経験を積み、その蓄積されたデータや知識を本誌で紹介してもらいました。

今回は、その1回目のタッキング、ダブルタック、ジャイビングの動作解説編のうち、タッキングを特別公開! ぜひそのテクニックをまねしてみてください。撮影時のクルーは、2018年の470級世界選手権で銀メダルを獲得した磯崎哲也さんにお願いしました。

ダブルタック、ジャイビングも気になる方は、ぜひ2021年6月号の『Kazi』をご購入ください。

 

【タッキング】ロールを推進力に変換する
艇が止まる前にロールタックをすることで、自分たちで見かけの風を作ることができる。その結果、艇速を維持できる場面が増える。

 

ウェザーヘルムを作る
タッキング動作に入る前はベストスピードの状態で。動作に入る時にウェザーヘルムを作る。その量はティラーを離したら自然と風位に向く程度。クルーかスキッパーが体重を風下に移してヒールを作る。同時に、スキッパーはメインシートを1~3cm引き込むことで、ウェザーヘルムを作る

 

オーバーヒールさせる
クルーが体重を風下にかけ、ボートをオーバーヒールさせる。このタイミング(ウェザーヘルム)で、写真のようにティラーをヘルムに合わせて押す

 

アンヒールさせる
ティラーを押すと同時に、2人で風上側に移動。そうすることで、ボートの回転がスムーズになる。スキッパーは体重をかける時、ティラーを持っていない手でメインシートまたはパイプブライダルを持つことで体重移動が容易になる。クルーはセンターケースに足をかけるとよい

 

ロールを起こすために移動
ロールの量は艇に水が入らないところまで。この写真ではジブに完全に風が入る前に、ロ-ルを起こすために移動を開始している。移動が遅れてオーバーヒールが強くなると失速する。また、微風の場合は、ジブに完全に風が入ってから移動するとロールタックが容易

 

同時にロールを起こす
風上側にロールを起こしにいく時は、2人のタイミングを合わせる。また、CE(センター・オブ・エフォート。効果の中心)に近い場所でロールを起こすことが推進力につながるため、ポジションがCEに近いクルーがロールを起こす意識で


【Point】スキッパーが一緒にロールを起こす場合も、できるだけトラベラー付近で起こすイメージで。同時にスキッパーはトラベラーをすぐ風上側に持ってくる。タック完了後は、高さよりもスピードを最初に意識しよう。その後、スピードが回復したら、セールのシーティングを強くしていきながら高さに変えよう

 

【左】市野直毅(いちの・なおき)
経歴:1988 年、神奈川県生まれ。6歳でヨットを始める(葉山マリーナブルーアンカージュニアヨットクラブ)。中村学園三陽高校→関西学院大学で競技を続け、470級でオリンピックキャンペーンを3回経験
戦歴:高校総体優勝(2回)、インカレ団体戦、個人戦優勝、MVP獲得(2回)。全日本選手権優勝(420級、470級は2回)、国民体育大会優勝(3回)、ワールドカップシリーズ3位など

【右】磯崎哲也(いそざき・てつや)
経歴:1992年、茨城県生まれ。茨城ジュニアヨットクラブ→福岡第一高校→日本経済大学で活躍。高校と大学2年までクルー、同3年からスキッパーに転向した
戦歴:インカレ団体戦、個人戦優勝、アジア大会優勝、世界選手権2位など

 

この記事は、2021年6月号『Kazi』の「市野直毅の軽風特化クリニック」を再編集したものです。
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(文=森口史奈/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社 監修=市野直毅)

 


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