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クルージング
学びながら航く/長崎・五島列島クルージング②

2021.03.13

リタイア後に、のんびりと日本各地の島々をフネで訪れる。そんな憧れのヨットライフを送っているのは田中 洋さん(71歳・取材時)。

千葉県在住ながら、長崎県の九十九島パールシーマリーナに愛艇〈Yukikaze〉を置いて、定期的に長期滞在してクルージングを楽しんでいる。

ベテランセーラーの知識を学びながら、九十九島から五島列島に向かう旅に同乗した模様を、3回に分けてお届けしています。田中さんのヨットライフを紹介した前回に引き続き、今回は2回目。

 

今回の取材で同行したコース。複雑な海岸線の島々が並ぶ九十九島から五島列島は、日本有数のクルージングゲレンデ。

 

■天候、風向によって自由に選べる目的地

今回の取材では、いくつかの島に立ち寄りながら、五島列島を目指す。

「ここの最大の魅力は、自由に走り回れる楽しさです。クルージングは自由でなければいけません。その日の天気や風向によって目的地を変えられる楽しさが、この海にはあるんです。北には平戸島、西には五島列島、南には天草諸島や甑島……東西南北のうち西、南、北に行ける島があるんです。風の強い日に無理して風上の目的地を目指す必要なんてありません。しかも、短距離、中距離、長距離で目指せる島のバリエーションもある。こんな場所、日本でほかにありますか? 私はここを日本のブリティッシュコロンビア州だと思っているんです」(田中さん)

 

長崎県の九十九島パールシーマリーナをホームポートにしている田中さんの愛艇〈Yukikaze〉(ベネトウ・オセアニス323)。
photo by Shigehiko Yamagishi

 

■リタイア世代に人気の「遠隔地ホームポート」

近年、リタイア世代の増加により、東京や大阪の大都市圏のヨット、ボートオーナーが、ロケーションのいい海を求めて、瀬戸内海や九州、沖縄のマリーナに愛艇を置くケースが増えている。とはいえ、田中さんの自宅がある千葉県から遠く離れた長崎県のホームポート。通うための交通費の負担は大きくないのだろうか。

「日本航空も全日空もシルバー割引のような制度があって、日を選べば1万数千円で羽田から長崎まで来られるんですよ。そしてこの九十九島パールシーマリーナの係留料は、このフネ(32ft)で20万円弱。関東で同じサイズを置くとしたら80万~100万円。差額で十分に航空券代が出ます。リタイア世代の特権ですね」

確かに、差額で何十往復もできてしまう。しかも、基本的にフネ泊まりの田中さん(2018年は約70泊!)は滞在費も安い。まさに、真似してみたいライフスタイルだ。

 

■九十九島の狭水路を行く

取材当日の航程は、九十九島パールシーマリーナを出港して、周辺の島々の入り江を探索。その後、寄り道をしながら、五島列島の中通島を目指すコース。クルージングは自由でなければいけないという田中さんのモットーに従い、予定をフレキシブルに変更しながらの船旅となった。

まずは、マリーナを出ると次々と現れる島々の間を縫う。途中、「TASAKI(田崎真珠)」の養殖いかだの横を通過した。真珠の養殖には、穏やかな海でありながら水の循環がいい切り立った海岸線、いわゆるリアス式海岸が向いているとされている。こうした特徴を持つ場所は、三重県の伊勢志摩エリアにも共通で、風向こそ安定しないものの、フラットな海面とダイナミックな風景の変化がある魅力的なクルージングエリアとなる。

そうこうするうちに、地元のヨットマンが開拓したという、松浦島の深い入り江の奥の、秘密のスポットに到着。出航してまだ1時間もたっていないのに、日本国内ではあまり見られない、周囲を崖に囲まれた不思議な景色のアンカリングスポットに到着してしまった。係留ブイを拾ってフネをとどめて、一息ついた。

(つづく)

 

その名の通り、無数の島々が浮かぶ九十九島海域。どんどん移り変わる景色が楽しい。浅瀬のナビゲーションに注意。

 

島と島の間の狭い水路を抜けるようなこともしばしば。

 


〈Yukikaze〉のクルージング流儀③
■岸壁係留は事前の準備が大事

島クルージングの係船場所は、ほとんどの場合、漁港や商業港の岸壁になる。あせらないように事前の準備をしておくことが重要だ。

 

いきなり着岸せず、事前に港内を一周して、リングやビットなど係留金具の状態を確かめる。

 

フェンダーは大きめのものを用意して、港内の広い場所で取り付ける。

 

〈Yukikaze〉の場合は、バウのステムにもフェンダーを装備している。

 

長時間係留する場合は写真のようなフェンダーボード(板)も有用だ。

 

漁師などとのトラブルを避けるため、長時間フネを離れる場合は連絡先を掲示。

 


(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)

 

※この内容は月刊『Kazi』2019年7月号に掲載された記事をベースに再構成したものです。この号の特集は「ベテランたちのクルージング流儀」と題し、田中さんをはじめとする熟練セーラーたちのクルージングに同行。真似したくなるノウハウやアイデアを多く紹介しています。ご興味のある方は、バックナンバーもお求めいただけます。


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