【フネのDIY術】/プロペラ交換① 交換理由

2022.12.13

月刊『ボート倶楽部』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝えしてきた。今回は、2021年1月号に掲載した、「プロペラ交換① プロペラ交換の理由って?」から内容を抜粋してお届けします。

 


プロペラの種類

今回は、プロペラ――特にプロペラの交換に関して、解説を行っていく。

早速だが、過去に自力でプロペラの交換、あるいは取り付けをしたことがある人は、どれくらいいるだろうか? そして、その理由はなんだろうか?

低馬力帯の船外機であれば、メーカーが推奨するプロペラとセットになったものもあるが、プロペラは別売りが基本。そのため、取り付け作業自体はしたことがなくても、プロペラの種類について考えたことがある人は多いかもしれない。

プロペラを交換する理由の一つが、ボートのパフォーマンス向上だ。同じ船外機に取り付けられるプロペラの中には、直径(プロペラの回転円の直径)やピッチ(プロペラが1回転したときの理論上の前進距離)、羽根の形状や枚数が異なるものが数多く存在し、その中から、エンジンやボート、遊び方に合ったものを選んでいく。

例えば、浅瀬での使用を念頭においたタイプのものや、ハイパフォーマンス艇に取り付けるタイプのものなど、種類はたくさんある。前者は、藻がプロペラに絡み付くのを抑止する機能がついていたりする。また、ざっくりだが、羽根の枚数が増えれば、それだけ加速性能はよくなるが、トップスピードは遅くなる。

 

軸受けとプロペラ本体の間には、ブッシュ(緩衝材のゴム)が入っており、プロペラになにかが当たったとき、ブッシュがスリップしてドライブの内部機構が破損しないように守ってくれる(上)。船内機の場合は、ブッシュはないのが基本(下)

 

硬いものに当たって割れたプロペラ

 

右が、軟らかい砂地などに接触して曲がったプロペラ(左は同じタイプのもの)

 

タコメーターが必要

特に、安価で手に入る船外機のアルミ製プロペラは、「遊ぶ」余地の大きいパーツの一つだ。各メーカーの船外機に取り付けられるプロペラは一覧になっているので、その中からタイプの合うものを選んでいけばよい。

ただし、プロペラ交換を個人で行うときの問題点が一つある。タコメーター(エンジン回転計)が付いていない場合、エンジンの回転数がわからないのだ。

例えば、それぞれの船外機において、フルスロットルのときの推奨回転数のレンジというのが決められている。そのため、あるプロペラを取り付けてフルスロットルにし、そのときの回転数が、その推奨回転数に収まっているかどうかを調べなくてはならない。フルスロットル時のエンジン回転数が、推奨レンジを超えてしまう場合は、大きなピッチのプロペラに交換し、反対に推奨レンジに到達しない場合は、小さなピッチのプロペラに交換します」

とある船外機のトリセツを見ると、「プロペラのピッチが1インチ変わると、フルスロットル時のエンジン回転数は、150回転/分変わる」、と書かれている。しかも、その変化は、ボートやプロペラの種類、塩水なのか真水なのかによっても異なるとのこと。

結局、その手間や費用を考えると、専門家に依頼したほうがいいのかもしれない。

 

プロペラの破損

プロペラ交換の理由には、パフォーマンス向上以外に、キャビテーションや、漂流物への衝突、座礁によるプロペラの破損が考えられる。

キャビテーションというと、航行中にプロペラが海面上に出たり、水中の気泡をかむことによって空転状態になることを指す場合が多いが、これは正しくはベンチレーション。正確には、キャビテーションは、高速回転するプロペラ表面の液体の流速の違いによって圧力差が生じ、それによって短時間に泡の発生と消滅が起きる現象のこと。その泡の発生と消滅が何度も繰り返されることによって、プロペラ表面に細かい穴のようなものが生じるのだ。

また、座礁などによって破損した場合、プロペラの一部がはじけ飛ぶような症状のときは、硬いものに当たったと推測でき、ぐにゃりと曲がってしまっていた場合は、柔らかいものに接触したと推測できるそうだ。コレは覚えておくといいだろう。

次回は、実際のプロペラ交換の手順について解説していく。

 

キャビテーションによって細かな穴が開いた状態

 

キャビテーションを防ぐために穴が開けられているモデルもある

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2021年1月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
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