【フネのDIY術】/ネジ③ ネジを上手に使うには?

2021.12.27

月刊『ボート倶楽部』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝え中。今回は、2020年5月号に掲載した、「ネジ③ ネジを上手に使うには?」から内容を抜粋してお届けします。

 


下穴を開ける

前回紹介したネジの種類の一つであるタッピングは、使用する際に下穴を開けるのが一般的である。その下穴に関しても、やはり相当に難しい問題があると、東京ボートのサービス部長、伊藤幸洋さんは言う。

「例えば、ネジ部の太さが5ミリのタッピングを入れたいとするじゃないですか。その下穴に、もし、5ミリの穴を開けてしまったら、ユルユルで、もうネジとしては機能しませんよね? じゃあ、どれくらいの大きさの穴を開ければいいのでしょう。3ミリでいいのか、4ミリでいいのか。仮に3ミリの穴を開けたとすると、おそらくタッピングは入っていかないでしょう。無理にねじ込めば、部材が割れてしまうかもしれません」

下穴の大きさの決め方は、素材によっても変わってくるため、やはり経験がものをいう世界ではあるが、一応、「この大きさのタッピングにはこのくらいのサイズの下穴を開ける」といった、目安になるようなものは存在する。

「あくまで僕の中での目安ですが、ちょうどここに6ミリ径のタッピングがあったので、それを例に使って考えてみます。この場合の6ミリというのは、呼び径(外径)、つまりネジ山の頂点で作られる円の直径のことをいいます。次に、ネジ山の谷底部分の直径(谷径)を見てみると、だいたい4.5ミリくらいになっています。ネジを入れる部材が、木などの柔らかいものであれば、少なくとも4.5ミリの下穴を開ければ、問題なく入っていくと思います。ただ、FRPのような硬い部材の場合は、僕なら5ミリの下穴を開けるようにします」

 

外径4ミリのタッピングを、2.5ミリの下穴にねじ込んでいく。数ミリ入っていっただけで、明らかに適切な下穴のサイズでないことがわかるくらい、FRPが変な音を立て始めた

 

上が下穴3.5ミリ、下が下穴2.5ミリに、4ミリのタッピングをねじ込んだところ。下は、FRPの層が剥離し白くなっているのがわかる

 

当たり前だが、タッピングをねじ込む際には、下穴を開けていたとしても、頭部のネジ溝に相当の力が加わる。ネジ溝がなめてしまうのを防ぐためにも、ネジ溝のサイズに合った工具を使わないといけないということは肝に銘じよう。

 

木製の単板にFRPを積層したものに、下穴を開けてタッピングをねじ込んでみる。素材に合わせて下穴のサイズを変えていくが、その調整は経験がものをいう。ちなみに、右の下穴には「ザグリ」加工(下穴の最上部の角を少し削ること)が施されている。ザグリを入れることで割れにくくなるなどの効果がある

 

愛艇を”化粧”する

世の中にはあえてネジを見せて使いたいという人もいるだろうが、基本的にはネジは見えなくするほうがいい、と伊藤さんはいう。

「僕は、プレジャーボートは趣味のものだと思うので、見た目を美しくしたほうがいいと考えています。そのため、ビスキャップやナット用のクリングをよく使うんです。これらも、白だけでなく青や赤、木目柄のもの、サイズの大きいものまでたくさん種類があって、使う場所に合ったものを選ぶようにしています」

また、安全面からみても、ネジを覆ったほうがいいことも多い。頭部がさら形状のネジは、強くねじ込めば頭部がすっぽりと埋まるようになる。しかし、それは、ある程度厚みのある部材の場合の話。薄い板にネジを使うときは、なべやトラスを使うが、その場合はネジの頭部が飛び出るので、そこでケガをする可能性がある。そういうときにビスキャップやクリングでカバーすることで、ケガをしにくくすることができるのだ。

 

右の白いつやつやしたものがビスキャップ。さらタッピング(左)に、専用のワッシャーを付け、ぱちっとはめるようにして取り付ける


伊藤さんのビスキャップ類の収納箱。さまざまなサイズをそろえるほか、使用箇所の色や柄に合ったものを使うため、常に複数のビスキャップを持つようにしているという

 

以上で、3回にわたってお送りしてきたネジについてのシリーズは終了。普段の生活では、その存在に気がつきにくいネジだが、あなたの愛艇にも、きっとたくさんの種類のネジが使われているはず。たまには、陰であなたのボーティングを支えてくれるネジを、意識して見てみてはいかがだろうか。

 

実際のビスキャップの使用例。触れたときの安全と見た目を考慮している。写真のように使用箇所と同色を使うのが基本

 

アフトコントロールステーションのグラブレール。よく見ると、ネジが見えないのがわかる。これは、このボートの建造時に裏側からネジで留めているためだ

 

ナビシートの脚に使われていた特殊な形のネジ溝。伊藤さんいわく、変わったネジ溝のネジは、メーカーがいじってほしくない場所に使うことが多い、とのこと

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2020年5月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
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