和歌山・湯浅湾にてアウトドアガイドサービス「アイランドストリーム」を営むシーカヤッカーガイド、平田 毅さん。弊社発行のカヌー専門誌『カヌーワールド』にも何度か登場していただいているので、ご存じの方も少なくないと思います。
その平田さんが、このたび新刊『森と黒潮と神話の旅 吉野、熊野、伊勢をつなぐ聖地巡礼』(彩流社刊)を上梓されたのでご紹介します!
(文=『CANOE WORLD』編集部/星野 淳 写真=西沢あつし 写真提供=彩流社)
平田 毅(ひらた・つよし)さん
1970年、兵庫県生まれ、奈良県育ち、和歌山県在住。日本屈指のカヤック旅経験を持つ、カヤックトラベラー。日本一周単独航海を皮切りに、アジア、オセアニア、アラビア、東アフリカ方面など、約20ケ国に渡るカヤックでの冒険旅を経験。2003年から和歌山・湯浅の地にてアウトドアガイドサービス「アイランドストリーム」を運営。カヤック、SUP、トレッキング、キャンプなどを通し、自然が語りかけてくれる大切なこと、素敵なことを伝える活動を続ける。
以前、平田さんの別の著書『インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行』(めるまーく刊)を読んだことがあるのですが、こちらはフィジーのカンダブ島、南インド、タンザニアのザンジバル島、アンダマン・ニコバル諸島など、太平洋〜インド洋辺境の島々を訪れたときの体験と思索を綴った紀行エッセイでした。
ただ、紀行エッセイとは言っても、その土地の歴史や神話、音楽、海のエネルギー、波のリズムに至るまで、平田さんの“野性的感覚”によって一つの物語として紡がれていて、非常に読み応えがあったことを覚えています。
それから時を経て15年ちょっと。今回の新刊『森と黒潮と神話の旅』は、サブタイトルの「吉野、熊野、伊勢をつなぐ聖地巡礼」からもわかるように、その舞台が紀伊半島の三大聖地へと移され、展開していきます。
さらに、本書の特徴の一つになっているのが、第一部「山の旅」、第二部「海の旅」の二部構成になっている点。平田さんが、海と山が織りなす自然の鼓動を体感し、いにしえの人々と対話する。そして地理的な移動だけでなく、平田さんの内面の旅にも繋がっていくところが、本書の得も言われぬ深い魅力になっています。
冒頭のプロローグに書かれているエピソード——平田さんのプロショップ、アイランドストリームの前に広がる砂浜で出会ったアカウミガメの話——から今回の旅のすべてが始まります。
そのウミガメとの出会いから呼び起こされる、幼いころに吉野の山奥で感じた不思議な幻想。
その始まり方がなんともすばらしく、読者は冒頭からグイグイと平田さんの世界に引き込まれていきます。
——と、この場であまり詳しく内容に触れるのは、野暮というもの。
あとは、ぜひ本書を手に取って確かめていただければと思います!
「二本の足で歩き、二本の腕で漕げ!」(本文より)
自然に深く感じ入ることに、とことんまでこだわったという今回の平田さんの紀伊半島の山と海の旅。その豊穣なる自然との対話が綴られた本書は、カヤッカーはもちろん、自然を愛するすべての人の心に残る一冊となること請け合いです!
■『森と黒潮と神話の旅 吉野、熊野、伊勢をつなぐ聖地巡礼』
●彩流社(刊)
●判型/頁:四六判/204ページ
●価格:2,200円
(問)彩流社
TEL:03-3234-5931
https://www.sairyusha.co.jp/