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サバニと歩む。宮古島で暮らす/宮古島(沖縄県)池本孝徳さん/海辺暮らしの日々 COASTAL DAYS①
宮古島の西北、大浦湾から伝統和船「サバニ」を海に浮かべる。西のくうら(小浦)浜(くーらーぶー、とも)を目指す宮古島で暮らす池本孝徳さん。日がな一日、沖縄の伝統和船「サバニ」に乗り、宮古島本当から池間島などを帆走し、漕走する。それぞれが過ごす憧れの海辺暮らしの連載です。まずは、池本さんの暮らしを全5回でお届けします。まずはその1
2026.08.09

ともにサバニ帆漕(はんそう)レースに出場した次女の碧さんが贈ってくれた伝統和船「サバニ」。宮古島で暮らす父へのプレゼントである。このサバニを伝統的な艤装にしつらえ、海に浮かべる池本孝徳さん。海辺で暮らす憧れの暮らしを紹介する連載「コースタルデイズ」。まずは、池本さんの暮らしを全5回でお届けします。

次女からの贈り物、伝統和船「サバニ」での帆走後、風が落ち、しばしの休憩。ビーチにアンカリングした愛艇を眺める。黄色の「ほ」は少し小さいので強風時に使う
くうら浜。浜から数メートル入った土地を所有予定で以前はここにサバニを置いていたが、船台が砂にかんで大変なので知人のつてで漁港へ移動した

憧れのスローライフ

池本孝徳さん(以下、池さん)は春から秋は週に3 ~ 4回ほど伝統和船のサバニで海に出る。「3 ~ 4人乗りのサバニもいいけど、神奈川県の油壺にいたときから“今日もお前と俺の2人だけだな”なんてさ(笑)。人がいなくてヨットを出せないってのはもう散々経験したから、1人乗りがいいかなって。朝目覚めて、天気がいいな、風もいいな、じゃあ乗ろうかな。5 ~ 6m/sあれば楽しいし、風が悪ければ浜でゆっくりすればいい」

まさに憧れのスローライフ。舵もアウトリガーもないサバニに「っざく(。糸満では、えーく)」を差して針路を保持。見よう見まねで乗ってみた。全長5m、全幅80cm。キールもないのでタッキングでものすごくドリフトする。リーウェイもすごい。私は何度も沈(ちん)したが、池さんはスラーっとスマートに乗っていた。さらに、池さんのこだわりはできるだけ古式にこだわって乗るということだった。

サバニの正しいリズム

「例えば三線(さんしん)をエレキギターみたいに弾く若者がいたとする。ギュイーン! なんてチョーキングしたり。それってかっこ悪いよね(笑)。サバニも同じ。ILCA級やウインドサーフィンのリグをサバニに装備したら、たぶん速くて楽になる。でも、それは違うしサバニ文化の冒涜だと思う。三線には三線のリズムがあるように、サバニにはサバニのリズムと乗り方がある。とん、てん、てん。とんてんてんってさ」

このあたりのこだわりは、ぜひ第5話を見てほしい。「でもさ、サバニのタキングは『っざく』を差しただけじゃマニューバしないから、風下側を漕ぎながらラフィングしていく。セールを入れながら漕ぐとき、伝統的な『ざくぎー(マルバチシャノキ)』製だと重いから、軽いスギ製を使ってるんだけど……。これは邪道かな(笑)」。セーリングの話をする池さんは、いつもこんな感じで少年に戻る。そんな池さんに、これからの夢について聞いてみた。次はどんなことをしたいですか? ビールを一口飲み、少しだけ考えた池さんがゆっくり答えた。

「このまんまでいいかなぁ」

 私はなんだか泣けてきて、ぬるくなったビールを飲みほしその場をごまかした……。次回は、そんな池さんのキールボートライフについてお伝えします。

(次回3へ続く)

隣家に咲く櫂の材料、マルバチシャノキの実を見せてくれた池本さん。後編では自宅も紹介します
糸満で言う「えーく(櫂[かい])は、池間島では「っざく」と言う。自宅で「っざく」を削り出す。材質はマルバチシャノキ(丸葉萵苣木)。繊維が緻密で割れにくい。ザラザラの葉はタワシの代用になる
池間サバニは糸満サバニよりも船尾船底形状が丸い。パフが入ると船尾を引きずるが、写真のように力強く走る。時には池間島まで2~3時間で渡ることもある。お尻が痛くなるそうだが(笑)

池本孝徳さん Takanori Ikemoto

20 代、宮古島でダイビングとヨットに明け暮れる。本土へ渡り、『ヨッティング』誌を経て『Kazi』誌の営業を務めて2013 年退社。宮古島へ戻り、海辺のスローライフを送る。大浦漁港のスロープにて。

海辺暮らしのこぼれ話

text by Takanori Ikemoto

15年ほど前に話を聞いた、ある漁協の元組合長。ご存命なら95歳。彼が13歳の頃、オジィに連れられてサバニで隣の島に芋を買いに行った時の話。冬の北風、船べりに腰を掛けて背中でスプレーを浴びながら追っ手で帆走。帰りは上り切れず、棹で押してホームポートに戻った、という。間切るという言葉はあるが、実際はタッキングの概念が無いように思う。私の場合も上りで稼ぐVMG(有効速度)をいとも簡単にシーカヤックが抜いていく。それもまたいい。

(文・写真=中村剛司/舵オンライン編集部) 

本記事は月間『Kazi』2026年2月号からの抜粋