宮古島で暮らす池本孝徳さん。日がな一日、沖縄の伝統和船「サバニ」に乗り、宮古島本島から池間島などを帆走し、漕走する。海辺で暮らす憧れの暮らしを紹介する連載「コースタルデイズ」。まずは、池本さんの暮らしを全5回でお届けします。



1 人乗りサバニと暮らす
私(筆者)が最も尊敬するセーラーのひとり、それが池本孝徳さん。海辺で暮らすライフスタイル連載を考えたとき、真っさきに浮かんだのが沖縄県の宮古島で暮らす池本さんだった。本記事では、いつもと同じく親しみを込めて「池さん」と書きます。池さんは舵オンラインを運営する舵社の元社員であり会社の先輩であったわけだがそれよりも前、私は舵社に入るずっと前から池さんのことを知っていた。江の島で一緒にヨットに乗っていた友人、池本 藍(あい)さん、碧(みどり)さん姉妹のお父さん、それが池さんだった。ヨットがうまくてスマートで博識。ヨットのことはなんでも池さんに聞いた。
そんな池さんが会社を早期リタイアして宮古島へ移住した。でも本人は「昔住んでいた宮古島へ帰ってきただけ」という。池さんの故郷は京都府の舞鶴市、由良川の河口。そう、北前船の船頭を多く輩出した船乗りの街だ。祖父も曽祖父も船乗りだった池さんは、ダイバーになって宮古島で青年期を過ごした。その後ヨット乗りとなり、都会で『ヨッティング』誌、『Kazi 』誌に携わるなかで、油壺や浦安でレースにのめり込んだ。そして58歳(当時)。早期退職してかつて暮らした宮古島へUターンしたのである。

荷川取移住の計画
池さんはなんと宮古島の荷川取(にかどり)の浜辺に土地を持つ予定で、いつかそこに家を建てて住むという話は、新橋の居酒屋でよく聞いていた。ただライフラインがない土地でプランは難航。現在は砂山ビーチの近くの素敵な別の一軒家に暮らしている。移住したばかりの池さんは、当時サメの監視員をしていて、仕事のあとに仲間とヨットで飲んでそのまま荷川取漁港の岸壁で寝てしまい、翌朝そのまま監視船に乗って仕事へ出るという感じで、私もずいぶんご一緒したがうらやましい暮らしだなと思った。現在、奥さま(ヨット乗り)も宮古島へやってきたので、そんなむちゃな毎日ではないようではある。そんな池さんが沖縄伝統の古式木造漁船、サバニを手に入れた。次女の碧さんからのプレゼントである。なんと親孝行なお嬢さんか。
碧さんは、父と何度か座間味島(ざまみじま)から那覇港を目指すサバニ帆漕(はんそう)レースに参戦していて、サバニに夢中なパパのために沖縄本島・名護(なご)で中古のサバニを見つけたのである。池間島出身で石垣島在住だった有名な船大工、故 新城(あらしろ)康弘さんの手によるこのサバニは1人乗り。池間島の方言で「たうかぬーい」という。1 人(たうか)で乗る(ぬーい)、ということだ。そんな池さんのサバニに乗せていただいた。
(次回へ続く)



池本孝徳さん Takanori Ikemoto
20 代、宮古島でダイビングとヨットに明け暮れる。本土へ渡り、『ヨッティング』誌を経て、『Kazi』誌を発行する舵社で営業を務めて2013 年退社。宮古島へ戻り、海辺のスローライフを送る。大浦漁港のスロープにて。
(文・写真=中村剛司/舵オンライン編集部)
本記事は月刊『Kazi』2026年2月号からの抜粋





















