可搬型ボート/安全なボートライフのために気をつけること

2021.06.02

船検・免許の要らないミニボートが普及する昨今。マリーナなどに置いている場合と違って、横のつながりができにくいうえ、免許講習のときに習うルールやメンテナンスのことを、きちんと知らない人も多いだろう。

しかし、ひとたび海に出れば、ほかのボートと同様に、船長である自分だけが頼りだし、各種定められた海上交通法規は適用される。"知らなかった"では済まされないので、知っておくべきだろう。
海上交通法規については、別の機会とし、今回は、ミニボートを含む可搬型ボートについて、安全に楽しむために気をつけたいことを、ベテランボーターに経験を元に語っていただく。

経験談を話していただくのは、アウトドアカメランの丸山 剛さん。トレーラー運用している辻堂加工エボシ375(9.9馬力)と、車載運用しているインフレータブルボート、アキレスLF-297IB(2馬力)の2艇を所有して、各地で釣りを楽しんできたベテランボーターだ。

以下は、月刊『ボート倶楽部』に掲載した記事を編集部で再編したもの。
先輩ボーターとして、可搬型のボートで安全に楽しむための秘訣を教えていただいた。

 


最多はエンジントラブル

ボートオーナーになって20年以上、その中でトラブルになったことは数知れず。その中でも最多は、やはりエンジントラブルだろう。
沖で止まってしまい、何度試してもエンジンがかからず、オールで手漕ぎして帰ってきたこともある。
スロットルレバーを回しても出力が上がらず、低回転のまま時間をかけて帰ったこともある。
燃料タンクのホースの接続部分に亀裂が入ってエアが入り、すぐにエンジンが止まってしまったこともある。
プロペラのブッシュが減って空回りしてしまい動かなくなったこともある。
長時間使わなかったのに、キャブレター内のガソリンを抜き忘れて、ノズルが詰まりエンジンがかからなかったこともある。
プロペラに釣りイトやゴミが絡まってエンジンをチルトアップさせ、身を乗り出して巻き付きを外したこともある。
もっと細かいことをいえば、それこそ数え切れないほどのトラブルに遭った。

 

エンジン関係のトラブルは、常日頃の点検とメンテナンス、調子が悪いと感じたら出艇しないことなどで対処できるはずだ。
プロペラへの巻き付きについては、すぐに気づくことができれば、わりと簡単に外すことができる。

また、インフレータブルボートでスローパンク状態になり、空気が減ってきたときに、足踏みポンプで切り抜けたこともある。
2馬力ボートでのガス欠などは、当たり前の話でトラブルには入らない。予備燃料を持っていれば海上で足すだけでいいのだから。燃料を足せないような海況ならば、すぐさま帰ろう。

2馬力ボートであっても、装備不備でのトラブルはないように気をつける必要がある。フラッグもその一つで、必ず掲げるようにしよう。それもできるだけ高い位置に。
高い位置に掲げておかなければ、波があるときに他船から発見されにくくなるということも知っておくべきである。

ほかにも、アンカーが海底から抜けなくなったこともある。この場合は、逆方向から引くなどして抜けることもあるが、軽い船体のボートで、エンジンの力で無理に抜こうとすると、浸水する可能性があるので、できるだけオールで漕いで行うこと。

さらには地元の漁船から文句を言われるようなトラブル。この場合は素直に漁師の言うことを聞けばいいだけの話である。

 

左:フラッグはできるだけ高い位置に必ず掲げる。それでも波やうねりがあるときに、他船から発見されにくくのなるのは、知っておくべきだ
右:燃料は出艇前に満タンしておくこと。燃料タンクは注ぎ口からでは燃料の量がわかりにくいことがあるので、船外機のカウルを外して、燃料タンクが目視できる状況で入れたほうがよい

 

出艇・帰着時もトラブルが多い

また、可搬艇の出艇場所は砂浜が多いが、遠浅の砂浜なら、乗船する際はドーリーが浮くまでボートを引いて行き、ドーリーを上げて乗船し、下船時は下ろしたドーリーが付いたら、降りてボートを引けばよい。

また、波打ち際がドン深になっているところは要注意だ。波が非常に立ちやすいので、出艇の際、ボートを押さえながら、腰まで海水に浸かった状態から乗船するなんてこともある。
こうした場所では、波のサイクルを読んで、波が引くときにボートを乗せて一気に押し出しながら乗船する必要がある。
帰着時は、あらかじめドーリーを下ろしておき、長い波に乗って一気に接岸させ、下船と同時にボートを引き上げること。波打ち際で、ボートが波に対して横になると、横転することが多々あるので、なにしろ真っすぐ進むこと。

波が高くなっているときは、エンジンを前進に入れたまま推進力で接岸させることもある。のちのエンジントラブルにつながるかもしれないが、第一に接岸させてしまうことが最重要である。
本当は、波打ち際の波が高くなる前に沖上がりすることがトラブル回避になることも覚えておこう。

 

砂浜からのエントリーは、できるだけ波の立たないところを選び、かつ、波のサイクルを読んで出艇する

 

出艇場所は遠浅の砂浜なら、乗船できるところまで、こうしてボートを引いていけばいいだけなので、問題ない

 

波打ち際すぐがドン深になっている砂浜は、出艇時に写真のように腰まで浸かることもある。夏場ならいいが、寒い季節はウェダーが必須だ

 

天候の急変が一番怖い

海上に出ているときは常に周りの状況確認を怠らず、風にも注意している必要がある。トラブルで一番怖いのは、なんといっても天候の急変であることは間違いない。

「こんな小さなボートで海に出て怖くないの?」とよく聞かれる。怖くないといえばウソになりそうだが、すべては海の状況次第。最初からうねりや白波が立っていて、風が強く吹いているならば、出艇はしない。というよりも、できないといったほうが正しい。

一番困るのは、出艇してから状況が変化したときだ。いまや天候の予想はさまざまな方法で入手することが可能になった。予報が外れることも多々あるが、天候の変わり具合などを事前にチェックしておくことで、心構えができるものである。

しかし、予期せぬほど早く、強烈に変化することがある。そんなときが厄介なのである。小生が以前遭遇したトラブル事例を紹介したい。

 

海に出たら、常に周囲の見張りを忘れずに。トラブルの多くは見張りで防げることもあるので、クセをつけておくこと

 

沖から出艇場所の状況を確認しておくことも大切。急いで陸に向かっている状況で、出艇場所に向かっているはずが、目的地を間違えていたなんてことになると、余計なタイムロスや新たな危険につながる

 

事例1:突然、風の壁にぶつかった

かつて、アカシヨットEK270に乗っていたとき、関西のプロショップ、リトルボート販売の田原 学社長と、福井県の上瀬から2艇で出艇したときのことだ。

港を出て、正面埼を回り込んで北にある毛島のポイントを目指した。風もなく穏やかな海で、全開に近いスピードで2艇は走っていた。快適なクルージングだった。

島が近くなってきたところで少し風が出てきたものの、目指す島は目の前。そのとき、先を走っていた田原さんのボートが急旋回して、小生をかわして来た方向に戻っていくではないか。数十秒後、小生は風の壁にぶつかった。強烈な北風と共に白波が襲ってきたので、慌てて急旋回して、田原さんの後を追う。

ところが船体が短く、幅のある小生のボートは、波を越えると底から落ちてしまう、波切りが悪く、スピードも出せない。それでも北風の中を南に向かうだけなので、ひと波ひと波、真っすぐ進んでいけばいずれは着くだろうと、走り続けた。

やがて正面埼の沖の馬立島まで来たところで、島影に回り込むと、田原さんがいた。「危機一髪やったなぁ~。戻ろうやって言う暇もなかったで」。

全体的に若狭湾は入り組んでいるので、こんな急な北風でもウネリを伴った波にならないので、白波が立ってもそれほど大変ではないようだった。それでもこのサイズのボートだと、かなり危険な状態だったことは確かである。

 

海が荒れてくると、漁具などの障害物が見つけにくくなる。十分な回避はもちろんのこと、むやみにショートカットなどはしないほうがいい。当然、波が高くなる前に帰るのが賢明だ

 

事例2:強風と高波に死をも意識した

相模湾では、SKTパーフェクター13に乗っていたときに、平島沖のオニカサゴポイントで東風から南西の風に変わった途端に強風になった。急きょ戻ったが、出艇場所である平塚新港まで斜めに走ることになり、ものすごい波の中、サーフィングの繰り返しで1時間半以上かけて戻った。後ろから崩れてくる波が船外機に打ち付けて、4回エンジンが止まり、心臓が止まるかと思った。

無事に港に戻ったときは、防波堤を超えて波しぶきが上がっていたくらいである。管理人からは「こんなになるまで、なにやってたんだ!!」と、大目玉をくらったのはいうまでもない。

こうしたトラブルで大切なことは、絶対に諦めないこと。とにかく冷静になり、たとえ牛歩のごとくでも波を確実に越えていく。それが死から生への転換となると感じた。

 

沖からの風に変わるときは要注意

天候へのトラブル対処法としては、天気の変わり具合など、事前にチェックしておくことで、心構えができる。
急天候への対処法としては、沖からの風に変わるときは吹き上がりやすいので注意する、といったことが挙げられる。

例えば、西向きの砂浜から出艇するとき、朝は北風で次第に西風に変わるという予報なら、北風に回り始めたら、風が上がっていなくてもすぐに戻るといった基本的なことだ。
出艇場所の近くまで戻っても風が上がっていなければ、その近くで釣りを再開すればいい。その場合も、少しでも強くなってきたら、すぐに帰着できるようにしておくべきだ。

太平洋沿岸では、南風、西風の吹き出しが早い。ほとんどの場合、沖は南方面になるため、急な吹き出しで戻るとき、波に追われて怖い思いをする。早めの判断は大切なのだ。

最後に、少し応用編だが、沖の漁船の動向や水平線の変化を見て天候の急変を察知するといった対処も覚えておきたい。

事前の天候チェックと天候急変への心構えが、安全な可搬型ボートライフにつながるのだと思う。

 

(文・写真=丸山 剛 まとめ=BoatCLUB編集部)

 


丸山 剛(まるやま・つよし)
ボート歴20年以上。本業は海、川、湖、山問わず活躍するアウトドアカメラマン。釣りはソルトのほか、渓流や湖水など、幅広く楽しむ。

 

※本記事は、『ボート倶楽部』2021年5月号の特集より抜粋。特集内には、ミニボートだけでなく、さまざまなトラブル対処法を紹介しているので、バックナンバー電子版最新刊も、ぜひご覧ください。

 


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