プレジャーボートの素材としては、やはり圧倒的にFRPが一般的。そんななかポリエチレンという素材を使うことで、圧倒的なコストパフォーマンスを実現した「シーストーム17」が日本に初上陸した。
輸入・販売元であるミズノマリンの協力を得て、今年5月に試乗取材を実施することができたので、この一風変わった魅力的なボートを紹介していきたい。
シーストーム(Seastorm)はノルウェー生まれのボートで(生産はエストニア)、2024年に発売が開始されたばかり。日本ではミズノマリンが輸入・販売をしており、今年のジャパン インターナショナル ボートショー 2025(パシフィコ横浜会場)で、その17ftのモデル「シーストーム17」を実際にご覧になった方も多いだろう。
シーストームの最大の特徴は、ポリエチレン製の船体。中でもシーストームに使われているのはHDPE(高密度ポリエチレン)と呼ばれるもので、引っ張り強度や耐衝撃性に強く、経年劣化しにくいという特徴を持っている。船外機艇の燃料タンクの素材としても一般的に使われているので、目にしたことがある方も多いだろう。ボートの場合は金型に入れて回転して成型する方法が主流。また、素材としては、基本的に二次接着や塗装ができないという特徴がある。
カヤックや小型可搬艇などにも使われており、FRPのように“割れる”“ヒビが入る”という心配が少なくて済むので、少々乱暴に扱っても大丈夫。ビーチリゾートでレンタルされるような、カヤックやディンギーヨットに多く使われているというのもうなずける話だ。
これまでポリエチレン製のボートというと、カラフルでどこか安っぽいイメージもあったが、このシーストーム17は現代的なデザインも秀逸。軽さも特徴で、艇体重量はわずか380kgにすぎない。
取材艇のエンジンはスズキDF60(60馬力)。二人乗船しての取材時の最高速度は29ノット弱だった。なお最大で80馬力の船外機を搭載可能で、その場合の最高速度は33ノット強とのこと。
真上から見たところ。センターコンソール仕様で、後部に2人掛けのシートのほか、コンソール前にもシートを配置。意外とも思えるほど広い船上空間を実現している。
スポーツカーを操縦しているかのような軽快なフィーリングを実現。乗っていて楽しいボートだ。
コンソールももちろんポリエチレン製。ステアリングはフネの中心船上に配置されている。
コンソールの前にもシートが設けられている。両サイドの舷側にはフラットバーを使ったハンドレールが設置されていて、使い勝手がいい。
船首にはアンカーや係留ロープ、遊び道具などをしまっておくことのできるスペースがある。サイズが大きいので、いろいろと使い道がありそうだ。
後部のシート下には、右舷側(写真手前)にバッテリー、左舷側に燃料タンクが収納されている。ちなみに赤い燃料タンクの素材はポリエチレンだ。
現代的なデザインも特徴の一つ。船底には2条のストレーキ、その上にダブルチャインが入る。
取材艇の船体カラーはホワイト。これ以外に、ライトグレー、ダークグレー、グリーン、ライムグリーン、レッド、イエローと、バラエティーに富んだカラーの中からお気に入りを選ぶことができるようになっている。
ご覧の通り、扱いやすく頑丈なポリエチレン製の船体だから、ビーチングだってお手のものだ。こちらの船体色はダークグレーだが、ホワイトとはまた違う雰囲気に仕上がっている。
photo by Seastorm Boats
「コストパフォーマンス抜群」と述べたが、気になる国内での販売価格は2,490,000円(エンジン別。2025年8月末現在)。円安のみならず物価の上昇の影響もあって、一昔前では考えられないくらいにボートの価格は全体的に高くなっている。そんななかで、この価格は注目に値するものだといえるだろう。
ボート遊びをこれからスタートしたい、近場の海で一人で釣りをしたい・・・といったユーザーをはじめ、いろいろな使い方ができるシーストーム17。コストパフォーマンス抜群の新世代のポリエチレンボートといえそうだ。
(文=舵社/安藤 健 写真=松本和久)
YouTubeチャンネル「Kazi Movie」|シーストーム17の解説動画も是非ご覧ください
SEASTORM 17
●全長:5.18m
●全幅:2.20m
●船体重量:380kg(エンジン除く)
●エンジン:スズキDF60(最大80馬力まで搭載可)
●価格:2,490,000円(エンジン別。2025年8月末現在)
(問い合わせ)
ミズノマリン
TEL: 06-6863-5233
https://www.mizuno-marine.co.jp/