1947年の創業以来、一貫して補聴器の研究開発を行い、難聴で悩む人々の不便さを改善してきたフォナック(*)。
昨年11月に発表されたフォナックの新製品「インフィニオ」には、全方向からの言葉の聞き取りを向上させたり、防水性を高めるなど、革新的な技術が詰め込まれ、ヨットやボートをはじめとするマリンスポーツとの親和性も非常に高い。
文=深沢洋二 写真=落合明人(Kazi)
取材協力=東京ヨットクラブ、東京夢の島マリーナ
Sea Dream編集長/Kazi元編集長の田久保雅己(中央)がフォナックの最新補聴器「インフィニオ スフィア」を装着して“聞こえ”を実感。その体験記を後編にてお届けします
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日本人の難聴者率は10%といわれ、75歳以上になるとその割合は30%を超えるという。高齢化が進んでいる私たちヨット・ボート乗りにとって、難聴はけっして他人事ではないはずだが、一般的には「耳が聞こえにくい」ということを他人に悟られたくないという意識があり、自ら聴覚検査に行くなどの行動を起こさないのが現実だろう。
しかしながら、難聴は日常生活において不自由なだけでなく、陸上では交通事故につながったり、海上では船の運航に支障をきたすこともある。また、難聴は認知症の遠因になることも医学的に解明されているという。
視力が落ちたらメガネやコンタクトレンズ、歯がなくなれば義歯やインプラント、などと同様に、日々の暮らしに支障が出たときにそれを補う対処法として、「難聴になったら補聴器を着ける」ことは、機器が進化した現代では当然の流れとして素直に受け入れるべきではなかろうか。
日本人の難聴者率 出典:(一社)日本補聴器工業会が主体となって行った「JapanTrak 2022」調査報告
フォナックの最新補聴器「インフィニオ」は、周囲の人が気づかないほど小さく、軽く、装着感もない。従来のものは聞き取り範囲が限定的だったが全方位に改善され、AI機能内蔵のため状況によって重要な音を聞き分け調整してくれる。そして、われわれ船乗りにとっては何よりも嬉しい進化、IP68(防塵・防水の国際保護等級で「継続的な水没に対する耐性」)を超える防水・防汗性能「ウォーターブロック」が備わった。
アメリカズカップの覇者エミレーツ・チーム・ニュージーランドへ、ソノヴァの補聴援助システム「ロジャー」が公式に提供されていたり、難聴のカヤック競技オリンピック代表、アーロン・スモール選手(アメリカ)がブランドアンバサダーとしてフォナック補聴器を装用していることもうなずける。どちらも水面上で激しく競い合う競技ゆえ、防水・防汗は必須なのだ。
「インフィニオ」を着けると全方位からの声がよりはっきりと聞こえ、キャビンでの会話も弾む
2017年に英領バミューダ諸島で開催された第35回アメリカズカップで勝利したエミレーツ・チーム・ニュージーランド。洋上を飛ぶように走る高速での闘い。風の音や雑音をおさえたワイヤレス通信機能と防水性を備えたフォナックのロジャーシステムによるクリアな会話が、同チームの勝利を支えた
photo by Tsuyoshi Nakamura (Kazi)
https://www.phonak.com/ja-jp/hearing-devices/hearing-aids/audeo-sphere
専用のディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)チップを搭載(世界初:2024年8月時点)/あらゆる方向からの言葉の聞き取りを向上/迅速なユニバーサル接続性で瞬時に対応。
●使用電池:リチウムイオン(充電式)
●期待動作時間:18 時間
●ロジャーダイレクト対応
●適応聴力:難聴程度 軽~重度
●カラー:4色(2025年3月時点)
●価格:片耳512,000円~(機能によって異なる)
AI機能まで搭載されている、小さく、軽い補聴器「インフィニオ スフィア」
https://www.phonak.com/ja-jp/hearing-devices/microphones
インフィニオ スフィアなどの補聴器を装着している人にワイヤレスで音声を届けることができるマイク。騒がしい場所や最大25m離れた場所からの聞こえをサポート。携帯型のほかに卓上型のマイクもある。
[ロジャー オン 3]
●3時間充電で約8時間使用可能
●使用可能距離:最大約25m
●幅24mm×長さ100mm×高さ14mm
●重さ27g
●価格:209,000円(税込)
首にぶら下げるタイプのロジャーのマイク。デッキ上の作業をしながらクルー同士が、クリアな音声で会話できる
この記事は月刊『Kazi』2025年4月号に掲載された「世界をリードするスイス製補聴器PHONAK」を再編集したものです。