銀河帆走の夜 ・・・ナイトクルージングへ

2023.11.09

 

夜空に広がる満天の星、昼間のように海面を照らす月の道。

夜光虫の青い揺らめき、すべてを飲み込む曇天新月の漆黒。

セーラーの心を魅了する夜間航海=ナイトクルージング。

子どものころに夢中で読んだ『銀河鉄道の夜』になぞらえ、闇夜を進む、あなた自身の冒険が始まります。

銀河ステーションから、白鳥座、プリシオン海岸、そして南十字星をまわったジョバンニとカムパネルラのように きらめく星々の海へ、銀河帆走へ出かけましょう。 

 

月刊『Kazi 10月号(2023年)』に掲載した記事を無料公開します。

メインカット | photo by Shigehiko Yamagishi | Kazi | 沖縄県多良間島(たらまじま)の前泊港に広がる満天の星。夏の夜の成層圏、その先の銀河を思う 

 

 

東京夢の島マリーナを出港した、蜂谷 貴オーナーの〈メテオールVII〉(岡崎361デッキサルーン)。夜の東京湾を南下する 

 

 

〈メテオールVII〉(オカザキ361デッキサルーン)。国内2 号艇。コーミングスターン部で切れ、サイドデッキからコクピットへバリアフリーになった画期的な1艇。セルフタッキングジブのレールは未使用、シングルラットを採用 

 

 

レイマリンのレーダーアンテナ。本機から5mほどの高さに設置。マストヘッドだと電波が届きずらい

 

 

航海計器がもたらす 優雅で神秘的な夜間航海

神秘的で幻想的な夜間航海に長けたオーナーさんはいないものだろうか、岡崎造船の須加田裕司さんに尋ねた。

「AISやレーダーを完備され、安全に夜間航海をされている方がいますよ。ただ、きっと私へのいじりが出ると思いますが、ほどほどにとお伝えください。毛が抜けちゃいますから(笑)」(須加田さん)とやってきた東京夢の島マリーナ。オカザキ361デッキサルーンの国内2号艇オーナーである、蜂谷 貴さん。AISにGPSプロッター、25W国際VHFはもちろん、レーダーを完備し夜間航海を含めたクルージングを楽しんでいらっしゃった。 

「ナイトが特別に好きってことではなくて、航海計画において必要だから夜間航海をしてるだけです(笑)。もちろん、嫌いではない。夜の海はすてきですよね。星がきれいじゃないですか。夜光虫もね」 

蜂谷さんがヨットを始めたのは小学生時代。浜名湖のヤマハマリーナに置いた父のキールボートでヨットを覚えた。 

「OP級やA級ディンギーにも乗りましたが、父のクルーザーでヨットを学びました。10年ほど前に自分の船をと思い、国産艇にこだわって岡崎造船を訪ねました」 

岡崎361デッキサルーンの図面を見て建造を依頼。4年ほど前に進水したのがこの〈メテオールVII〉。建造中は中古のパイオニア9に乗った。 

「オートパイロットがレイマリンだったんです。航海計器も国産にと思いましたが、AIS、GPSプロッター、レーダーを1画面で見るにはレイマリンが都合がよくて選択しました」 

デッキサルーンのヘルムステーションに設置されたモニターにはそれらの計器が統合表示され、実に使いやすそうだった。AISは他船が近づくとアラームが鳴る設定にしている。レーダーも同様にアラーム設定が可能で、これはシングルでの夜間航海で実に活躍するという。 

「AISを受信する人は多いけど、発信する人はまだ少ない。仲間内では増えていますが、やはり自船の状況は他船に知ってもらったほうが安全性は高まります。大型商船はAISで見られますが、未発信のヨットは確認できない。なのでレーダーを併用して他船の動きを確認しています」 

 

 

デッキサルーン(メインキャビン)のヘルムステーションで、レーダー、AIS、GPSプロッター、オートパイロットなどの統合データを見る。1画面で取りまわすことを考えレイマリンを選択した 

 

 

東京湾の夜景クルーズ

都会ならではの夜景スポット。日中とは違った顔を楽しもう 

横浜ベイブリッジ

横浜港入り口の大橋。1980年代からの有名デートスポット 

 

 

東京ゲートブリッジ

2頭の恐竜に見えることから「恐竜橋」とも呼ばれる人気の橋 

 

 

ダイヤと花の大観覧車

葛西臨海公園の観覧車。その光は夜間のランドマークにも

 

 

夏の夜に幻想的に光る夜光虫のブルー。大阪湾を南下する帆船〈みらいへ〉の艇上、友ヶ島水道にて 

 

 

安全意識の重要性

船検の航行区域は沿海区域を取得。普段は千葉県の保田漁港や神奈川県の三浦半島の三崎港へ行くが、三宅島など伊豆諸島にも足を延ばすこともある。その際、夜間航海では落水に最も注意しているという。ハーネステザーラインはもちろん、これからは仲間へのPLB(携帯型個人用遭難信号発信機)の所持義務を検討している。 

「このフネが完成して小豆島から東京湾へ回航したとき、春一番が吹きましてね。風速20 ~24m/sくらい。普段はおちゃらけてますけど、須加田さんも一緒に乗ってくれました。そのとき、航海計器や個人装備、そして自分のシーマンシップも大切ですが、艇への信頼が重要だなと思いました。自分が納得するフネを選ぶことが」 

 現在のベースである東京湾は日本有数の輻輳(ふくそう)海域である。そこを夜間航海するには、さまざまな準備が必要である、ということだ。夜間航海への不安は、まずは航海計器や個人装備の準備、経験、そして信頼できるフネによって払拭できる。 

「次は岡崎の40フィートを建造して、小豆島の岡崎造船がある琴塚に置きたいと思っています。須加田さんはごにょごにょいってますが(笑)。私は最終的にはヨットで海上生活したいなと思っています。40フィートなら5 ~6 人は船泊できますよね。小豆島から瀬戸内海をクルージング。もちろん夜間航海も最高でしょう」 

蜂谷さんが描く船上生活と瀬戸内海でのクルージング。それはきっと、満天の星の下を航く、ロマンチックな航海に違いない。 

 


 

航海灯の話

日没から日出までの時間=夜間は海上衝突予防法により船舶の灯火表示が義務付けられている。航海灯の見え方によってどのような船舶がどちらに向かって航行しているかが判別できる。自船の航海灯を点灯することで他船へそれを知らせると同時に、他船の動向を知ることは、夜間航海ではとても重要な要素。正しい知識で安全なナイトクルージングを楽しもう。 

 

 

大型商船(コンテナ)の航海灯の見え方。左舷灯(赤)が見えるので進行方向は左。前部マスト灯(白)、後部マスト灯(白)によって全長50m以上の大型船であることが分かる 

 

 

上写真のフネを露出などを変えて撮影。ナイトスコープがあればこれ以上の視認も可能。また、貨客船などでは、自身の船内灯などの灯りも多数見えてしまう。誤認しないよう注意しよう 

 

 

機走中のヨット(帆船)の航海灯の見え方

12m未満のヨットが機走しているところ。マスト灯によって機走であることが分かり、両舷灯の色で進行方向が分かる 

 


 

東京夢の島マリーナに帰港した〈メテオールVII〉。ビル群が海面に美しく映る。都会のナイトセーリングも風情がある 

 

 

ナイトの終焉、それは夜明け。幻想的な夜の世界の終わりは、心さみしさと安堵が入り混じる 

 

 

多良間島の星空。あなたも、満天の星を目指して、ナイトクルージングに出航しよう。そこには、あなただけの銀河帆走の夜が待っている。

 

 

(文=中村剛司/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社)

※関連記事は、月刊『Kazi』2023年10月号に掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ 

 

 

蜂谷 貴さん

Takashi Hachiya 

父のヨット、ヤマハ15、エクメドール、リベッチオなどに小学生時代から乗り、ヨット歴50年以上。岡崎361デッキサルーンの図面を見て即オーダー。東京夢の島マリーナをベースに、三崎や三宅島などへのクルージングを楽しんでいる 

 

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