海を渡るアイデンティティー。セーラーと時計=クロノメーター、その深き絆

2024.03.13

船乗りたちは世界を自由に巡るため、「時計=クロノメーター(航海用精密時計)」を求めた。

ロレックスの『ヨットマスター』やコルムの『アドミラル』シリーズなど、高級時計ブランドが世に送るクロノメーターは、GPSで自船の位置を知り、携帯電話で正確な時間を確認することができる現代でも、海を渡るアイデンティティーとして根強い人気を博している。

時計の専門家である、宝石広場渋谷本店の高橋剛史さんに、高級時計のブランドとセーラーの関係について、その伝統やストーリーを交えてお話しいただいた。 

 

メインカット | photo by Kazushige Mori | ジョン・ハリスンが1735年に初めて生み出した、重さ34kgのクロノメーター(航海用精密時計)から実に289年。現代の航海用マリンスポーツウオッチは、かくも洗練され、ファッションとステイタスの一部へと昇華した 

 

宝石広場/高橋剛史さんインタビュー

高橋剛史さん  Tsuyoshi Takahashi

1963年創業の時計&ジュエリー専門店、宝石広場に勤めて7年目となる高橋剛史さん。祖父から受け継いだ高級時計の思い出から、時計の奥深さに魅せられ時計業界へ。マリンスポーツモデルへの造詣が深い(宝石広場/ https://housekihiroba.jp/shop/) 

 

 

――高級時計ブランドがヨットレースのスポンサーであったり、レースそのものを主催するケースがありますが、これはどういった理由からなのでしょうか。 

高橋剛史さん(以下、高橋さん)「もともと、時計自体がヨーロッパの貴族の間で高級なコレクション品として扱われており、優雅さだけでなくその性能、堅牢さを示すために各社さまざまなモデルが開発されてきました。海外ではセーリングヨットやモーターヨットを所有する方も多いので、船の逸話やブランドの時計作りのストーリー自体が宣伝となって、海や船と密接に関係しながらブランドイメージを作り上げてきたところがあると思います」 

 

■ROLEX YACHT MASTER II

116680 ヨットマスターII /ロレックス PANERAI LUMINOR Rattrapante

プロセーラーからのフィードバックが存分に組み込まれたヨットタイマー。レガッタカウントダウン機能で、スマートなスタートを。ジョン・ハリスンが発明したクロノメーター、その現代の代表作のひとつだ 

 

 

――なるほど、ロレックスなどが有名ですよね。

高橋さん「各ブランドで、スポーツモデルとしてダイバーズウオッチなど海を意識したモデルは販売されていますが、有名なところでいえばやはりロレックスでしょうね。映画『007』シリーズの中でジェームズ・ボンドがスーツ姿に堅牢なダイバーズモデルを着用するというスタイルが人気となりました。今でも細身のスーツにご自身のステイタスを表すものとして、堅牢な作りである海を意識したスポーツモデルを着用することが一つのスタイルとなっています。 

ロレックスには、『ヨットマスター』、『ヨットマスターII』といったまさに王道の人気モデルがあります。『ヨットマスター』は優雅でシンプルなスタイルですが、『ヨットマスターII』は、カウントダウン式のクロノグラフが搭載されたりと、よりフィールドでの使用を意識したモデルになっています。 

ほかにも、ヨットの外洋レースであるアドミラルズカップの名前を冠した、コルムの『アドミラル レジェンド32』は、船で使用する国際信号旗を文字盤に配するなど、まさに海を感じることができるモデルになっています。 

また、航海用の精密時計であるクロノメーターを製作していたユリス・ナルダンでは、当時船舶用として採用していたクロノメーターを腕時計に再現したモデルを展開しています」 

 

■ULYSSE NARDIN Maxi Marine Chronometer 43

263-67-7M/40 マキシマリーンクロノメーター43/ユリス・ナルダン

第35回アメリカズカップ、アルテミスレーシングをスポンサードしたユリス・ナルダン。日本海軍旗艦〈三笠〉にも搭載された、クロノメーターの老舗である 

 

 

――これは素敵ですね。どれもストーリーがあり、まさにセーラーのアイデンティティーとして身につけたくなるものばかりです。やはり現代の時計ブランドも、海や船を意識したものを作り続けているのですね。 

高橋さん「ダイバーズウオッチをはじめとしたマリン系ウオッチは、腕時計ではもはや定番となっています。最近では、ロレックスの『ヨットマスター42』が新たにチタンを素材として使用し大きくモデルチェンジした時、そのプロトタイプのテストをしたのがアメリカズカップのスキッパーであるサー・ベン・エインズリー氏だったそうです。

やはり海という過酷なフィールドでの使用に耐えるということは現代の時計ブランドにとって、自社の技術を証明する重要な位置を占めているものなのだと感じています」 

 

――現代でも自ら深く海と関係することで、技術とそのブランドを維持しているのですね。ありがとうございました。 

 

■PANERAI LUMINOR Rattrapante

PAM00362 ルミノール1950 ラトラパンテ/パネライ

フィレンツェを発祥とするオフィチーネ・パネライ。セーラーにファンの多い、クロノメーターのひとつである。クロノグラフ針と秒針のブルーが、さわやかな地中海の海を思わせる 

 

■CORUM ADMIRAL Legend 32 

A400/03177 アドミラル レジェンド32/コルム

国際信号旗の数字旗を文字盤に配した、セーラーなら知らぬ人はいないであろう人気モデル。英国のオーシャンレース、アドミラルズカップの名を冠する名品 

 

本記事は、『Kazi』2024年2月号に掲載された

山本 海さんが執筆した「時を計る船乗り」の記事から抜粋したものです。

 

(文=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=森カズシゲ)

 

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山本 海       

Kai Yamamoto

セイルトレーニング帆船〈海星〉に甲板員として勤務した後、世界各地の帆船5隻にクルーとして乗船。タンカーでの航海士を経て、帆船〈みらいへ〉の航海 士へ。2015 年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ヨット、帆船を使用した海洋レクリエーション活動を行う。ISPA公認スクールを開講。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。 

https://spiritofsailors.com/

 

 


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