学びながら航く/長崎・五島列島クルージング③

2021.03.20

リタイア後に、のんびりと日本各地の島々をフネで訪れる。そんな憧れのヨットライフを送っているのは田中 洋さん(71歳・取材時)。

千葉県在住ながら、長崎県の九十九島パールシーマリーナに愛艇〈Yukikaze〉を置いて、定期的に長期滞在してクルージングを楽しんでいる。

ベテランセーラーの知識を学びながら、九十九島から五島列島に向かう旅に同乗した模様を、3回に分けてお届けしています。田中さんのヨットライフを紹介した1回目遠隔地にフネを置く事情などを紹介した2回目に続き、今回は最終回の3回目となります。

 

今回の取材で同行したコース。複雑な海岸線の島々が並ぶ九十九島から五島列島は、日本有数のクルージングゲレンデ。

 

■世界遺産のある五島列島へ

次に訪れたのは、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の集落がある黒島。雲行きがあやしくなってきたため、ここでドジャーに加えてビミニトップをセット、五島列島への20マイル強の海峡横断に備える。

 

世界遺産の構成資産がある黒島に寄港。雰囲気のいい広々とした港だった。

 

針路を西に取り、約3時間で海峡を越え、五島列島に到着した。まずは、田中さんが以前から視察したかったという頭ヶ島の岸壁の様子を確認。この頭ヶ島の天主堂(教会)を中心とする集落も、前述の世界遺産の構成資産となっている。

その集落の目の前にある防波堤の内側に、ヨットを一時係留できるか、以前から検証してみたかったと田中さんは話す。無数にある島々と入り江から、新たな係留場所やアンカリングスポットを探すのも、多島海とリアス式海岸の楽しみなのかもしれない。

 

世界遺産の構成資産「頭ヶ島の集落」の沖に到着。この集落は陸からのアクセスが非常に悪いため、隠れキリシタンの絶好の居住地となった。

 

世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「頭ヶ島の集落」にある石造りの頭ヶ島天主堂(1917年に完成)。

頭ヶ島の岸壁近くは残念ながら水深が不十分で、係留は断念。この日の最終目的地である中通島の有川港へ向かう。

 

この日の最終目的地、五島列島の中通島の中心地、有川港。過去には捕鯨基地としても栄えた。有川港では観光船が使用する浮桟橋に仮係留した後に、漁港事務所を訪ねると、幸いにも別の大きな浮桟橋への係留を指示された。

 

漁協に係留場所として指示されたのは、25mもある大きな浮桟橋。最終的にずぶ濡れになってしまったこの日は、有川港の近くの居酒屋が経営する民宿に宿泊。地魚の刺し身や五島うどんを堪能した。

 

有川港で堪能した五島列島グルメ。豊富な地魚に、ツルツルの「五島うどん」、そしてクジラカツ。どれも美味。

 


〈Yukikaze〉のクルージング流儀④
■田中さん自作のアイデアグッズたち

 

槍着けアンカー準備セット。槍着け係留時にアンカーとチェーン、ロープなどを準備しておくセット。スイミングステップに設置した板のクリートにアンカーを設置でき、ロープも仮止めできる。

 

岸壁の係留リング引っ掛け棒。こちらも槍着け着岸時に使用。先端の金属フックと、岸壁にあるリングに届くための棒、そして手元側はフネにクリートするためのロープにつながっている。

 

ホースに通すだけリング。係留具がビットやボラードの場合、着岸時に1本目の係留ロープを、フネから降りずに固定するためのロープ。ホースに通して輪を作っただけのものだが、ボートフックを使えば、ご覧の通り。

 


(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)

 

※この内容は月刊『Kazi』2019年7月号に掲載された記事をベースに再構成したものです。この号の特集は「ベテランたちのクルージング流儀」と題し、田中さんをはじめとする熟練セーラーたちのクルージングに同行。真似したくなるノウハウやアイデアを多く紹介しています。ご興味のある方は、バックナンバーもお求めいただけます。

 

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●「学びながら航く/長崎・五島列島クルージング①」はコチラ

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