【フネのDIY術】/FRP② 施工に必要な道具って?

2020.11.24

月刊『BoatCLUB』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝え中。今回は、2019年5月号に掲載した、「必要な道具ってなに?」から内容を抜粋して、FRPに関する情報をお届けします。

 

これらが東京ボートでFRP施工を行うときに使う、基本的な道具と材料。手前左から、トップコート、ポリエステルパテ、硬化剤、離型剤、ガラス繊維。左奥の白い箱にはローラー類やアセトンなどが入っており、中央奥の一斗缶はポリエステル樹脂だ。トップコートやパテに関しては、次回以降に解説する

 

前回、FRPを構成する基本的な素材(繊維、樹脂、硬化剤)について説明した。今回は、それらの材料を用いるときに必要な道具類について触れたいと思う。道具は、平板なFRPを作ると仮定して、その順序に従って紹介していく。

平板なFRPを作るのに、まず必要となるのは、型となる平らな「板」だ。樹脂は粘度の高い液体で、繊維は薄いシート状のものなので、それらだけで平らで、表面がつるつるとした板状のFRPを成形することはできない。

「うちで作ったFRPの板をちょっと見てください。片方の面は繊維の分だけ表面がざらざらしていますが、もう片方の面はつるつるしているんです。なぜかというと、つるつるの板の上で作ったから。ぼくらは、一番つるつるの板というとガラス板じゃないかと思っているので、ガラス板の上でFRPを積層していき、剥がしてみると、そのガラス板と接していた方の面も同じようにつるつるになるんです。こうすれば、簡単に表面がつるつるの、平らなFRPの板を作ることができます」(サービス部長の伊藤幸洋さん) 

 

FRPの板を作る際、ガラス板を型にすることで、仕上げの面をつるつるにすることができる。通常、つるつるになった面を表とする。写真の通り
上:裏面。ガラス繊維が浮き出てざらざらとしている
下:表面。少し傷がついているが、つるつるだ

 

板状のFRPは、ちょっとした工作をする際に便利であるのと同時に、FRP施工の練習にもなるという。FRP施工未経験者は、まずはきれいなFRPの板が作れるようになることを目標としてみるといいだろう。

さて、ガラス板に、硬化剤を交ぜた樹脂を塗り、そこにシート状の繊維を重ねていくのだが、その前に樹脂と硬化剤を交ぜるための「容器」と、硬化剤を正確な量だけ添加するための「スポイト」があると便利だ。また、適当な大きさにガラス繊維のシートを切るための、「裁ちばさみ」も準備しよう。

ガラス繊維は、切ったり動かしたりすると、塵のように細かくなった繊維が宙に舞う。ガラス繊維が皮膚に付着したり、目に入ったりすれば、強いかゆみや痛みを感じるため、作業時には、「防護服」や「ゴーグル」、「マスク」、ゴム製の「手袋」などの着用が必須となる。

さて、樹脂を塗るときに使うのは、樹脂が染み込んで塗りやすい「ウールローラー」だ。ウールローラーでガラス板に樹脂を塗り、そこに繊維を乗せて、再度樹脂を塗り込む。この作業を繰り返して層を増やして強度を調整していくが、その際にどうしても空気がシートの内側に入ってしまうので、それらを「脱泡ローラー」で抜いていく。内部に気泡が残ったままだと強度は格段に落ちてしまうため、専用のアイテムを使って、ていねいな作業を心がけたい。

 

ポリエステル樹脂を塗りつけるためのウールローラー。刷毛を使ってもいいが、ローラーのほうが仕上がりがきれい

 

入り込んだ気泡を抜くための脱泡ローラー。脱泡は、しっかりとていねいに、確実に行う必要がある

 

また、樹脂を塗るのに使用したローラー類は、使用後、そのまま放置すると樹脂が固着してしまう。使った道具は、「アセトン」などの洗浄用の溶剤を使用してきれいにしよう。

順番が前後したが、ガラス板からFRPの板をきれいに剥がすために、あらかじめガラス板に塗布する「離型剤」も重要なアイテムだ。

以上の道具があれば、とりあえず、FRPの板を作ることは可能となる。

 

板を作るのではなく、割れた船体の補修などであれば、ポリエステルパテ(粘度の高い樹脂)を塗るための「ヘラ」やパテの仕上げに使う「耐水のサンドペーパー」、塗装用の「刷毛」や「スプレーガン」、FRPの切断や研削に使う「ディスクグラインダー(サンダー)」なども必要だ。もちろん、代用品を用いてもいいが、専用のアイテムを使うことで効率よく作業を進められたり、仕上がりがきれいになるなどのメリットがある。

 

FRPを切ったり削ったりするのに活躍するディスクグラインダー。補修時には必須のアイテムだ

 

最後に、作業する場所としては、樹脂が固まりやすいように直射日光の当たらない場所を選び、換気や火気には十分注意しよう。ある程度の知識さえあれば誰でも加工することができるFRPだが、危険物を扱っているという意識を忘れてはいけない。

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2019年5月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
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