【フネのDIY術】/トリセツ読んだことある?

2022.01.18

月刊『ボート倶楽部』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝え中。今回は、2020年6月号に掲載した、「取扱説明書 トリセツ読んだことある?」から内容を抜粋してお届けします。

 


トリセツを読もう

本連載のタイトルにもなっているDIYだが、これは「自分でする」という意味の「Do It Yourself」の略語。通常、ボートに関してこの言葉を聞くと、これまでにやってきたようなFRPの積層や船体の磨き、内装・外装などを思い浮かべるが、愛艇についての理解を深めることも、大切なDIYの一つといえるだろう。わかりやすくいえば、愛艇の”健康状態“を、マリーナスタッフや整備士に委ねるのではなく、オーナー自身もきちんと把握しておこうよ、そして、そのためには愛艇のことをもっとよく知らないとね、ということだ。

愛艇やエンジンについて事細かに書かれた資料としては、取扱説明書(トリセツ)が挙げられる。国産艇の場合、艇を新しく購入したときについてくる。中古艇の場合は、ビルダーによっては、別途購入することができ、輸入艇に関しては、外国語で記載されているものが多いだろう。

この取扱説明書だが、「いったいどれくらいの人が、きちんと目を通しているんでしょうか」と東京ボートのサービス部長、伊藤幸洋さんは言う。

「取扱説明書には、意外と重要なことが書かれているんです。消耗品の交換のタイミングや点検の頻度、長期保管時の手入れや緊急時の処置の方法など。実際に見てみると、『交換時期ってこんなに早いんだ』と思うようなこともあります。メーカーとしては、『安全に使える期間ですよ』っていう意味で書いているんでしょうけど。実際、取扱説明書に書いてあるような正しい方法で使用していなかったために、保証対象外となったというケースも聞いたことがあります」

 

東京ボートが所有するボートやエンジンの取扱説明書の一部。分厚くて、難しい表現が並んでいるのかと思いきや、そんなことはない。この機会に、ぜひお手持ちのトリセツを見直してみてはいかがだろうか

 

交換が必要な排気ホース。取扱説明書を見ながら点検してみて、これくらいの亀裂が入っているなら交換が必要だ

 

船体の取扱説明書

さて、具体的に、取扱説明書にはどんなことが書かれているのだろうか。東京ボートが所有する、ヤマハSR-Xの取扱説明書を例に見ていきたいと思う。

まず、ヤマハSR-Xの取扱説明書には、「共通編」と「艇別編」がある。

共通編は、船長の心得として、船長が守るべき順守事項や天気予報の確認、出航前の点検、海上ルールなど、ボート免許取得時に学ぶような基本的な内容から始まる。その後、操船方法、船体の手入れ、法に関すること、緊急時の対処法――衝突や乗り揚げ時のチェック箇所、落水者の救助方法など――と続いていく。

最後に、トラブルシューティングがあるが、これは緊急時の事故対処法ともいえる内容だ。このページには、「いつもと調子が違う」、「どこかで異常な音や振動が出ている」、「変なにおいがする」などのときに、故障の様子をチェックしたり、簡単に処置をする方法が記されている。こうした異変は、普段から愛艇の〝健康状態?を意識しているからこそわかるもの。故障の前兆の段階で気づくことができれば、重大な事故につながる前に、自分で対処したり、整備士にメンテを依頼することができるだろう。

艇別編を見てみると、まず、航行前後の点検について書かれており、電装関係の点検要領、燃料関係、排水関係が続く。これらには、「バッテリー本体が確実に固定されているか」、「燃料フィルターにはゴミがたまっていないか」、「排水口にゴミが詰まっていないか」といった、安全に航行するうえで大切な、しかし、ややもすれば怠りがちな、点検項目について記されているので、ぜひ一度チェックしておきたい。

 

左が新品のインペラで、右が交換が必要なインペラ。冷却水ポンプのインペラの交換は自分で行うのはなかなか難しいが、交換時期を知っていれば、適切なタイミングで交換依頼ができる

 

主機の取扱説明書

取扱説明書には、当然、主機に関するものもある。編集部が見た、ヤンマー製エンジンの定期点検一覧表には、50時間ごと、250時間ごと、500時間ごとなどと、駆動時間ごとに実施すべき点検内容が記されている。

例えば、エンジンオイル交換の初回は50時間で、オルタネーターVベルトの点検は250時間ごと、海水ポンプインペラの点検は1000時間、または1年ごと(販売店に相談)、といった具合だ。

こうした点検時期の目安は、取扱説明書にも明記されている通り、用途や負荷の状態、使用燃料や潤滑油の品質、取り扱い状態などで異なる。

とはいえ、一つの基準となるはずだし、駆動時間ごとに点検箇所を意識することで、愛艇を気にかけるきっかけにもなるはずだ。

ボートに限らず、取扱説明書は一切読まないという人もいるだろう。そもそも、えっ、ボートにもトリセツってあるの? と、ここで初めて知った人もいるかもしれない。そうした人でも、一度、パラパラとめくるだけでも構わないので、取扱説明書に目を通してみてほしい。

ちなみに、ここで紹介したのは、取扱説明書に記載されている内容のほんの一部にすぎない。書棚の奥深くに入れられた取扱説明書を引っ張り出して読んでみれば、「こんなことまで記載されているんだ」、「へー、イラストが入っていて結構読みやすいね」など、新たな発見があるかもしれませんよ。

 

船外機のステアリングの油圧ホースにも、当然、交換時期の目安があるが、これらは見逃されることが多い。写真のようにコルゲートチューブなどを巻いて、紫外線から保護すれば、劣化を遅らせることもできる

 

取扱説明書には、このように、細かい点検内容と作業時期が網羅されている。写真は、ヤマハのマリンディーゼルの取扱説明書に書かれている、定期点検整備の作業項目と交換時期の目安

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2020年6月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
新艇・中古艇の販売や保管、メンテナンス関連部品の販売、ボート免許取得のための講習など、ボートに関する幅広い業務に携わる。
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TEL:048-960-0041
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